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NY出張にロッドを忍ばせて

2019年7月

末次 淳二=文と写真


ニューヨークへの出張や観光のついでにフライフィッシング。日本で普段使っている道具で充分楽しめます。

《Profile》
末次 淳二(すえつぐ・じゅんじ)
1968年生まれ。奈良県在住。妻とゴールデンレトリバーとヤギと一緒に暮らす。本業であるホテル、レストランなどのコンサルティングの傍ら、宮崎で黒毛和牛を生産する農業法人の代表も務める。フライフィッシング歴は20年で、しばらく遠ざかっていたが、昨年から仕事で通い始めたニューヨークで、突如としてフライフィッシングを再開。薪ストーブ(まだ焚いたことはない)の前で、ウイスキーを片手にフライタイイングするのが当面の夢。

最近、出張でNYに行く際はNY郊外のタリータウン(マンハッタンから電車で40分)にあるCastle Hotel & Spa(キャッスルホテル&スパ)というホテルを定宿にしている。そのホテルの総支配人で日本人の内海健さんが釣り好きで、今回、一緒にフライフィッシングに行くことになった。


Castle Hotel & Spa キャッスルホテル&スパ
castlehotelandspa.com

1泊朝食付き3万円ほどで、現地でフライフィッシングを楽しみたいという日本人の宿泊客向けに、来春から特別なパッケージを作る予定。現在はそのテスト期間として、オーダーメイドにて対応している。常に日本語が喋れるスタッフがいるので、英語が喋れなくてもOK。近隣にある有名なレストランやアクティビティの手配も日本語でお願いすれば、快く手配してくれる。

フライフィッシング専用の問い合わせメールアドレス(日本語で対応可能)
Flyfishing@castlehotelandspa.com

キャッスルホテル&スパ。NY滞在の起点 

総支配人の内海さん(右)と筆者(左)


アメリカでのフライフィッシングの歴史は、NY州の自然公園キャッツキルエリア(Catskills)の川から始まっていて、ヨーロッパから移民してきた方がマスを放流して釣りを楽しんだというのが始まりとされる。20世紀初頭、セオドア・ゴードンがここでアメリカ式のドライフライを進化させた。

アメリカのフライフィッシングの発展に貢献した人を紹介する、フライフィッシングミュージアムもある。

今回、このキャッツキルで、ドライフライでトラウトに挑戦したいと思った。

車中からのキャッツキルマウンテン自然公園

このように書くとものすごくフライにはまっているように思われるだろうが、実は、仕事や転勤で15年ほどフライフィッシングから遠ざかっていたので、まずは自宅で道具を探すことから始まった。

当時の渓流用のロッド(岩井渓一郎さんに憧れて買った3番ロッド)、リール(オービス)、自分で巻いたフライ(フックはまったく錆びていなかった)、リーダー、ティペット、すべて15年前のものでの挑戦となった。

今回使用したタックル


クロトン・リバー ※ホテルから約30分



いつものホテルに到着すると総支配人の内海さんから、「今日の夕方、ホテルから30分くらいのところにあるクロトン・リバー(Croton River)に釣りに行きませんか」と誘われた。日本から持って来た道具が通用するのか(物理的に壊れていないか)心配だったので、早めに仕事を片付け、急きょ釣行することを決める。

7月8日17時、ホテルを出発。ホテルから車で30分くらいのところにある里川へ向かう。そこは、駐車場から川へのアプローチも近くて、かつ、安全な釣り場。日本の渓流のように狭くないので、15年ぶりの勘が戻っていない(もともとたいしたことはないが)私でもゆったりとロッドが振れ、釣りやすい。

クロトン・リバーの駐車場から川へのアプローチ。安全かつ近い

川へアプローチしてよく見ると、先行者が1人いるようだ。川に立ちこみ左手に携帯を持って、何やら大きな声で電話をしている。しばらく見ていると、近くで起こったライズに向けて右手のみでキャストし、なんとヒット。ロッドが曲がる。ほどなくネットに収まったのは、30cmくらいのブラウンだった。

日本で忍者のように声を潜めて釣っていた私は何だったのか。アメリカ人の、よく言えばおおらかなところにビックリすることが多々あるが、魚もかなりおおらか。職場や自宅に近いから、フライフィッシング自体が日常のひとつということだろう。

気を取り直して、私も釣りをする。よく見ると16番くらいの黄色いボディーのカゲロウ、18番くらいのカディスがハッチしている。5m先でライズ。その2、3m先でもライズ。これはいけるかも。いい予感。ちょっと暑いので太ももまでそっと川に立ちこむ。

何も考えずに、3番ロッド、3番ライン、6X14ftのリーダー、7Xのティペット、18番のエルクヘアカディスという日本の渓流仕様でライズをねらって上流にキャストする。50㎝くらい流れたところでピチャ。出た。うまくハリに乗り、15年ぶりにドキドキした。20㎝くらいと小さめだが、きれいなブラウンだ。

その後、30㎝前後のブラウン数尾に気持ちよく遊んでもらい、キャッツキルへの準備としては手応えを感じつつ納竿。日本の渓流用タックルで充分通用すると確信した(これが後の大きなミスにつながる)。街に近いのに川がきれいで、こんなに魚影が多いのには驚いた。5尾までは持って帰ってよいというルールだそうだが、キャッチ&リリースが徹底されているということだろうか。往復1時間、釣り2時間、合計3時間。NYの郊外でこんな体験ができるなんて、日本の多くのフライフィッシャーに知ってほしいと思った。

ちなみに内海さんは、マーカーを使用したニンフで5、6尾。話を聞くと私が釣った魚より少し大きめのようだ。毎回、沈めたほうが良型が釣れるとのこと。

今回の試し釣りでウエーダーのいたる所から浸水したので、キャッツキルへの釣行日までに買いなおすことにした。



キャッツキル ※ホテルから車で約2時間


いよいよキャッツキル釣行当日。7月12日10時、車でホテルを出発し、一路キャッツキルへ。渋滞はなく、途中休憩も挟まず目的地キャッツキルのフライフィッシングセンター&ミュージアムに2時間で到着した。

12時過ぎに、ミュージアムの隣にあるフライフィッシングセンターへ立ち寄り、キャッツキルエリアの最も有名な川のひとつ、ビーバーキルのガイドマップを7ドルで購入、ほかにも店内を物色し、お土産のTシャツを購入した。

同行者の「腹減りません?」の言葉で、10分ほど離れたキャッツキルのロスコーという小さな町にランチをとりに向かった。

キャッツキルフライフィッシングセンター

水生昆虫のハッチチャートとフライ実物が表示されている


ロスコー ※フライフィッシングミュージアムから10分
ロスコーの街並み。こじんまりとして落ち着いた町だった

この町はトラウトタウンと呼ばれており、ここを訪れる人は、ほとんどフライフィッシングのために来ていると言われるほど。さっそく、町の入口の角にフライショップ、ビーバーキルアングラーを見つけ、店舗の前にて記念撮影。アメリカフライフィッシング発祥の地のフライショップということでテンションが上がる。


アメリカ製のロッドやリール、ウエーダーなどを物色しつつ、またもお土産のTシャツをゲット。これだけお土産のTシャツが置いてあるということは、それだけ多くのフライフィッシャーがこの地を訪れているということだろう。

その間、内海さんが店のスタッフと話し込んでいる。どうやら一番の目的地のビーバーキルは水温が高くて釣れないらしく、30分ほど離れたウエストデラウエア・リバーへ行ったほうがよいとのこと。ランチしながら作戦会議となった。

ビーバーキルアングラーの向かいの、外壁にトラウトが描かれたビールのマークがあるイタリアンレストランに入り、それぞれパスタを注文。ビックリするくらいの量のパスタを食べながら、第1目的地のビーバーキルか、ウエストデラウエア・リバーかで緊急会議。

ここまで来てまったく釣れないのは嫌なので、満場一致でウエストデラウエア・リバーに行くことを決めた。ビーバーキルは、また次の機会に行こうということになった。

フライショップの看板。右手奥に見えるレンガ色の建物が今回ランチをしたイタリアンレストラン。トラウトタウンというビールの看板が見える

なお、この小さな町に3軒もフライショップがあるそうで、町を歩く人の中には、ウエーダー姿の人もチラホラ。ゆっくりと時間が流れている、よい町だった。


ウエストデラウエア・リバー ※ロスコーから30分


ビーバーキルアングラーのスタッフから聞いた話と、そこで購入したガイドマップにもとづき、ウエストデラウエア・リバーの191プール(191Pool)というポイントに向かう。

購入したガイドマップ。中央の191Poolというポイントに入る

先に訪れたクロトン・リバーと同じく、無料駐車場からすぐ目の前が川というロケーション。このポイントは橋を境に、上流はチャラ瀬、下流はプールとなっている。

プールには先行者が2人立ちこんで釣っているので、まずはチャラ瀬で釣ってみることにする。深いところで股下までの水深で、対岸まで渡ることができる。

橋の上流のチャラ瀬

水温14℃、辺りを見回すがライズもハッチもまったくない。わざわざここまで来てライズ待ちをする気にもならず、たまたまカディスを見つけたので16番のエルクヘア・カディスを流してみるが反応がない。フライを変え、ティペットを7Xまで落としてミッジを流すも反応なし。

2時間ほどポイントを変えながら流し続けたが反応がないので、マーカーを付けてニンフの釣りにチェンジ。それでもアタリはなかった。同行の2人に状況を確認するが、やはりライズもなければ、反応もないとのこと。3人で橋の下流の191プールに移動することにした。

191Pool

191プールに着くと、先ほど見かけた先行者はどこかに移動したらしくフライフィッシャーは誰もいなくなっていた。代わりに、対岸で短いロッドにリールのエサ釣りの釣り人が1人いた。

川幅は50mほどで、水深はおそらく5mくらいか。対岸は崖、私たちがいる側はオートキャンプ場になっており、岸から10ⅿほどは水がよどんでいる。

水がよどんでいるエリアをウエーディングで越えて岸から20mくらいの位置へ立ち込むことにする。水深は股下くらいで、水温14℃。プールへの流れ込みから、3人順番に10m間隔で並んでポイントに入る。私は一番下流。1人目はドライ。2人目はニンフ。私は、ドライで釣ることにする。

しばらく水面を観察するがライズはない。少し落胆していると対岸で「ヒット」と大きな声がしたので目を向けるとサオが曲がっている。ほどなくして、「スネーク、スネーク」と大きな笑い声。太さ7、8cm、体長1mくらいの、恐らくウナギ?(ヘビではないと思う)を釣りあげた。

トラウトではないが、魚はいることが確認できて少し安心する。

目の前の流れに視線を戻すと、5m先、水深2mくらいのところで黄色いものが動いたように見えた。もう一度確認するが何も見えない。ゴミか? 魚か? 

しばらく観察していると、流れ込みとプールの間のこちら側の水面で小さな魚がライズした。本日初めてのライズに興奮する。小さくてもいいから何としても1尾釣りたい! 16番のエルクヘア・カディスを流してみる。

ウエストデラウエア・リバーで使用したフライ


ライズの少し上流にキャスト、うまくいった。

黄色い魚がフライに近づくが直前で引き返すのが見え、期待が膨らむ。もう一度同じ所へキャスト。風で1mほど奥へ流れ(ただ下手なだけ)、うまい具合に流れの中にフライが落ちるとバシャ、出た! 反射的に合わせる。完全に乗った!

強烈に走られたのでラインをリリースすると、50cmをはるかに超えるレインボーがジャンプした。6Xリーダー、7Xのティペットではちょっと無理かもしれないと思い、慎重にやり取りしてなんとかあと1mのところまで寄せてきた。はっきりと魚体が見えると体側が真っ赤に染まっており、体高は10cm以上ありそうだ。

しかしランディングネットを取ろうとした時、一気に反転し、3m、5m沖へ走られた。また一から寄せようとするも動かない。最後は流れの中を、上流へギュンと走られ、急いでラインを出すも間に合わず・・・・・・フッと軽くなった。

リーダーとティペットの結び目で切れていた。デラウエアを完全に舐めていた。完敗である。

レインボーとのファイト。この後痛恨のバラシ

しばらく茫然として水面を見つめていたら、またライズした。6Xリーダーのキズを確かめ、ティペットなしでいくことを決める。同じくエルクヘア・カディスを結び、ライズへキャスト。

するとフライを追う黄色の影。パシャ、また出た。沖へ走るが明らかに小さい。さっきとは引き方がまったく違い、横にも走らない。取り込んだのは20㎝くらいのブラウンだった。すぐにリリースしたが、写真を撮るべきだった。

少し上流に目をやると内海さんのサオが曲がっている。上手にランディングネットに入れ、写真を撮っている。20cmくらいのブラウンだ。こちらもドライで釣れたらしい。

見ているうちに同サイズが続けざまにヒットしており、ほぼ同じサイズのブラウンを同じポイントで5尾釣ったそうだ。内海さんは橋の上流のポイントに釣り上がるそうで、このポイントに流してみて、と譲ってくれた。

周りをみると少し暗くなっていた。ここで20cmのブラウンを釣るか、さっきのポイントで大ものをねらうか少し考えたが、大ものにターゲットを絞ることにした。

リーダーの傷み具合を確認する。少しキズがあるので新品に交換。5Xにするか6Xにするか悩む。自分でどこからその自信がくるか分からないが、6Xでいけるだろうとふんだ。6Xにする。

14ftのリーダーにフライを直結する。カゲロウがハッチしているのが見え、CDCのカゲロウ(フライの名前は失念)14番を結ぶ。

最後に使ったフライ

大ものをバラしたプールへ移動し、さっきとほぼ同じ場所に陣取る。上流から3人乗っているボートがやってきて、手を上げて挨拶を交わす。ボートは下流へ下っていき、見ると、私を起点に下流20mの間隔で合計3艇が浮かんでいた。

上流に目をやるともう一艘ボートが停泊している。ウエストデラウエア・リバーは、ボートからのフライフィッシングが盛んで、上流からボートで川を下りながらポイントポイントでサオをだしているらしい。どのボートも2人のフライフィッシャーとガイドが乗っている。

よく見ると誰もロッドを振っていない。それぞれ真剣にポイントを見ている。

もうすぐ日が沈む。恐らくこれが本日のクライマックスタイム。寒さを忘れてポイントを見つめると、カゲロウが飛び始めている。すると流れの中でそこそこ大きそうなサイズの飛沫が上がり、続けざまに同じ場所でライズした。これが本日最後のキャストになるような気がし、気合いを入れる。

ライズの場所へキャスト。ドンピシャリ、ねらいどおりにフライがふわりと落ちると、バシャ。すぐに出た! 一気に深みへ走られたのでラインを出す。

今回は、新品のリーダー6Xにフライを直結している。無理をしなければ絶対に取り込めるはずと思い、慎重に寄せる。引きは強いが、さっきバラシたレインボーとは違い横には走らず、流心のより深いところへ走る。ラインを出す、慎重に寄せるを繰り返し、どれくらい時間が経っただろうか、魚体が見えてきた。ブラウンだ。見るとランディングネットとほぼ同じサイズで、ネットに入るだろうかと思いながら、ランディング。やった! 40cmくらいの良型のブラウンだ。

191Poolで最後に釣れた良型のブラウン

何やら後ろから拍手と口笛が聞こえてきた。振り返るとオートキャンプ場の川岸に沿って作られたデッキに、ビール片手に沢山の人が集まってこっちを見て手を振っていた。手を上げて声援に応える。

おそらく191プールというポイントでは、日が沈む直前、良型がライズするのだ。それをねらって多くの釣り人がそのポイントに集まってくる。そしてそのポイントの岸にあるデッキに集まった人たちは、釣り人を見ながら、ビール片手にクライマックスの時間を釣り人と一緒に楽しんでいるのだろう。フライフィッシングを通じて、彼の地の生活の豊かさを改めて感じた。

さいごに


アメリカフライフィッシング発祥の地キャッツキルにおいて、バラシたとはいえ日本の渓流用タックルで大型レインボーの引きを楽しみ、良型のブラウンを釣り上げることができたのは、当初の期待以上の成果だった。

それは、豊かな自然環境とこのエリアを愛するアメリカのフライフィッシャーが環境保全とキャッチ&リリースを徹底しているからだろう。特に、フライフィッシングを通じて生活を楽しんでいるアメリカ人の姿が印象的に残る釣行となった。彼らのように仕事も生活も楽しめるようになりたいと改めて感じた。

最後に、このような素晴らしい機会を与えてくれた、タリータウンのキャッスルホテル&スパの総支配人内海さんに心から感謝したい。

問い合わせ先
Castle Hotel & Spa キャッスルホテル&スパ
castlehotelandspa.com

フライフィッシング専用の問い合わせメールアドレス(日本語で対応可能)
Flyfishing@castlehotelandspa.com

2019/11/21

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