「渓の翁」が作る“瀬畑ハウス”とは?
源流で釣りをして半世紀の知恵
FlyFisher編集部=写真と文
全国各地の源流に分け入り、数々の未踏ルートを拓いてきた瀬畑雄三さん。そんな瀬畑さんが、長年にわたる源流生活で編み出したのが、ブルーシートを使った通称“瀬畑ハウス”。その見た目とは裏腹に(?)、とにかく快適なのである。いわゆる最新のアウトドアグッズを使うわけでもなく、それでも「家に帰りたくない寝床」を作ってしまうのは、瀬畑さんにとっての源流が、ほとんど日常だからなのかもしれない。
<瀬畑雄三さんとは……?>
道具軽量化の対極か、それとも……?
最近の山道具は、源流釣行に最適なもので溢れている。特に軽量化は目覚ましいものがあり、軽さを追求し尽くしたウルトラライトの時代に突入したといってよい。たとえばテント、ツェルト、タープなど幕場に不可欠な道具。そのいずれも以前とは比較にならないほど軽く進化している。1人用ドーム型テントですら1kg前後だ。ツェルトにいたってはその半分以下、300gを切る製品も珍しくない。タープも同様。軽さゆえにより大きなものを持ち込むことが可能になった。
険しい遡行にあってわずかでも荷を軽くし、安全に遡行したいと願うのは至極当然。ウルトラライトの道具が支持されるのはそうした理由からなのだが、ひとつ、つじつまの合わない現象がある。それはタープならぬブルーシート支持者が依然多いこと。重量増は覚悟のうえで、ブルーシートで幕場を設営するのだ。
源流釣行にブルーシートを活用し始めたのは瀬畑雄三さん。単なるタープ代わりではないその設営方法は「瀬畑ハウス」とも呼ばれ、源流志向の釣り人に高い支持を得ている。理由は快適さ、そして丈夫さにある。

開放感は抜群
瀬畑ハウスの特徴は、1枚で屋根と床を兼ねること。コの字状に設営することで雨風の侵入を防ぎつつ、前方が開口しているのでテントとは比較にならないほどの開放感をもたらしてくれる。使用するブルーシートは軽量タイプ。薄手のため床部分は地面の突起などにより穴が開くこともあるが、使用する際に床部分は常に床、屋根は常に屋根にすることで長持ちするという。
大きさは複数人用として2間×3間(約3.6m×約5.4m)のものを用意。これで4人が快適にすごすことができる(5人まで可)。少人数の際は「半分に切って持っていくんだ」と瀬畑さん。
あらかじめ1間×3間(約1.8m×約5.4m)にすることで軽量化。単独行ならかなり広々としており、2人までなら快適だ。タープでも同じような設営は可能ながら、さすがに半分を床に敷く気にはなれない。安価なブルーシートならではの設営方法ともいえるだろう。
<瀬畑ハウスの設営手順>
















翁の知恵をもっと知りたい!
「渓の翁」の知恵は、もちろん瀬畑ハウスだけではない。いざという時の焚き火のおこし方、野外で失敗しないご飯の炊き方……。そして私たちがなにより参考にしたいのは、その発想力かもしれない。瀬畑さんは身近にある物を、自由に活用する。ブルーシートの瀬畑ハウスがよい例だが、ほかにも釣りの道具を忘れた際にはビニール紐で即席ラインを作ったり、自転車のタイヤチューブをベルトにしたりと、例を挙げるとキリがない。
専用の道具はもちろん便利だが、それがなくなった時にどうするのか? あるいはザック自体が川に流され、かろうじて自分だけ川岸に着いた時にどうしたら無事に山を下りられるのか……? 自然のなかで遊ぶために必要なのは、もしかしたら「工夫する力」なのかもしれない。

瀬畑雄三さんの、数々の知識や経験が詰め込まれているのが、単行本『渓の翁、瀬畑雄三の遺言。源流テンカラ釣りの知恵』だ。ここでは紹介しきれなかった、源流を楽しむための創意工夫、翁の九死に一生譚、拓いたルートの数々などを紹介している。
だが忘れてはならないのは、ただ瀬畑さんの真似をすればよいというわけではない、ということ。新しい道具に便利なものがあれば、どんどん活用すればよい。これから源流で釣りをしたいという若者が、自分なりの「○○ハウス」を作ることこそが、もしかしたら瀬畑さんが望んでいることなのかもしれない。

定価:本体2,500円+税
A5判並製320ページ
『源流テンカラ釣りの知恵』
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2018/7/9