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ドライフライ・フィッシングの川考察

CASE2&CASE3

渋谷 直人=文

僕たちは流れを見ただけで思いを馳せれられる。ここに掲載した写真3点は、編集部から見せられたもので、撮影された場所も時期もいっさい知らされていない。ここでは、川の1区間を切り取って、どのように釣りを展開するのかを考えてみたい。僕の思考の押しつけになってしまうかもしれないが、風景から標高や季節や地域、雪代の有無、虫のタイミングを想像していくのは思いのほか楽しい経験だ。なるべく多くの情報や、ポイントとしての可能性を解説していくので、その後の釣り方などはそれぞれで思いを馳せてみてはいかがだろうか。

連動記事
このコンテンツは『FlyFisher Magazine 2019 Early Summer』p.108の同名記事と連動しています。

《Profile》
渋谷 直人(しぶや・なおと)
1971年生まれ。秋田県湯沢市在住。バンブーロッド・ビルダーであり、フィッシングガイド。ロングティペット・リーダーを駆使し、ドライフライで尺ヤマメを追い求めて、全国を釣り歩いている。この号が発売される頃には、4月頭から約20日続く西日本への釣行も終わっているか?
ホームページ:www.kawatsura.com



1971年生まれ。秋田県湯沢市在住。バンブーロッド・ビルダーであり、フィッシングガイド。ロングティペット・リーダーを駆使し、ドライフライで尺ヤマメを追い求めて、全国を釣り歩いている。この号が発売される頃には、4月頭から約20日続く西日本への釣行も終わっているか?
ホームページ:www.kawatsura.com

CASE2



ポイント模式図
大まかに見て山頂付近に木がないことから相当な高地と考えられ、イワナの渓であると想像する。急峻な谷のわずかな平坦区間とも考えられ、イワナにとっても釣り人にとっても最高の区間である可能性が高い。思いつく流れにはすべてフライを投じるくらいの気分になるくらい、イワナにとって捕食しやすいできる流れは無数に存在している。

CASE3


ポイント模式図

若葉も日当たりのよいところに見えるが、常緑植物が多いようにも見える。ここでは宮崎県の渓流であると仮定した。イメージでは熊本側には落葉樹やヤマザクラも多く、同じ九州でも景色が大きく違うように感じる。もし宮崎以外で考えるなら四国地方の南側にも同じような景色があるかもしれない。写真は橋の上から撮影したとで限定してよいだろう。足元がよいポイントに見えるが、眺めるときは必ずライズを発見しやすい流れに気を配らなければならない。そうなると1段上のフラットが一番の注目ポイントになる。

CASE2



 
 この写真の風景から考えるとかなりの高地であり、真夏でないと入れないような渓流なようだ。緑がしっかり濃いことと稜線まで雪が残っていないことなどから、ほぼ8月に入ってから以降の時期ではないかとも感じるし、広葉樹林帯の標高限界が1000m前後であることからこの川自体の標高も700m以上ありそうだ。北か南アルプスから流れる源流域だと思うが、このような穏やかな開けた渓相はフライフィッシャーにとって貴重な流れではなかろうか。

 魚が生息しているのはほぼイワナのみと推測できるので、当然フライを流すポイントの数は増える。ヤマメと比べて、イワナは小場所にも大ものがいる可能性もあり油断できない。この写真からだけでもかなりの可能性は感じるが、それを順番に下から潰していくのも手段のひとつである。

 ここで数時間使ってよいのなら、そのようにしても充分に楽しそうだ。写真では把握しにくいが、ある程度落差がある渓流は、流れは必ずといってよいほど法則的に形成されている。

一番奥の流れ込みが右岸に当たってから左岸からの複流と合わさっていることから、その下流が最も集約した本筋になる。そこに右岸の大きめの岩の下に流れが寄っているためえぐれている可能性は高く、①は相当な期待値があるポイントになる。②までは一連で考えなければならないくらいの流れで、ここにはかなりの時間と投数をかける必要があると思う。

しかし、下流から釣っていくシチュエーションになるので、このカメラの位置から釣り始めるとなれば⑤から順番に釣っていく必要がある。①~②を住み家としているかもしれないイワナたちは相当数いると考えられ、この時期のメインのエサ(テレストリアル類)が流れる日中は各所に分散して待ち構えていることも考えられる。魚影が想像より多いようなら、僕が示したポイント以外からも20ヵ所以上のポイントで可能性はあると思ってよい。

 僕の想像になるが、この川はここまで同じような渓相が続いているわけではないだろう。東北の渓流なら、このくらいの傾斜で10km続くことも普通だが、標高が2000m以上ある源流から流れ出す川だとしたら、かなりの傾斜を超えてきた先の100m程度の穏やかな流れなのかもしれない。だとしたらイワナたちにとっても楽園であり、この先は一気に高度を上げて魚止めが近いことも感じる。

 現在、その手前に当たる好ポイントの連続にいるわけだから、もし時間が許すなら残り時間の6割は使っていい区間だと感じる。残りの4割はこの上流を魚止めまで飛ばしながら確認するような作業的な釣りになる。もし最後にカマになっている大場所があった場合に粘れる時間を残すため2割の時間を使って魚影がなくなるところまで確認したいところであるが、体力に自信がない場合は絶対に無理してはいけない。普通に2割はまだ釣りができるくらいの余裕を残して、釣りを終えなければいけないのが源流域の鉄則だ。最後の最後に大イワナポイントがあった際や、トラブルがあった時の時間的保険は行程の2割は最低残しておくことをおすすめする。

 また、考えなければいけないのが帰りの行程である。登山道や林道に上がれるのならよいが、この写真の風景だと広葉樹林帯が切れるあたりなので林道は期待できない。登山道はほぼ稜線や尾根に沿ってあるものなので、ここから稜線まで上がるには数100mの高度を上げる必要がある。

 だから、この写真は野営しないと見ることはできないような風景かもしれない。日帰りならほぼ確実に川通しで下ることになる。川通しの下りは歩きやすい川で時速2kmほど、このような落差が大きい川だと時速1kmだと考えなければならない。あらかじめ地図で確認できると思うので、どの地点までが日帰り可能なのかと目安になる。GPS(最近はスマホに機能があるので地図アプリさえあれば大丈夫)などを利用するとよい。

 さて、実際に釣りをしていくと想定しよう。まずは⑤の界隈から釣りを始めることになると思われる。深みが左岸にあるため必然的にそちらサイドを歩くのは、イワナに逃げられるリスクがあるし足場も悪い。浅いほうがバックスペースも確保しやすいようになっているものである。少しでも深くなっているような沈み石前や、流れがY字状に合わさってくる流れ、バブルラインなどがあればすべて流していく。

 ⑤界隈を20投くらいもねらってみると、このポイント自体の魚影の濃さはなどは判断できるのではなかろうか。⑤をしっかり釣ってしまえば、立ち位置を⑤にできるため④、③とサイド気味にねらうことができて流しやすくもなる。③あたりから慎重に大物ねらいをしなければならないので、まずはティペットやフライなど要所をチェックしてからキャストするくらいの心構えがほしい。③~①は流心手前から対岸すれすれまでしっかり探る必要がある。どこかのポイントから、この日最大のイワナが出てくれることを期待したい。

ポイント模式図

右岸寄りからザラザラ流れが落ち着くところに左岸からのこぼれがあり、流速が一気に遅くなり深みも形成される1級ポイント。左岸寄りギリギリにエグレができていると、さらに期待が持てる。見える範囲では最高のポイントだ。


①からの流れが大石にあたり、再び集約している好ポイント。大石周りはもちろんだが左岸は引き続きギリギリまで流してみないと、見切ることはできない。


一度集約された流れがクランク状に弛むため、同じように大ものが水面に対して定位するには充分な可能性があると思われる。①~③は右岸から流心を跨いでフライを流すことが重要になるため、ロングティペットの利点を生かしやすく、山岳渓流とはいえ面倒くさがらずにティペットを足すくらいでもよいのではないだろうか。


本筋をたどる最後のタナになるので、ここも決定的なポイントのひとつと言える。魚影が多い川ならここまでは捕食にでてくると思う。


このように流れが合わさるY字形状は、浅くてもすべてフライを流してみる。どこかから反応があるものだ。水中の障害物だけでなく、表面的な流れの意識はドライフライでは特に重要で、浅くても深くても関係なくとらえなければならない。バブルラインなども典型的な水面捕食に適した流れになるので、形状は無視してねらってみる価値がある。

CASE3



ポイント模式図

 この景色を見て最初に感じるのは、橋の上から写真が撮られたであろうことである。そして、若草と濃い緑の樹木から考えると、常緑植物が茂る地域に限定されるため、僕の知る限りでは宮崎の大河川上流部か。場所と時期が宮崎県の4月くらいで、対象魚がヤマメのみである、と仮定して話をすすめていきたい。

写真では、足元の流れがよさそうに感じるが、よく釣る人のほとんどが上流に見えるフラットに注目すると思う。おそらく深さも規模も上の段のほうが圧倒的にスケールがあり、ヤマメのストック量はもちろんだがライズの可能性も高いはずだ。

ただし、問題は左岸に立てるのかどうかである。ヒラキはギリギリまで深いように見えるし、流れが絞られているため渡渉できない可能性も考えられる。立ち位置となる①の左岸の川原にどのようにして行けるのかを模索しなければ釣りにならないかもしれない。右岸からでは切り立った岩に阻まれているが、まず行ってみなければ諦めることもできないので、僕だったらこのようなシチュエーションでは、とりあえず右岸のギリギリまで確認しに行ってみることが多い。最上流まで通せなくても投げられる位置に立てるような突起があるかもしれないし、下流側でのライズならキャストで届くこともあるかもしれない。それを確認したうえで、やはりメインは左岸に立てないと釣ることができないと思う。

春の宮崎はライズがないとドライフライで釣ることは難しいと思うが、②、③の決められた筋は大きめのフライで叩いて出るかもしれない。これは橋の右岸から川原に降りればすぐに試すことができるので、しばらく上流側を観察して、ライズが確認できなければこの2ヵ所は流す必要があると思う。

②は流れ込みに岩があり、分けられた流れが合わさりながら深めの緩流帯ができていて、いかにも尺ヤマメが好きそうなポイントである。しかしがエサ釣りにもねらわれやすいのでヤマメが残っているか、というところ。このような波立った深瀬は何度も何度も流したり、フライを変えたりしながら粘ってみることも重要だし、時間帯を変えてねらってみることも必要になる。

③は流心からこぼれる唯一のバブルラインなので、ハッチがあればライズもするかもしれない。橋の上からだと浮上するヤマメの姿が確認できる可能性もあり、上流をぼんやり見ながらも足元の③には気を配る必要がある。ライズを発見する人は大まかに数ポイントを視野に入れているのが上手で、視野を狭くするのはライズを確認してからで遅くない。

このような大場所では巻き返しなどもできるが、ヤマメがいる条件としては必ずバブルラインがあることだ。吹きあがりの②の右岸などの巻き返しでライズがあることはまず考えられないし、③の左岸上の巻き返しもバブルはなくポイントではないだろう。唯一考えられる巻き返しポイントとしては、①の流心が右岸の岩に当たる向こう側だけは泡が溜まる構造になっている。ぶつかった後の下流の右岸の巻き返しもバブルがないので可能性はないと思う。これらの条件はイワナも同じではあるが、巻きにいる可能性はヤマメのほうが圧倒的に低い。しかし、ここでライズを発見できるようなら尺を大きく超えるヤマメである可能性も高く、バブルができる巻き返しだけは用心して見なければならない。ライズ探しと叩くポイントを素早く分けて考えることが効率よく探り出し、釣ることにつなげるコツだともいえる。

ポイント模式図


流れがまとまりながら荒瀬を下って右岸の岩盤にぶつかり、深い淵を形成している。どのような釣りにせよ立ち位置に行けるかどうか難しそうで、そこをクリアすることも、ライズ待ちと同時に考えなければいけない。ライズの可能性は流心沿いに蛇行するバブルラインでかなり長い。ぶっつけから流れ出しまで数10mはあり、ハッチの量や虫の種類、時間帯などで場所が変わっていくことも考えられる。

基本的にこのような淵はライズ以外で釣れることはほとんどなく、ライズがあるまでは流してみる必要もないと思う。ライズがなく場所を移動する際に数投、流れ込みのバブルラインのスタートあたりに流しては見るのだが、ほとんど出た記憶はない。

流れ込み向こう側の巻き返しは泡が溜まりやすい感じなので、アプローチの難しさも合わせて最大魚のライズポイントになることも考えられる。左岸に立つことができたならかなり上流側に立って、巻き返しとプール全体と両方が視界に入る場所でライズ待ちするとよいと思う。


一気に絞られた流れが大岩で分けられて岩下の緩流帯にちょうどよい深瀬が形成されている。流れも合わさるし水深も酸素量も充分と考えられ、ライズがなくてもねらってみる価値があるポイントだ。水面のラフな感じと水深から数投では出ないことも考えられ、じっくり時間をかけてねらいたいポイントである


このポイント唯一のバブルライン。ライズするならここだと思うし、叩いて出る可能性も最も高い一筋である。バブルが細く少ないので分かりにくいが、このような筋はヤマメも見逃さないので、釣り人側が見つければ釣れる可能性も高くなる。流心からのこぼれが大岩の先端の深みに向かっていて、ヤマメが付く形状になっている。





2019/4/12

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最新号 2019年9月号 Mid Summer

特集
釣り旅東北

第2特集
ディープに踏み込む名手たちのフライ論

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また、第2特集として、エキスパートのフライに対する考え方を伺いました。縦巻きハックル、ピーコックのコンプリートを使いこなすウエットフライ、経験をフライに反映するための考え方、ジョインテッドフライ、個性爆発のバスバグ、北海道のビッグドライなどを取り上げます。
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