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アカサカ釣具

マラブー。由来と使い分け

オリジナルから広がるバリエーション

岩崎 徹=解説

現在手に入るマラブーにはいくつかの種類がある。フライのサイズや部位に応じて使い分け、理想の泳ぎを得るためには、それぞれの特徴をまず頭に入れておくと役に立つはず。
この記事は2012年1月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
岩崎 徹(いわさき・とおる)
1948年生まれ。タイイングマテリアルを取り扱う「キャナル」代表。羽根や獣毛など、希少種も含めて、これまでに数々のマテリアルを取り扱ってきた経験を持つ。各素材の効果的な利用方法はもちろん、世界のマテリアル事情にも詳しい。

主流はターキー。そのほかニワトリやイーグルも

ウエットフライやストリーマーパターンに欠かせないマテリアル、マラブー。本来はアフリカハゲコウ(英名:Marabou stork)という鳥のフェザーである。

かつてはヨーロッパで女性用の装飾品などに使われていたが、現在では捕獲が禁止されているため、代用品としてはターキ—の羽根がおもに出回っている。そして、それらを含めてマラブーと呼んでいるのが現状だ。
アフリカハゲコウは、アフリカ大陸の熱帯地域に分布するコウノトリの一種。群れで生活しながら木の上に巣を作る。マラブーとは本来この鳥の下尾筒(尾の下のフサフサしている部分)付近に生えている柔らかいフェザーのことを差している。ちなみにハゲ頭の理由は、動物の死骸に首を突っ込んで食べやすいためとか。国内でも飼育している動物園があるので、興味のある人は実物をのぞいてみてはいかが?(写真提供=千葉市動物公園)

これがアフリカハゲコウの下尾筒のフェザー。他のマラブーとの大きな違いは、ストークのすぐ近くからフリューが密に生えた長めのファイバーが伸びていること。他のマラブーと比べるとやや軽い印象を受ける

ほかにもニワトリや猛禽類などのものがあり、ことフライのマテリアルとして見た場合には、ファイバーやフリューの長さによって使い分けができる。

まず、主流となっているターキーのマラブーは、ファイバー、フリューがともに長めであるのが特徴。これは水流を受けて柔らかく揺れやすい。

また、少量でも膨らんで見えるため、フライにボリュームを持たせたい場合に適している。モンタナマラブーのようなストリーマーのテイルなどに向いている。
ターキーマラブー。ストリーマーのウイングやテイルとしての使い方はもちろん、ニンフのギルやウイングケースにも使える汎用性の高さが特徴。ファイバー先端にいくほどフリューは短くなる

このほか、グリズリーマラブーやミニマラブーのように小さめのタイプに多いのがニワトリのマラブー。ファイバーが短くて細いため、小さいサイズのフライに適しているほか、ウエットフライやストリーマーのスロート部分などにも使いやすい。
こちらはニワトリのマラブー(フェザーは縞模様に染色)。ファイバーが細く、柔らかな動きを演出させやすい。小型のアトラクターフライが活躍する管理釣り場のパターンにもおすすめ

フリューの長さはターキーとほぼ変わらず、短くてもしっかりとしたボリュームが出せるので、長いマラブーの先端を使うよりも、フライ全体のバランスを整えやすいという利点がある。

最後に、「イーグルマラブー」などの商品名で流通しているものについては、現在では捕獲禁止になっている鳥の羽根なので、国内の在庫が切れ次第、終了することになる。

これらのマラブーはファイバーが細くて長いのが特徴。水の中ではやせて見えやすいので、比較的シルエットをスリムに見せたい場合などに適している。また先端部にはフリューの短い長めのファイバーがあり、一定の張りもあるので、スペイハックルとして使うことができる。

イーグルマラブー。先端のファイバーはサーモンフライのハックルなどにも使われる。ストーク中間部はストリーマーのテイルやウイングに使え、ファイバーの短い根元部分も小さめのフライにも適している

なお、最近ではオーストリッチの柔らかいフェザーもマラブ—の名称で呼ばれるものがあり、動きのある泳ぎを演出したい場合に使われている。
こちらはオーストリッチ(ダチョウ)のマラブー。ターキーなどに比べても水中でファイバー1本1本の形が残るため、フライ全体の形がつぶれにくく、フライに存在感を出したい場合におすすめ

いずれにしてもマラブーの最大の武器はその揺らめき。水流を受けたり、リトリーブしたりすることによって、ほかのマテリアルでは得られない泳ぎを見せてくれる。
左からアフリカハゲコウ、ニワトリ、ダチョウ、ターキー。アフリカハゲコウのものは現在主流となっているターキーに比べてやや小ぶり。その代わり、フェザーにはストークのすぐ側からフリューが生えている。比べて、他のものはファイバーの根元部分はフリューが少ない傾向にある(写真は、もっとも大きいターキーマラブーの全長が170㎜)

一見似たようなフェザーでも特徴の違いを把握しておけば、適材適所にタイイングすることができ、よりマテリアルの長所を生かすことができるはずだ。

2018/10/18

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