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アカサカ釣具

対照的な渓相を釣る信州の初夏

山と里のヤマメ釣り

稲田秀彦=解説

長野・岐阜エリアでは、同じヤマメ釣りでも、北アルプスを水源とする山岳渓流、千曲川水系のフラットな里川と、多彩なフィールドが同時期に楽しめる。
この記事は2013年8月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
稲田 秀彦(いなだ・ひでひこ)
1972年生まれ。長野県安曇野市在住。本流、ソルトなど季節ごとに幅広いフライフィッシングを楽しむが、渓流のヤマメ釣りはシーズンを通じて楽しんでいるジャンル。中部地方を中心に、里川から源流域まで、さまざまなフィールドに通う。

梅雨の収束間際から……

6月に入って日中の気温も上がり、川は雪代の影響で増水気味になると、春先のマッチング・ザ・ハッチの釣りも一段落する。

代わりに、ひと足早く平水に戻る支流や、雪代の影響の少ない里川などで、初夏のヤマメ釣りが本格的になる。この時期私が通う長野や岐阜の渓流は新緑の時期を迎え、水生昆虫から陸生昆虫へと、魚の捕食物にもバリエーションが増えはじめる。

梅雨時期は、増水やニゴリにも左右されることが多いが、数日間晴れていた後の小雨、曇りの日などは気圧が下がり、水生昆虫のハッチが盛んになり、魚が水面を意識しやすくなる。

また、増水のピークから減水へと水が引く際には、多少のニゴリによって警戒心が薄れたヤマメが盛んに付き場を移動する。そんな時は増水により大量に流下する陸生昆虫を捕食するので、大型の目立つフライが効果的になる。

このような、川の水量や気象条件が大きく変化した時には、1日を通じて調子がよく、しかも大型のヤマメとの出会いが期待できる。

とはいえ、いつもよいタイミングで釣りに行ける訳ではないので、川選びも重要な要素のひとつ。ヤマメ釣りの河川選びでポイントとなるのは、水量が年間を通じて安定しており、水生昆虫の種類、量が豊富だということ。

このほか、漁協による放流活動の実績なども、川を決めるうえで参考になる。ここでは、晴れわたった日に気持ちよく釣り上がれる北アルプス周辺の山岳渓流と、逆に天気が不安定で、山奥に入るにはリスクを伴うような日でも安心して楽しめる千曲川水系の釣りを紹介したい。

ちなみに、前年に大きな台風等がなく流れが安定していれば、いずれのフィールドも例年6月の後半から7月いっぱいはよい釣りが期待できると思う。

北アルプスエリア/山岳渓流のブラインドフィッシング

北アルプス周辺の山岳渓流は、左右の岸辺が河畔林に覆われ、日なたと日陰を交互に織り成し、7月の暑い日でも涼しく、日中でも反応を得やすい。車道から川まで距離もあり、徒歩でのアプローチが必要になる谷深い場所も多い。

多少の増水でも遡行が困難になるような川だからこそ、釣り人が入っても多くの魚が残りやすく、大型で美しいヤマメも豊富だ。
北アルプスから岐阜県側に流れている高原川水系の支流。谷が深く、水の透明度も高い。車止めから歩いて入渓する場所も多いため、時間配分は計画的に

冬の降雪量や春先の気温の上昇により、その年の雪代の影響が決まってくるが、おおむね6月の中旬を過ぎれば川が落ち着き、シーズンを迎える。私はヤマメねらいの場合、犀川支流の穂高川、乳川のほか、岐阜県側の高原川水系の支流などのフィールドによく足を運んでいる。

谷底を流れる落差のある川の釣り上がりでは、魚の活性が水生昆虫のハッチに影響されることは少ないので、ボリュームのあるボディーのパラシュートパターンや、エルクヘア・カディスなど、視認性のあるパターンがおすすめ。テレストリアルを意識したピーコックハールやダーク系の素材を使った# 12〜14前後も効果的だ。
テレパラ
●フック……TMC212Y #11~15
●スレッド……8/0ブラック
●ポスト……エアロドライウィング・FLピンク
●ボディー……ピーコックハール
●ハックル……コックネック・ブラウン
山岳渓流ではボディーにボリュームがあり、視認性のよいパターンが使いやすい。流す距離が短い場所でもしっかりと魚にアピールできるのが理想


初夏の時期は早朝の時間帯の水温が低く、谷に陽が差し込んで暖かくなる午前9時過ぎから、魚の活性が上がりはじめる。安全に遡行ができる時間帯を考えて夕方は午後5時頃までには川から上がりたい。
高原川水系のヤマメ。雪代に磨かれた美しい魚体が果敢にフライに飛び出してくる

イブニングは駐車場所から近いポイントや、本流域など大場所に移動して楽しんだほうが、安全に釣りができるばかりか、大型ヤマメの実績も高い。
山岳渓流用のフライボックス。視認性のよいテレストリアル系のパラシュートパターンのほかは、エルクヘア・カディスを使用。フライ選択はそれほどシビアではない

千曲川水系エリア/里川のライズフィッシング

一方、東信地方の千曲川本流や湯川、相木川、抜井川、依田川など、各支流には開けた落差の少ないフィールドが多い。車でポイントまで近づける場所も多く、入渓地点にも迷うこともないので、梅雨時期の天候の安定しない日や、気象条件の悪い時でも、安心して釣りが楽しめる。

また、千曲川水系は雪代の影響がほとんどないのも特徴といえる。
千曲川水系にはフラットな里川が多い。ライズがなければ、1日をとおしてウエットで釣り下ってみるのも面白い

北アルプスの川と異なり、魚の活性が水生昆虫のハッチに左右される部分が多いので、私の場合マッチング・ザ・ハッチの釣りを中心に楽しんでいる。6月の後半から7月になると日中の釣りは難しくなってくるので、夕方からの時間帯に、平瀬やプールの流れ込みなど、ある程度ポイントを限定したライズねらいの釣りが面白い。
千曲川水系の良型。6月からはイブニングの時間帯のライズねらいが面白い。柔軟に場所を移動して魚を捜してみたい

車でいくつもポイントを移動しながら水面の波紋を捜すスタイルがおすすめだ。湿度の高い曇天や、小雨が降っているような天候であれば、日中でも比較的簡単にライズを目にすることができ、特に本流では1日をとおして、良型のヤマメが期待できるだろう。

千曲川のこの時期のフライとして、イブニングは視認性を重視したエルクヘア・カディスなどのパターンが効果的だ。ちなみに、ライズの少ない日中にブラインドフィッシングで探ってみる場合は、#14前後のパラシュートやソラックス・ダンなどのパターンがおすすめ。いずれの場合も、水生昆虫のハッチを確認できた場合は、サイズ、カラーを合わせたフライに迷わずチェンジしたい。
ソラックスダン
●フック……TMC102Y #13~17
●スレッド……8/0グレー
●ウイング……エアロドライウィング・タンなど
●ボディー……ファインダブ・各色
●ハックル……コックネック・ダークダン
ライズねらいの釣りでは。マッチング・ザ・ハッチが基本だが、こんなパターンはブラインドフィッシングでも通用する。視認性をよくするため、ウイングの量を若干多めに調整


このほか、本流ではドライフライにこだわらず、ウエットフライで釣り下るのも面白い。タックルは普段使っている8フィート前後の#2~4の渓流用ドライフライ・ロッドと、フローティングラインで充分。

#10〜12のグレートセッジやシルバーマーチ・ブラウン、ピーコック・クイーンなどのフライパターンで、日中からイブニングまで時間帯を問わず楽しめる。

2018/6/27

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