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ボリュームアップのディアヘア活用術

ヘアを刈り込むスパンヘッドのコツを紹介

北角 勝=解説

存在感のあるフライを作るためには、ポディーをどのような方法で巻くかということも大きなテーマになる。そこで今回は、ファットなシルエットを表現するのにぴったりのスパンボデイーに注目してみた。
この記事は2015年10月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
北角 勝(きたかど・まさる)
1973年生まれ。埼玉県戸田市在住。クラシックパターンから、最新のマテリアルを取り入れたオリジナルのパターンまで、さまざまなドライフライのタイイングを得意としている。獣毛などのマテリアルを使ったパターンも愛用。

ディアヘアで作るスパンボディー

フライのボディー部分にボリュームを持たせたい場合、スレッドとダビング材を重ねて太くするという手もあるが、今回紹介したいのはディアヘアを使ったテクニック。マドラーミノーなどのスパンヘッドに見られる、フレアさせたヘアを刈り込んで形作る方法だ。

浮力も高く、カットすることによりどのような形のボディーでも思いどおりに成形できるので、既存のフライパターンへも応用しやすい。

ディアヘアのボディーをきれいに作るためには、立ち上がったヘアの密度が重要になる。しかし、より密に巻いたからといって、浮力が高まるわけではない。
スパンボディーを作る時は、しっかりテンションを掛けてディアヘアを絞り込むため、強度のあるスレッドを使うと安心。北角さんは「XX-ストロングスレッド」(ラガータン)を使用

ぎちぎちにヘアを詰めてしまうと重くなって、吸い込んだ水はけが悪くなってしまうという面も出てくる。そのためフライパターンにもよるが、ヘアの間にも適度に空気を内包しつつ、カットした際にしっかりと形が作りやすいくらいの量がちょうどよい。

スパンボディーはタイイングが面倒に思われがちだが、実際に巻いてみると同じ工程を繰り返すだけなので、意外に簡単。しっかりと巻けば強度の高いフライにもなる。

フックにスレッドで下巻きを施す。その際、フレアさせたディアへアがゲイプ側にずれないよう、ストッパーの役目として、スレッドでコブを作っておく(写真の赤いマーカーで着色した部分)

ヘアは極端に多すぎると、ヘア同士が重なってしまいきれいにフレアしない場合があり、逆に少なすぎると何度も取り付けなければならなくなる。スレッドを掛けた時にしっかりとまとめられる程度が適量

ディアヘアは基本的に根元からカットして使う。フックに留める前にアンダーファーは取り除いておこう。ちなみに、留める前にスタッカーで簡単に揃えておくと、まとまりもよい

ディアヘアは根元がアイ側になるように、下巻き時に作ったコブのすぐ前側に留める。この時、ヘアにテーパーが付きはじめる箇所を目安にスレッドを掛けると、効果的にフレアさせやすい

スレッドを掛けたら、じっくりとテンションを掛けて真下に引くと、このようにヘアが立ち上がる。この時点ではまだ左手を保持し、3回転ほど強すぎないテンションで同じ箇所にスレッドを掛けて固定

その後、左手を離すとこのような状態になる。この時点でもスレッドを緩めないように注意

次に、マテリアルを持つ手を離した状態のまま、同じ要領でスレッドを回転させる。するとフレアしたディアヘアもねじれるようにシャンクの周りを回転し、上下左右均等にヘアが配分される。この時2回転程スレッドを回して、ヘアをしっかりと固定

ヘアがシャンクの周りに回ったのを確認したら、いったんスレッドを下げて、フレアしたヘアの前後の感覚を狭めるように爪で圧縮する。この作業を怠ると、のちのカット時にヘアの密度がまばらになってしまいがち

その後は、立ち上がったヘアをかわしながらスレッド位置を前方に持ってくる。この時、前方を爪で押さえながら作業を進めると楽

一連の作業を終了した状態。しっかりとヘアが立ち上がって、前側に余計なヘアが飛び出していない状態が理想的

その後は再び、これまでと同じ要領で、ヘアの束をシャンクに乗せ、フレアさせる。束を留めるのは、一度目のフレアを終えた直後の部分

今回は4束フレアさせた。ある程度密にするならばさらに回数を重ねる必要があるが、ボディー、もしくはヘッドの幅を考えて調整すればよい。全方向に均等にヘアが立ち上がっているように留めること

次はいよいよカット。一旦フィニッシュして、バイスから外して作業すると楽。まずは下側をバッサリとカットして、上下左右を分かりやすくする

その後はフライのサイズ感を把握するためにも、ある程度無駄なヘアをざっくりとカットしてから作業を進めるとよい

自分の好みの形にカットしていく。失敗しないためにも、ある程度形を作ったら、そこから全体的に削って小さくしていくようなイメージで調整していく。ちなみにフッキング性能を損なわないためにも、下側は短めに刈り込む

今回はロングシャンク・フックを使ってカメムシ型に成形。もちろん同じ工程で細長いボディーもヘッドも作れる

2018/8/15

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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最新号 2023年12月号 Early Autumn

【特集】尖ってるドライフライ

今号では、編集部が「面白いな」と感じた渓流用のドライフライのタイイングと考え方を紹介します。取り上げるのは、パラシュートスパイダー、エルクファンタジィ、丹沢スペシャル、マジックバレット、里見パラシュート、ヨッパラ、特殊部隊の7本です。これらを並べてみると、みなさん気にかけているのは、耐久性、浮力の持続性だけでなく、「誘い」であることがわかります。水面の流れより遅く流れる、フライそのものが揺れる、マテリアルが揺れる、などさまざまですが、いわゆるナチュラルドリフト以上の効果を明確にねらっているものがほとんど。来シーズンに向け、ぜひ参考にしてください。
またウォルト&ウィニー・デッティ、ハリー&エルシー・ダービーに関するフライタイイングの歴史、そして、『The Curtis Creek Manifesto』(日本ではご存知、『フライフィッシング教書』として翻訳されています)の作者、シェリン・アンダーソンについても取り上げています。


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