ヨレと岩で見つけるポイント
無数の流れから有望な付き場を捜し当てる
角田 智=解説
数あるポイントを手前から順に探っていくのではなく、魚が付いている可能性の高い場所を絞り込む。「流れの間にできたヨレ」と「魚が付きやすい岩」。このふたつを意識して釣り上がれば、大小無数のポイントを前にしても迷わずフライを流せるはず。
この記事は2013年7月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
つのだ・さとし
1961年生まれ。長野県佐久市在住。地元を流れる千曲川のフライフィッシングに精通しており、春の本流、初夏以降の支流など、季節の釣りを楽しんでいる。
つのだ・さとし
1961年生まれ。長野県佐久市在住。地元を流れる千曲川のフライフィッシングに精通しており、春の本流、初夏以降の支流など、季節の釣りを楽しんでいる。
意識するべき2つのサイン
千曲川をホームのフィールドにしている角田智さんは、川に立ってまず目を向けるのは、流れ同士、もしくは岩などにぶつかって形成された水面のヨレだという。このヨレは、流れが何らかに当たってブレーキがかかってできたものであって、そこに泡があれば、周りより遅く流れているのが分かるため、一つの目安になる(写真A)。

そして次に目を向けるのは岩。岩といっても、底石や水面上に顔を出しているものなどさまざまだが、注目するのは、下がエグレていて魚の隠れ場所が形成されているところである。
のっぺりと変化の少ない岩よりも、下のほうが陰になっているもの(実際エグレていれば陰になっている)で、エグレた影が流心側にある岩こそ、魚が付いている可能性が高い。
これは水面上に出ている岩に限らず、底に沈む石にもいえることなので、偏光グラスを用いて見逃さないようにしたい(写真B)。

流れが作り出すヨレと岩、いずれか一方でも魚が付く可能性は充分にあるが、どちらも備わっている場所であれば、さらに有望。ポイントを捜すうえでのこの2つの判断基準は、初めての川でも大いに役立つという。
実際にこうしたポイントへアプローチする際、「魚がフライに出る地点をあらかじめ予想しておくことが大切」と角田さんは話す。魚が付いている場所をピンポイントで仮定しておけば、より確実なアワセも可能になる。

「ヨレ」の見つけ方
実際のところ、「ヨレ」といっても岩の多い川面には複雑な流れが幾筋も存在していて、あちこちに見られる。ここでいう角田さんのヨレとは、流れと流れの間に形成される三角地帯がメイン。こういった箇所は、低い落ち込みが連続する瀬などのエリアに多く見られる。こうした地点には、複数の流れが集まり、エサの流下が多いうえに、周辺の流れよりも遅く、捕食が簡単なため、魚にとっては絶好の場所といえる。
メイフライのハッチに伴ってライズが見られやすいのも、ヨレが形成された三角地帯。流れが複雑なぶん、ドラッグ回避には気を遣いたいところだが、ヨレの周囲にある流心に気を配りながら、ティペットをコンパクトに畳むようにプレゼンテーションするのがコツになる。

さらに角田さんは、石の裏側など見えていない部分のヨレにも注意を向けることをアドバイスしてくれた。
「落ち込みが連続している場所では、三角地帯(ヨレ)はおもに石の下流側に形成されやすいのですが、時おり石の上流側にもできていることがあります。そういった場所は釣り上がっていると見逃しがちで、気付いた時にはもう近づきすぎている……そうならないように注意したいですね」
「岩」は影を見る
千曲川の釣りで、実際にヤマメが反応したのは、落ち込みのすぐ上の流れ(写真C)。肩の部分にある岩と流れの奥にある岩によって、両脇には隠れやすいスペースが充分にあり、かつ流下するエサが集まりやすくなっている。
「ある程度の数の魚が確認できている川では、こうしたポイントには高確率で魚が付いています。たとえ全体的に水深が浅くても、岩の脇や下に隠れ場所があり、エサの流下が望めれば魚は付きます」

次にイワナが飛び出してきたのは、岩の脇を水面がヨレながら流れるポイント(写真D)。流れの脇にある岩は、ヨレた流れの側に影ができており、魚の隠れ場所があることが分かる。

さらにその脇には他の箇所よりも遅めに流れるバブルラインがあり、最も有望なレーンだといえる。底には頭ほどの大きさの石が点在して複雑な流れを作っており、フライを流すコースに迷いそうになるポイントだが、岩とヨレの要素から見れば、優先する流れが明確になる。

特に千曲川のようにフラットな流れに落ち込みや瀬が点在する川では、一つ一つのポイントを潰していくように釣ったのでは、なかなか先へも進めない。そこで流れ、岩によって形成されるポイントを観察することによって、効率よく魚の付き場を探ることができる。
2017/8/28