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パラシュートフライのハックル巻き方│里見流の「軽く浮く」技術とは?

ファイバーがある程度折り重なるように巻かれることによって、「軽く浮く」ことをねらっている

里見栄正= 解説 編集部= 文と写真
フライ

パラシュートのハックルは厚く

里見さんのパラシュートの大きな特徴は、ハックルの量だと思いますが、これはご自分でも多いほうと思われますか?

里見 ほかの人よりは多いなと思いますね。逆に言うと「ほかの人、少ないな」と思っちゃう(笑)。

 

なるほど(笑)。ハックルは12回転くらい巻いているのですよね。

里見 そうですね。#12番のフックでだいたい12回転とか13回転とかです。でもハックルが余っちゃったからもう1回転、2回転とか、あまりシルエットに影響がなければやっちゃったりもします。

 

このハックルの量は、徐々に増えていったのでしょうか。

里見 最初のうちはここまで多くはなかったと思います。いつの間にかこういう感じになったと思いますね。「あ、こっちがいいな、このくらいにしたほうがよく浮くな」と。なんとなく自分なりに気が付いたのだと思うんですよね。人によっては、水面ベッタリ、ボディーは半沈み、というのが好きな人もいますが、自分はどっちかというとその逆だったという感じですかね。

 

ハックルの厚さのいちばんの理由は、パラシュートだから高く浮くということでしょうか。

里見 そうですね。あるいは「軽く浮くから」というべきでしょうか。なぜハックルを厚く巻くかというと、ある程度は水平に巻いても、たくさんファイバーが出ていることにより、少しはあちこちに斜めになったり、絡んだりするんです。すると、そこにファイバーの網みたいものができて、要はそこに空気を溜めて浮きやすくしているような状態というのでしょうか。その部分を増やすためにも、ちょっと厚めにしているということもありますね。着水した瞬間などは、しばらくフワッと浮いてくれます。いわば風船を背負っているようなイメージです。やっぱり軽く浮いてくれないと、水面膜近くの動きを拾いやすいんですよ。それを拾っちゃうと、流れに影響されているということで、微細なドラッグがかかると思います。

 

流れのままにフライを流すということではなく?

里見 自分は流れよりも若干ゆっくり流したいんです。要は魚にできるだけゆっくり食わせたいと。実は魚は、フライに気が付いても速く流れていくものには反応しないことはよくあります。だからできるだけゆっくり見せて気を引いて、ゆっくり食わせたいと。

 

その、ゆっくり流れるという理屈は、詳しく説明していただきたいです。ティペットの角度でなんとなく流れより遅く流す、ということではないということですよね。

里見 そうではないですね。よくあるU字キャストはU字にすることで上流側にある意味、ドラッグをかけているのです。そうではなくて、フライの周辺にスラックがたくさんあってもゆっくり流れるようにしたいということです。それには、ある程度高めに浮いて、ポンッという感じで水面に浮くようなパターンのほうが、演出しやすいのは確かだと思います。これがベッタリ水面に絡むタイプだと、なかなかできない。そういうフライは、たいてい落ちてすぐに水面の動きを拾ってしまうのですよね。イメージとしては、動いているベルトコンベアーの上にピンポン玉を乗せると、ピンポン玉は回転するぶんだけ、下のベルトコンベアーの面よりゆっくり運ばれますよね。フライをそういう状態にしたいのですよね。

 

それはドラッグがかかるとはまた別な話だと。

里見 そうです。自分はそれをドラッグとは認識していないです。だからむしろ流れと一緒に流れているときのほうが「これはドラッグだ。これじゃ食わない」と思ってしまいます。だから、うまくいったときは「あっ、このドリフトだったら出るな」という感覚としてわかります。レーンをある程度キープをしていても、フライがちょっと速いと魚は出ないというのはよくあります。ですから、流れより少しでも速いというのはもう、論外。流れと同じというのが50点くらいかな。

そんなに低い点数なのですね(笑)。

里見 そうですね。それよりもちょっと遅くしたいんです。自分はレッスンの時などにもよく「流すな」と言うのですけれど、それは決して「ずっとそこに止めておけ」という意味ではなくて、「水の流れと一緒になって流れてしまうようではダメ」ということなんです。イメージとしては下が速いぶんだけ、フライがゆっくり流れれば、より止まったように見えるというような感じですかね。

 

それは、具体的に流速の何%くらいが理想のフライのスピードなのですか?

里見 数字で表わすにはちょっと難しいけど、たとえばよくある瀬の、瀬頭に近いようなところで、もう流れがいくつかぶつかって、ジャーッと来ていて、パッと見、すごく速く見えるところでも、かなりゆっくり運んでくれる筋みたいなものはたくさんあるんですよね。

 

それは流れそのもののスピードがゆっくりした筋でしょうか。

里見 そうですね。だからそういうところに乗せて。そのすぐ横はもう速いのですよ。「相当速いな」というところでも、そういう筋をゆっくり流してやれば、魚はけっこうちゃんと出てくれますよ。その速さに影響されないような浮き方をしてくれるという意味で、こういうフライを巻いているんです。

 

フライそのものの問題もそうですけれど、筋の見立てとかも重要ですね。

里見 そう、どこにフライ乗せるかというのは、もちろんいちばん大事なことなのですけれど、最後の最後、ティペットの形というのでしょうかね、着水した瞬間の形をうまく作るためにも、このくらい厚くハックル巻いたほうが、自分には空気抵抗を利用して、コントロールしやすいんです。

 

なるほど、空気抵抗も関係してくるんですね。

里見 そうです。自分にとっては非常にちょうどよい空気抵抗というのかな。だからハックルが薄いとやはり違ってきますよね。「これくらいハックルを厚く巻くと魚に弾かれるのでは?」と言う人もいるのですけれど、そういうこともあまりないですね。彼らが食う時って本当にすごく口を開けて強く吸い込みますから。

 

フライ

今年豪雨の中、岩手をさまよった里見さん。結果40ヤマメを手に。釣ったフライはもちろんパラシュート

 

 

 

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2025/1/30

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