LOGIN

丸沼のボートフィッシング

ドライフライとストリーマーで楽しむ

中峰 健児=解説

ひんやりとした風が心地よい群馬県の丸沼。ウエーダーは履かず、タックルバッグを手にボートに乗れば、いつもと違った雰囲気のなかで魚と遊べる。晩夏から初秋にかけて盛期を迎える高原の湖で、ドライフライとストリーマーデでバリエーション・フィッシングを楽しむ。
この記事は2015年11月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
中峰 健児(なかみね・けんじ)
1968年生まれ。長崎県生まれの愛知県育ちで現在千葉県千葉市在住。ティムコで輸出営業を担当するが、輸入業務や開発、スクールも手掛ける。ここ数年は関東近郊の川や湖、阿寒湖などでツーハンド・ロッドやスイッチロッドを使った釣りやボートフィッシングを楽しんでいる。

標高1400mの避暑地

栃木県との境である金精峠にほど近い群馬県片品村に位置する菅沼、丸沼、大尻沼。標高1400mを超える場所に位置するこの3つの湖は、ボートからトラウトがねらえる本州でも数少ないフィールド。

3湖のうち菅沼と大尻沼は隔年解禁や週末解禁といった形で釣り人に解放されているが、その間に位置する丸沼は、毎年4月から11月のシーズンが設定されており、最も手軽に楽しめる湖であるといえる。
丸沼の南側、大尻沼との中間点に設置されている丸沼ダム。建設後70年以上を経ても当時の姿で稼働しており、「丸沼堰堤」として国の重要文化財にも指定されている

丸沼では流れ込みのある北岸側は遠浅となっており、ウエーディングの釣りを楽しむフライフィッシャーも多い。一方、南側のダムサイト付近を含むエリアは、岸釣り禁止区域も設定されており、レンタルボートを利用するのがよい。

周りを広葉樹に囲まれた高原の湖で、日がな一日湖面に浮かんでロッドを振るのは、〝下界〞の喧騒から離れた別世界にいるような錯覚を引き起こしてくれる。
湖南側は岸釣り禁止区域になっている。詳しくは、湖北側に立地し、遊漁受付を行なっている丸沼温泉・環湖荘まで

ドライフライで遊ぶ

湖のボートフィッシングでも、最も気軽に楽しめるのがドライフライの釣り。通常のフローティングラインで、フライを湖面に浮かべてストライクを待つ、いたってシンプルなスタイルだ。

もちろん渓流用のタックルでも使用可能だが、おすすめなのは渓流よりやや長めの8フィート6インチ〜9フィートの4〜6番ロッドだ。ある程度距離を出して投げられる、そして、そういった状況でもシャープなアワセができるロッドが扱いやすい。

夏から秋にかけて、魚たちは水面に浮かぶさまざまな陸生昆虫を食料としている。アリ、ガ、セミ、トンボ、バッタ、コオロギ、カメムシ……。フライは時期を考慮して、それらを模したお好みのパターンを使えばよい。

もちろんエルクヘア・カディスやパラシュートは湖でも一線で活躍してくれるドライフライだが、フォームを使ったパターンも浮力のメンテナンスが楽で使いやすい。
このくらいの小ぶりなレインボートラウトは、コンスタントにドライフライにヒットしてきた。水通しのよい岬でライズを繰り返していた1尾

まずねらいたいのは、木が被ったようなバンク際。トラウトたちは岸際よりもブレイクライン(水深が急に深くなっているカケアガリ)沿いに回遊していることが多いので、そのライン上にフライを置くようにする。

ただし風向きを考慮し、キャスト時には常に風上側にラインを置くようにリーチキャストをする必要がある。また風ではらんだラインはメンディングを行なうなどして、渓流同様にフライにドラッグを掛けないことが重要だ。
岸際のブッシュ下やブレイクラインをねらう時は、あまりボートを近づけすぎないように注意。キャスト後風などでラインがたわんできたら、ゆっくりとメンディングを入れてドラッグを回避する

ちなみに、丸沼でドライフライを浮かべる場合、実はストラクチャーが何もない湖の真ん中もポイントになる。トラウトが表層を意識して泳ぎ回っているのか、開けた水面の真ん中で時おりライズを繰り返す魚がいる。
沖合の開けた湖面でもライズは見られる。落ち葉が溜まっていたり、風によって湖流がぶつかっていたりする箇所はチャンスあり

風があって湖流のぶつかる箇所ができていたり、落葉などの吹き溜まりが見られたりする箇所は特に要注意だが、変化のない場所で水面を破る魚も多い。状況によっては岸際より釣れる可能性があるので、移動中も沖合のライズには注目しておきたい。

ちなみに、魚がスレている場合や表面水温が高い―たとえば20℃を超えるような状況では、ドライフライには反応しにくい場合がある。そんな時に有効なのが、「ホッパー・ドロッパー」システム。フォームホッパーなど浮力の高いフライのフックベンドにティペットを30㎝ほど結び、その先にニンフを付けるというものだ。

この場合、水面下に入るティペットにはフロロカーボンやシンキングナイロンなど、水馴染みのよいタイプを使用する。また上のドライフライを結ぶティペットが4Xなら下は5Xとワンサイズ下げるようにする。
「ホッパー・ドロッパー」システム。浮力の高いドライフライのフックベンドにティペットを接続し、ニンフを結ぶ。その場合、水中でゆらゆらと漂うように、ハックルなどを巻いて水の抵抗を受けやすくしたパターンが有効

このシステムは、水面の大きなフライに誘われた魚が浮上してくるも、躊躇してなかなか食いつかない場合などに特に効き目がある。そんな時に、目の前の水中に食べごろサイズのフライを漂わせていることで、思わず口を使ってしまうことを期待している。

ニンフにバイトがあった場合、アタリは水面のホッパーに出る。つまり上のフライがインジケーターの役割を果たすのだ。水面のフライに出ることをためらうようなトラウトには良型も多い。ドライフライへの反応が悪い状況ではぜひ試してみてほしい。
“ガ”パターンをがっちりとくわえ込んだブラウントラウト。ゆっくりとフライに出る場合が多いので、アワセは比較的余裕を持ったタイミングで入れるのがベスト

深場の大ものねらい

湖のボートフィッシングで、もう一つの楽しみはシンキングラインの釣り。水面の釣りが二次元だとすると、水中の釣りは三次元。慣れないうちは難しい釣りのように感じられるかもしれないが、湖の釣りをより深く楽しむためには、ぜひトライしてほしいスタイルである。

シンキングラインには「シンクレート」と呼ばれる沈下スピードを示す表示があり「タイプ0」という呼び方をされる。現在入手できるシンクレートはタイプ1(インターミディエイトともいう)〜6で、この数字は1秒間に沈む水深をインチで表わしている。1インチは2.54cmなので、タイプ2だと1秒間に約5cm沈む計算だ。

ただしこれらはライン番手や素材、水温、水質によってかなりの幅で変化するため、あくまでも参考程度に考えてほしい。初めてシンキングラインを使う人には、比較的キャスト時なども扱いやすく、ある程度の水深でもカバーできるタイプ2がおすすめだ。

私がメインで使うシンクレートはタイプ4で、これは1秒間に10cm沈む計算となる。カウントダウン10秒で1m、30秒で3m沈むという分かりやすさもよい。

シンキングラインの先には、水馴染みのよいフロロカーボンやシンキングナイロンのリーダー・ティペットを全長で9〜12フィートになるように接続する。フライはマラブー系のストリーマーを各色用意しておけば問題ない。カラーも含め、各自が最も自信のあるパターンを結ぶのが釣果への近道だと思う。
マラブーを用いたストリーマーでも、基本的にはビーズヘッド・パターンを愛用している。オリーブやブラウンを中心に、シェニールなどの光物を混ぜたパターンも用意

また、ロッドは9フィート前後の6〜8番が使いやすい。これらの番手は、シンキングラインの種類が多く、選択肢が幅広い。私の場合は、パワーがあって多少の風の中でも投げやすい8番をメインに使っている。
普段の釣りでボートに持ち込むタックルは2本。シンキングライン用#8と、フローティングをセットした#5。いずれも9フィート前後。テーブルとしても使えるボートバックがあると、フライ交換などの作業が楽になる

水中のポイント選び

水中を探る際のポイントは、いくつかある岬周りやそれらの岬を結んだラインが有望。また、丸沼に限っていえば、東電放水口の流れ込みや最奥部のダムサイト周りなどで多くの実績がある。このほか、ボート乗り場の周辺も意外に魚は多い。

水深が2mにも満たないような浅場でも、水底のスリット(溝)に沿って出入りするトラウトが多く、早朝や夕方、ボートの出入りが一段落したタイミングでねらってみるとよい。

もちろんこのポイントはドライフライでも面白い。シンキングラインのリトリーブの釣りは、基本的にはブレイクラインと平行にキャストし、カウントダウンをしてタナ(泳層)を探り、リトリーブする。

水温や風を考慮して、カウントダウンを変えつつ魚影の多いタナを探っていくのだが、フライで探れる水深にはやはり限界がある。

丸沼の場合、中央部やダムサイト付近は水深が20mを超えるので、通常のフライラインのシステムではねらえるのは4〜5mまでと割り切って釣ったほうが効率的だろう。

タイプ2なら深くても3m程度。もちろん魚の目の前にフライを通すのが理想ではあるが、透明度の高い丸沼ではやや上方を通過するフライにも反応しているのではないかと、私は考えている。

そのため、あまり厳密なタナ合わせに終始するのでなく、ある程度大まかにタナを探りながら、フライのカラーやタイプをいろいろ変えてそのアピール力を試すようにしている。
ボートの釣りでは、エレキモーターと魚群探知機(ソナー)を活用すれば、楽しみの幅はもっと広がる。エレキがあることで行動範囲がぐっと広がり、湖全体を効率よく探れるようになる(エレキを搭載したレンタルボートを操船するためには、ほとんどの場合船舶免許が必要。ただし最も手軽で、湖川小出力限定の2級小型船舶免許があれば充分)

フライを替える場合、ビーズの有無やそのサイズ(重さ)に変化を付けてみる。このほかカラーについてはブラウンやブラックといった濃色と、グレーオリーブのような淡色、さらに地味なものと派手なものを使い分けて反応を見る。泳ぎの面でいえば、マラブーのテイルが長めのものと短めのものを試している。

さらにリトリーブスピードも変化させる。速くしたり遅くしたり、活性に合わせてさまざまなパターンを試せば、何らかの答えが返ってくるだろう。いずれの場合も重要なのは、リトリーブは最後までしっかりと行なうということ。

丸沼に限らずボートフィッシングの場合、フライを追うがフッキングまでいかない魚が、リトリーブの終盤にフライの泳ぐ角度が変わって、上昇し始めた瞬間に食いつくというケースが多々ある。リーダーが見えるまでリトリーブし、フライをピックアップするまで気を抜かないようにしたい。
浅場では回遊するトラウトの姿が見えるので、サイトフィッシングも成立する

夏場には20℃を超えていた丸沼の水温も、9月の半ばを過ぎる頃からトラウトの適水温になり、ドライフライの釣りも、より期待できるようになるだろう。

静寂の中、ドライフライをポツーンと吸い込むトラウト。そして水面を裂くフローティングライン……こんなのんびりとして、スリリングな秋の楽しみ方ができるのは、高原の湖ならではだ。

2018/8/16

つり人社の刊行物
FlyFisher 30 Years
FlyFisher 30 Years 本体1,800円+税 AB判144P
AB判全カラー144P/創刊号の判形を再現! 表紙は、FlyFisher 創刊号(1988年)が目印! 過去へのバックキャストと、未来へのフォワードキャストでつなぐ 美しいループを皆様の元へ。 『FlyFisher』から30周年の感謝の気持…

最新号 2018年9月号 Summer

涼を求め、標高の高い源流へ足を延ばしたくなる夏。今号では、豊かな森を流れるイワナの川を旅します。大らかにフライをくわえてくれる尺イワナに癒されたい方は、ぜひページを繰ってみてください。釣り人なら誰もが見たくなる、ぽっかりと浮いた渓魚たちの姿や、東北の白神山地から流れ出す渓谷など、美しい写真をたっぷり掲載しています。 さらに夏休み、お盆休みなどで遠征をしたくなるこの季節、釣行プランの参考のため、日本の北と南の釣りを紹介。北海道でビッグトラウトをねらうか、沖縄や奄美大島の海で遊ぶか……。あなたはこの夏、どちらに行きますか?
[ 詳細はこちらから ]

 

NOW LOADING