スロードリフトで誘い出すヤマメ

本流域、ドライフライで良型に出会うために

板谷 和彦=解説
本流のヤマメでなければなかなか見られない完ぺきなプロポーション。うっすらと浮かぶ青い斑紋と大きなヒレが、強い流れに磨かれて育ったことを物語る

ナチュラルドリフトとは少し違うアプローチで、より下流部の深みに付くヤマメをドライフライでねらう。本流域の表層で魚を誘い出すための必要条件と、実践方法をレポート。
この記事は2010年10月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
いたや・かずひこ
1969年生まれ。石川県金沢市在住。北陸エリアの渓に詳しく、初夏は本流のヤマメ、盛夏は山岳渓流のイワナ釣りをメインに楽しんでいる。いずれの釣りでもアピール力の高い、大型のドライフライで数々の実績を上げている。

サイドからダウンクロスで

板谷和彦さんが通う北陸の本流でヤマメ釣りができるのは、雪代の流入前、雪代明け〜入梅、梅雨明け〜盛夏、晩夏〜禁漁までの大きく4つの時期になる。

まず雪代の影響が残る時期や降雨後など、増水時にはエルクヘア・カディスやスティミュレーターを選ぶ。ボディーハックルがしっかり巻かれ、水面に高く浮いてわずかに動くことが期待できるこれらのパターンが、厚い流れから魚を誘い出すのに効果的になる。
エルクヘア・カディスやスティミュレーターにはナチュラルカラーのヘアを使うのが板谷さんのこだわり。秋口になり河原にバッタが増えてくると、マドラーミノーも効果的になる

水位が安定していれば、同じカディス系のパターンでもウイングがCDCのものや、半沈みボディーのパラシュート。そして秋にはバッタをイメージしたマドラーミノー、そして水生昆虫が出ていれば#10〜20のマッチング・ザ・ハッチを意識したメイフライやカディスパターンも使う。

増水していたこの日、まず結んだスティミュレーターを流すのは、魚が避難することが考えられる岸際。水量が増えて形成された岸際の畳1~2枚分ほどの小さく深いプールにフライを流していく。

板谷さんが岸際以外に積極的にねらったのが、流心よりもややスピードが遅く、かつ適度な深さのある川の中ほどの流れ。このような場所は盛期のように魚の活性が上がっていない時、流速よりも若干遅くフライを送り込むとチャンスがあるという。
当日の川は雪代と梅雨の雨が重なって水量がかなり多めだった。それでも「出る時は出るし、出ない時は出ない。状況を読みながらフライを流せばチャンスはあります」

ヤマメが気付き、追って食うよう、「捕食のスイッチを入れるための間をとる」ことを意識しながら、フライをゆっくり流す。この時、誘いを掛けるような操作、たとえば上流側にフライをフラッタリングさせるようなことはしない。

あくまでスピードを落とすだけで、基本的にはナチュラルに流す。本流のような深く広い流れでは意外な感じもするが、経験的に「若干のブレーキを掛けたナチュラルドリフト」のほうが反応がよいというのが板谷さんの実感だ。

アプローチはサイド〜ダウンクロスを基本とし、水面に置くラインの量をコントロールして、流れるフライにうまくブレーキが掛かるようにする。

今回の釣りで板谷さんがヤマメをヒットさせたのは、イラストのように、1つの流れをまたいで、その向こう側でフライをスロースピードで下流側に送りこんだ時だった。このような状況において、板谷さんはおもにA、B、Cの3ヵ所におけるラインの量をコントロールすることを考えているという。理想的には、AとBのそれぞれに適切な量のラインが入ると、Aの部分のラインとフライに適度なブレーキが掛かりつつ、フライはねらった場所に向けてまっすぐドリフトしていく。この時、Aの流れよりも強い力がBで掛かれば、フライは不自然な流れ方をする。その調整には、Cの部分で掛かるブレーキの加減も考える必要が出てくる

ただし、盛期のように魚が流心そのものから反応してくる場合は、アップもしくはアップクロスで、完全なナチュラルドリフトで探ることが増える。

特に夏場は日差しが強くなり、水量が落ちて溶存酸素が少なくなることから、おのずと流心の白泡周りがねらうポイントの中心になる。

ロッドは8フィート台の#3、4

いずれの季節に釣りをするにしても、本流域ということを考えると、8フィート以上のカーボンロッドで#3~4が使いやすい。ほとんどの場合、水面の流れにラインを取られにくい#3を選択するというが、ポイントまでの距離が遠ければ#4を使う。
流れの向こう側でヤマメがヒット。ロッドをしっかり立てるとともに、素早く下流側に移動して流れに乗った魚の重さでラインを切られないようにする

リーダーとティペットは使うフライによって変わるが、#10のエルクヘア・カディスやスティミュレーターを使ったこの時は、4Xもしくは5Xの14フィートリーダーに、5Xのティペットを4フィートほど足した、全長18フィートのシステムを使用。

#14前後のフライをメインに使用する時には、6Xのリーダーに6.5Xのティペットを継ぎ足している。
ロッドはある程度の長さがありリーチを稼げるものが使いやすい

ダウンもしくはダウンクロスで、流れに対してややブレーキを掛けながらフライを流し込む釣り方のメリットは、まずは魚が出やすいことだという。それに加えて、フライがゆっくり流れるぶん、魚が出た時のミスバイトが少ない。これは、長いラインを出している状況でもフッキングがしやすいともいえる。
この日魚を誘い出したのは、エルクヘア・カディスよりひとまわり大きいスティミュレーター。誘うといってもフラッタリングなどフライを動かす操作はせず、あくまで流れに乗せて、ただし若干のスロースピードでドリフトさせる

デメリットとしては、フライに出た魚が基本的に下流に向かって走り出すので、流れの勢いも加わってラインブレイクしやすくなること。そのため、フッキング後は魚との距離を素早く詰められるよう、ほとんどのケースで下流に向かって動く準備をしている。

2017/9/4

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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