LOGIN

NY出張にロッドを忍ばせて02

2019年9月

末次 淳二=文と写真

隙あらばフライフィッシングを!

NYのフライフィッシングは、時間がなくても、昼からでも思った以上に楽しめるということを、身をもって体験した。たとえ往復4時間かかったとしても、良型のトラウトがかかれば充分満足できる。

前回、今回と2回キャッツキルエリアを訪れる機会を得て、また、両日とも運にも恵まれ、日本ではなかなかお目にかかれない良型のブラウンを釣りあげることができたが、たとえボウズだったとしても往復のドライブと米国でフライフィッシングをしたという事実だけで、きっと満足できるはず。

タリータウンのキャッスルホテルから車で30分のエリアにあるクロトン・リバーでは、現地では小さいとはいえ、30cm前後のブラウンやレインボーを多数釣ることができた。

どちらも魚影の多さは間違いない。とくに今回は日曜日ということもあり、老若男女いろいろなポイントでフライフィッシングを楽しんでいたのがとても印象に残る釣行となった。

現地の内海さんに聞くまでは、NYでフライフィッシングができることすら知らなかった。前回に加え、今回もお世話になった内海さんに心から感謝したい。


《Profile》
末次 淳二(すえつぐ・じゅんじ)
1968年生まれ。奈良県在住。妻とゴールデンレトリバーとヤギと一緒に暮らす。本業であるホテル、レストランなどのコンサルティングの傍ら、宮崎で黒毛和牛を生産する農業法人の代表も務める。フライフィッシング歴は20年で、しばらく遠ざかっていたが、昨年から仕事で通い始めたニューヨークで、突如としてフライフィッシングを再開。薪ストーブ(まだ焚いたことはない)の前で、ウイスキーを片手にフライタイイングするのが当面の夢。

出張でNYに行く際はNY郊外のタリータウン(マンハッタンから電車で40分)にあるCastle Hotel & Spa(キャッスルホテル&スパ)というホテルを定宿にしている。


Castle Hotel & Spa キャッスルホテル&スパ
castlehotelandspa.com

1泊朝食付き3万円ほどで、現地でフライフィッシングを楽しみたいという日本人の宿泊客向けに、来春から特別なパッケージを作る予定。現在はそのテスト期間として、オーダーメイドにて対応している。常に日本語が喋れるスタッフがいるので、英語が喋れなくてもOK。近隣にある有名なレストランやアクティビティの手配も日本語でお願いすれば、快く手配してくれる。

フライフィッシング専用の問い合わせメールアドレス(日本語で対応可能)
Flyfishing@castlehotelandspa.com

キャッスルホテル&スパ。NY滞在の起点 

総支配人でフライフィッシャーの内海さん(右)と筆者(左)


8月29日~9月2日の間、またまたNYへ出張することになった。現地滞在期間4.5日という過密スケジュールとなった中、「今回は難しいかも」と思いながら、「隙あらばフライフィッシングを!」と、前回お世話になったNY郊外のタリータウンという街にあるキャッスルホテル&スパに宿泊することにした。


到着の初日からハードワーク(釣り時間確保のため詰め込む)をこなし、帰国前日の9月1日(日)の13時に仕事から解放された。

たった半日だが、なんとかフライフィッシングの時間を確保。私の選択肢は2つで、1つ目はホテルから車で片道30分のクロトン・リバー。2つ目は、ホテルから車で片道2時間のキャッツキルエリア。

半日しかないので悩ましいが、魚が大きいのは間違いなくキャッツキルエリア。15時にポイントへ入れば、日没まで約4時間は釣ることができる。

前回もお世話になった総支配人の内海さんに相談し、満場一致(2人だけだが)で「前回(7月12日)釣り逃がしたレインボーにリベンジしよう!」ということになり、さっそく車で向かった。



日曜日の午後ということもありいつもより車が多い。私たちが向かっている反対側の対向車線には、キャンピングカーや荷物満載のSUVをちょくちょく見かける。

キャンプからの帰りの車だろうか。すれ違う自宅へ帰る楽しそうな家族連れが乗るSUBを尻目にキャッツキルを目差す。

キャッキルエリアは、米国フライフィッシング発祥の地と呼ばれるエリアだけあって、ビーバーキル、デラウエア・リバー、イーストブランチデラウエア・リバー、ウエストブランチデラウエア・リバーなど、米国のフライフィッシャーにとって垂涎の川が多く隣接して存在する。


イーストブランチデラウエア・リバー ※ホテルから車で約2時間



今回は内海さんからのお勧めで、イーストブランチデラウエア・リバーをチョイス。この川は、フライフィッシングタウンと呼ばれるロスコーという街から車で約20分西へ移動したところにある。

ポイントは、「ロングフラット」という名称のポイントで、その名前のとおり数100mに渡り、緩やかな流れのフラットなプールが続く。

毎回感心するが、NY州では川に隣接する道路にフィッシングアクセスを示す道路看板が出ており、おおまかなポイントを見つけることはわりとたやすい。

また、ポイントに隣接して無料の駐車場が用意されていることが多く、加えて、駐車場から川へのアクセスを示す看板も整備されている。

これらを見るたびに、米国のフライフィッシング文化の深さを感じる。


ポイントへの案内看板

お目当てのポイントに到着し川を見ると、先行者が1人いる。車で周辺のポイントを何ヶ所か見て回るが、さすが日曜日ということもあり、1人か2人は必ずポイントに入っており、誰もいないポイントは見つからなかった。

比較的ポイントが広く、先行者に迷惑がかからなそうなプールに入ることにし、車を停め準備を始める。

今回のタックルも前回と同様、日本の渓流用の3番ロッドに、前回釣り逃がしたことを反省して5Xの14ftのリーダーにティペットはなし。

先行者に声をかけ、30mくらい離れて川下に入り、とりあえず16番のエルクヘア・カディスを直結した。

そこは、「ロングフラット」という名前のとおり、川幅が広く(約50m)、緩やかな流れのプールになっている。

水遊びには最高のスポットらしく、近くにカヌーのサイトがあるようで、ときおりカヌーの集団が上流からやってきては、下流へ消えていく。カメラを向けると皆ポーズをとった。「フェイスブックにアップしろよ!」と大声で叫んでいる。カヌーや大声には関係なく目の前でライズは続いている。前回も感じたが、ここの魚もおおらかなようだ。

今回のポイント「ロングフラット」

カメラを向けると喜んでポーズを取ってくれる


股下まで立ち込んでいると思った以上に身体が冷える。内海さんからのアドバイスでウエーダーの下に厚手のジャージを履いているが、ジワジワと冷気が伝わってくる。水温を測ると8℃。

前回、ロスコーのショップで、「ビーバーキルは水温が高くてダメ」という理由からウエストデラウエア・リバーを勧められ、そこの「191プール」というポイントに入った。その時の水温は、14℃だったことを思い出した。

ガイド本(『Flyfisher’s Guide to NEW YORK』ERIC NEWMAN著)には、この辺りでは、11℃~18℃の水温のポイントを探せと書いてあり、8℃となると、少し低いかなとも思いながら川面をじっと見つめた。

川のあちらこちらでライズがあり、よく見ると水面には、ボディーが黄色か茶色、体長が10mm~12mmくらいのカゲロウの成虫が表面に張り付いて流れてきている。

上流から川下へ凄い数のカゲロウだ。それらを捕食してライズしていると思われる。バシャというライズと、水面が盛り上がり背びれが見えるだけのライズ(恐らくイマージャーを捕食?)と、いろいろなライズが目の前で繰り広げられ、気持ちが高揚する。こんなに多くのライズを目にするのは初めてだ。

ボディーが黄色(薄黄緑色?)のカゲロウ

とりあえず結んだ16番のエルクヘアカディスを取り換えるのも面倒なので、10mくらい前のライズをねらってキャストする。

いい感じでフライが着水するが、何の反応もない。ライズはなくなるどころか、むしろ増えている。

フライパターンを何度も換え、ライズに向かいキャストするがまったく反応がない。有名なポイントだけに、かなりスレているのだろうか。

ミッジサイズのパターンまで試すも反応は見られず、「なかなか手強いのね」と早くも本日の敗北を意識する。


しばらくキャストをやめ、周辺の景色を改めて観察する。水の透明度はかなり高い。前回釣り逃がした大型のレインボーにリベンジすることを考えて5Xのリーダーにフライを直結したが、それが悪かったのかもしれないと思い、5Xのリーダーに6Xのティペットを1m50cmくらい足す。

フライを大きめの14番のCDCのカゲロウタイプ(前回最後に40㎝前後のブラウンを釣った記念すべきフライ)へ変更する。ゆっくりと辺りを観察すると、15m以上離れた下流で大小のライズが繰り返されているポイントがある。まるでそこだけ雨が降っているようだ。

気を取り直してライズの雨の5mくらい手前にキャストし、フライがポイントの真ん中に差しかかったころ、水面が盛り上がった。軽くサオを立て合わせると、グーンと魚の重量を感じる。手応えでかなりの大ものだということが分かった。

ティペットを6Xに変えたばかりなので無理をしないと自分に言い聞かせる。どんどんラインは出され、はるか彼方で急に、右に走りジャンプした。

今度は上流に向かって走る。リールを巻くも魚のほうが速く、巻ききれない。少しラインが緩み一瞬軽くなったのでバレたかと思ったが、リールを巻き続けると魚の重さを感じた。フッキングはよいのだろう。

ラインの出し入れを繰り返すとようやく魚体が見えた。デカイ。前回のブラウンより一回り大きく、50cmはありそうだ。走られては寄せるを何度も繰り返し、ようやく水面近くに魚体が出てきた。

取り込もうとするも、ネットが小さくて魚体が収まりきらない! が、無いよりはましかと思い直し、魚を寄せ頭からネットへ導く。

尾びれを出してネットに入ったのは、50cmはあろうかというブラウンだった。日本から持ってきた小さなランディングネットに収まり切らず、3分の1ほど魚体が外に出ている。実感が湧いてくる。やった!



記録写真を撮ろうと思うが岸まで遠く、ランディングネットが小さくて魚全体が写らない。近くで釣っている内海さんのところへ移動して記念写真を撮ってもらい「細仕掛けでゴメン」とフラフラであろうブラウンに謝りながらていねいにリリースした。


<あとがき>
日本のフライフィッシャーの皆さん、是非、NYへ出張の際やご旅行の際は、スーツケースにパックロッドを忍ばせ、タリータウンの「キャッスルホテル&スパ」の内海さんのところへ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

アメリカのフライフィッシング発祥の地と言われるキャッツキルエリアで、普段使っている日本のライトタックルでフライフィッシングを楽しむことができます。

内海さん以下、キャッスルホテルの日本人スタッフが、日本のフライフィッシャーを心から歓迎してくれることでしょう。

<追記>
ご家族でNY旅行をしている場合、1人でキャッツキルへ釣りに行くには気が引けることでしょう。しかしご安心ください。キャッツキルへ向かう途中に、全米で最大級の有名なアウトレットモール「ウッドベリーコモンプレミアムアウトレット」という大きな商業施設があります。

JFK空港やマンハッタンからは車で1時間以上かかるので、よほど旅慣れた人でないと、個人で移動するのは敷居が高いのですが、タリータウンのキャッスルホテルから家族一緒に出発し、奥様やお嬢様は、アウトレットで途中下車してもらって買い物。夕食で合流するというプランも充分可能です。

また、ワイン好きの奥様には、キャッツキルまでの途中にワイナリーが50軒以上あり、ワインの試飲を楽しむことができます。仮に、奥様やお子様をホテルに残したとしても、ホテルを含め周辺には歴史的建造物が多く楽しめるツアーもあります。特に大富豪ロックフェラーの邸宅「カイカット」のツアーは見ごたえがありお勧めです。




ワイナリーのようす


ホテル内にはレストランやSPAも充実しており、ホテルに1人で残っても充分楽しめます。キャッスルホテルのオーナーは日本人ということもあり、ホテルには日本語が話せるスタッフがいますので、安心して奥様を置いて釣りに出かけることができます。

問い合わせ先
Castle Hotel & Spa キャッスルホテル&スパ
castlehotelandspa.com

フライフィッシング専用の問い合わせメールアドレス(日本語で対応可能)
Flyfishing@castlehotelandspa.com


2019/12/16

つり人社の刊行物
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…
つり人社の刊行物
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…

最新号 2020年12月号 Mid Autumn

特集
共鳴するウエットフライ
エキスパートが実践していること

 今号の特集はウエットフライ。十人十色、という言葉がこれほどマッチするフライフィッシングはないかもしれません。エキスパートたちには「この釣りを始めたきっかけ」から、今実践しているテクニックまで、さまざまな質問をぶつけてみました。すると、実は似たような釣り方をしていることも少なくない、ということに気づかされました。
 先般22年ぶりの復刊となった、佐藤成史さん著『瀬戸際の渓魚たち』。Special Topicsと題しまして、阿武隈高地の天然イワナについて現状を取材してきました。日本列島形成の背景をもとに浮かび上がってきたのは、イワナたちの「山越え」という仮説。人類の営みと比べたら気の遠くなるような時間をかけて脈々と受け継がれてきたイワナたちの「血」。そんな歴史を感じることのできる幸福と、現状への警鐘があぶり出されています。
 巻末の長編特集は、来日も幾度となく果たし、「フライキャスティング」に大変革をもたらしたといってよい、メル・クリーガーさんを紹介しています。メルさんをよく知る5名に、知られざる側面を含めた彼の功績、人となりを語ってもらいました。
[ 詳細はこちらから ]

 

NOW LOADING