#6ロッドで楽しむ バスフィッシング

長野県/野尻湖 シケーダパターンで誘う

中峰 健児=文
nojiri-01 湖面に浮かんだシケーダパターンにバスが急浮上して食いついてくる

渓魚もなかなか活性が上がらない猛暑日が続くこんな季節は、ポカーンとセミパターンを湖面に浮かべてみたい。そんなフライにボトムから勢いよく突進してくるスモールマウス・バスは、トラウトフィッシングにも通じる要素を持った、夏の好ターゲットだ。

この記事は2014年10月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
なかみね・けんじ
1968年生まれ。千葉県千葉市在住。ティムコ社でフライフィッシング関連の輸入業務を担当。中禅寺湖や芦ノ湖、阿寒湖など湖のフライフィッシングを得意としている。アメリカでもフライでのバスフィッシングを体験しており、日本ではシケーダ・パターンを使ったドライフライの釣りも楽しんでいる。

夏こそおすすめ

梅雨明け宣言の後はいきなり猛暑目の連続。うだるような暑さにすべての行動意欲がそがれ気味になる……というのは私だけではないだろう。フライフィッシャーにとってもこの時期は、一部の源流ファンを除いて足を運ぶフィールドに迷うことも多いようだ。もちろん北への遠征やオフショアのシイラ、カツオ、ハイランドレイクでのボートフィッシングなど、このシーズンならではの選択肢はある。だが今回は一味違うボートフィッシング、スモールマウス・バスのドライフライの釣りを紹介したい。

訪れたのは長野県北部に位置する野尻湖。福島県の桧原湖と並ぶ日本屈指のスモールマウス・バス(以下スモール)のフィールドだ。標高約650m、最大水深約38m、周囲15.6㎞の自然湖で、都内からは300㎞弱の距離があるが、上信越自動車道・信濃町ICから程近く、アクセスは極めて良好だ。湖岸には多くのレンタルボート屋さんが建ち並び、ローボート(手漕ぎ)のみならず免許不要のエンジン船やエレクトリックモーター搭載艇も選べるのがうれしい。もちろん、オカッパリでもねらうことも可能だが、ボートを使えば釣れる範囲がぐっと広がり、さらにゲーム性が高まることは間違いないだろう。
nojiri-02 野尻湖は、いかにも山上湖といった高原の雰囲気に包まれたフィールド。夏こそこんな湖面の釣りが面白くなる

野尻湖のバス(ラージマウスおよびスモールマウス)は例年4月下旬に解禁となり、多くのアングラーがここを訪れる。そして7月上旬になると陸生昆虫が活動しはじめ、水面に落ちたガ、セミ、トンボ、甲虫などが、バスたちの重要な食料となる。ルアーでねらうバサーにとっても「虫パターン」と呼ばれる水面での釣り方がキーになる季節だ。

特定の虫が大量発生した日には、やはり魚が水面を意識し、それ以外のエサには見向きもしなくなるという、まさにフライフィッシング独壇場ともいえる釣りが楽しめる。特に今年は7月中下旬にマイマイガが大量発生、その時期にガをイミテートしたパターンで入れ食いを味わった人もいたとか。日並や天候によって状況は変化するもの、例年8月下旬までがフライフィッシングが面白いシーズンとなる。
nojiri-03 さっそく顔を出したスモールマウス・バス。ブラウントラウトのようにブレイクラインを回遊していることが多く、水面のフライにもアグレッシブに反応してくる

トラウトのようなバス?

この魚に馴染みのないフライフィッシャーのために、スモールマウス・バスについて簡単に説明しよう。よく知られているラージマウス・バス(以下ラージ)と比べるとスモールは比較的冷水を好み、強い流れでも生息できるといわれている。ラージは定住性が強い傾向があるが、スモールはマス族同様に回遊性が高い。そのため水深が急に変わるブレイクより深いラインが回遊コースと想定され、そこに岩や倒木などの障害物(ストラクチャー)や樹木のオーバーハングが絡んだところが好ポイントとなる。
nojiri-04 岸に並行するブレイクの上や、ブッシュがオーバーハングしている箇所にシケーダ・パターンを浮かべて待つ。サイトでねらえることもあるが、いきなり魚が飛び出してくることも……

深場にいても水面の捕食対象物を確認すると一気に浮上してバイトしてくることも少なくない。ただしこれはあくまで基本。エサを捜して浅場に入ってウロウロしている場合や、岸(バンク)ギリギリにいて上から落ちてくるエサを待っていることもある。まさにトラウトのような性質を持っている魚といえると思う。
nojiri-08 スモールは全体的にトラ模様のような魚体が特徴。シケーダ・パターンの釣りは、まさしく湖岸の森でセミが鳴きはじめたタイミングがベスト

そして、掛かった時のファイトには特筆すべきものがある。同サイズのラージと比べてもその引きは強いといわれる。フッキングした途端に深場のストラクチャー目指して一気に潜ったり、逆に突然水面に浮上してエラ洗いをしたりと、そのファイトはとてもスリリング。40㎝オーバーの良型が掛かればロッドはバットから絞り込まれる。ランディング寸前になっても抵抗をやめず、気を抜くとネットイン直前に泣きを見ることになる。

さてタックルについてだが、特別なものは必要なく一般的な9フィート前後の#6ロッドがあれば充分だ。ラインもフローティングのみで問題ない。ただし空気抵抗の大きいフライを投げるため、パワフルなテーパーを持つラインを選択したほうが楽に釣りができるだろう。また、リーダーはバットが太めのナイロン製を使い、ティペットは3~4Xがちょうどよい。ティペットの素材はナイロン、フロロどちらでもお好みで構わない。
nojiri-06 今回使用したタックル。シングルハンドの#6が標準

ボトムから浮いてきた黒い影

訪れたのは8月の上旬。今回も会社の同僚が操船するバスボートに同乗しての挑戦だ。事前の情報では前述したとおりマイマイガの大量発生で、“ガ”パターンが好調とのことだった。……が、実際に訪れてみるとガはすっかりいなくなっており、スモールの意識も水面には向いていないようす。本来はすでに出ているはずのセミも遅れているようで、目にしたのはごくわずかだった。
nojiri-11 セミが水面に落ちる季節は、まさにフライフィッシングが有利になるシチュエーションともいえる。一般的な#6ロッドにフローティングの組み合わせをそのまま流用して楽しめるのが魅力

そんな状況ながら、バンク際にフライを落としながらボートを流していく。水色が茶色から緑色に変わっているところがブレイクラインだ。ブレイクの手前、つまり深場にいる魚をねらう時は、「シマザキシケーダ」を使い、やや強めにプレゼンテーションする。大きめの着水音が深場を泳いでいるスモールにフライの存在を気付かせるきっかけとなるのだ。

また、スモールがシャローにいて表層を意識していると思われる場合や、バンクぎりぎりをねらう場合はソフトに着水させやすい「イワイシケーダー」を使う。運よく近くにスモールがいればフライに黒い影がスウッと忍び寄り、「ポッ」という吸い込み音とともにフライが水面から消えることになる。一拍置いてからゆっくりと大きく合わせると、スモール特有の強力なファイトがはじまる。
nojiri-05 イワイシケーダ(上2つ)とシマザキシケーダ(左下)。着水音で使い分けるのが有効で、深場にいる魚に水面を向けさせるためには、フライが落ちる音も重要な要素となる

釣行2日目もタフなコンディションだった。朝から雨模様で、浮いているスモールが見つけられないまま半日を終えようという状況。午前中最後に探ったのはブレイクに岩がゴロゴロ入っているという大ものの実績あるポイントで、ガイド役の同僚が深場に大きな影を見つけた。
nojiri-09 ブレイクラインを回遊したり、強めの流れの中でもエサを捕食したりと、トラウトに似た性質を持つスモールマウス・バス。大型になればそのファイトも格別

シマザキシケーダをその影の上方にあたるポイントに投げ入れる。しばらく待つとその大きな影が浮上してきて、何の疑いらなくフライをくわえたのだ。はやる気持ちを抑えながら一拍置いて大きく合わせると、下へ下へと潜る強力な引き。目視はできないが倒木も入っているポイントらしく、主導権を握られると枝に巻かれてラインブレイクしてしまう。二度三度と繰り返される突っ込みをかわした後、水面に浮上してきたのは黒っぽい魚体をした大きなスモールだった。ネットインを拒否するような、さらなる抵抗を数度試みた後、あきらめてネットに収まったのは口周りに“歴戦の傷痕”を残した老兵の風格漂う48㎝だった。
nojiri-07 渋い状況を打破するようにフライに飛びだした48cm。ボトムへ突っ込むような強烈な引きが印象的な1尾だった。ドライで、しかもサイトでねらえれば面白さは倍増するはず

野尻湖ではバスボートによるガイドサービスも行なわれている。フライフィッシング専門ではないが、湖を知り尽くしたバサーによるガイドは、ポイント選択やそれにともなう釣果はもちろん、魚の生態や虫パターンについて勉強になる部分も多いので、初回の釣行としてはおすすめだ。
nojiri-10 ボートが係留された野尻湖岸の桟橋。広すぎず狭すぎず、ボートに乗って各ポイントを回れば、たっぷり1日中釣りが楽しめる

2017/7/18

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
[ 詳細はこちらから ]

 

NOW LOADING