ボリビア在住妻 素人南米釣行記
アマゾンでピーコックバスを釣るの巻
高阪 美穂子=写真と文
《Profile》
高阪 美穂子(こうさか・みほこ)
ボリビア・ラパス市在住。2007年にフライフィッシングを始める。2015年には愛知県に住み、毎週岐阜の渓流へ通っていた。夫の仕事の都合でボリビアに移住後、現地でのフライフィッシングを模索中。フライフィッシングが好きな理由は、自然に溶け込めること、場所・時期・気候などの条件を考え、自分がイメージしたとおりに魚が釣れた時の喜びが大きいこと。
高阪 美穂子(こうさか・みほこ)
ボリビア・ラパス市在住。2007年にフライフィッシングを始める。2015年には愛知県に住み、毎週岐阜の渓流へ通っていた。夫の仕事の都合でボリビアに移住後、現地でのフライフィッシングを模索中。フライフィッシングが好きな理由は、自然に溶け込めること、場所・時期・気候などの条件を考え、自分がイメージしたとおりに魚が釣れた時の喜びが大きいこと。
ど素人がアマゾンでの釣りにいきなりチャレンジしてみました
ボリビア・ラパス在住妻で、ネイルノットができないフライフィッシャーです。私が住んでいるラパス中心街です。標高は3600mで富士山の頂上付近で暮らしているようなものです。なんといっても酸素が薄い。坂を登るとすぐに息切れ。食事をすると胃に酸素が取られ、頭がボーっとします。
地形はすり鉢上になっていて、市内の高い所との標高差は600m。高低差がある移動ではロープウェイが活躍。スペイン語教室へはこのロープウェイで通います。しかし、未だにスペイン語はカタコト。
食料の買い物は市場。安いし、新鮮。しかし、会話はスペイン語。多分日本語にすると「これ。欲しい。いくら?」といった感じで、いかにも外国人。でも、たまにはジェスチャーなどを使い、数10円まけてもらっています。
言葉が分からない、かつラパスにはデパートや(日本人好みの)美味しいレストランが少ないので、楽しみといえば中南米での釣り旅行! ということでさっそく、赴任後1回目の旅行先を探します。ここでもスペイン語がネックになり、ネットでの情報収集に苦戦しているのが実情です。
ならば奥様ネットワークで情報捜し
駐在している奥様のネットワークから情報収集すべしと、女子会でご相談。さすが女性のネットワーク強し。「釣り好き女子紹介しますよ」と即答いただきました。すぐに釣り好き女子に連絡すると、南米での釣り話で盛り上がります。彼女が釣ったピーコックバスの写真を見せてもらい、ひと目惚れ!「このきれいな魚を釣りたい」とテンションもマックス。タイミングよく、釣り好き女子の次の旅行先がアマゾンのネグロ川。「ピーコックバスを釣るつもり」と聞き、便乗させてもらうことになりました。
ネグロ川へ
ネグロ川のベストシーズンは水位が下がる12月から翌2月。まずはツアー会社(https://www.cucapesca.com/)を捜します。こちらも釣り好き女子のネットワークで彼女の友だちから紹介してもらいます。釣りの詳細は、ツアー会社とスマホのチャットアプリで確認。やり取りはスペイン語なので、基本的に彼女が窓口。完全に彼女におんぶにだっこです。
https://www.cucapesca.com/
内容の確認ができたら前金(全体の約10%)を送金して、申し込み完了。今回のツアーは、ブラジルのマナウスからバルセロスまでの航空券、ホテルとなるマザーボートでの7泊8日、釣りガイド6日、3食昼寝ビール付き。まさに釣り三昧。もはや合宿です。
やっと旅行当日
アマゾン川の玄関となるマナウスへ出発。興奮して飛行機の中でも眠れません。マナウスではコンダクターとほかの参加者と合流。釣り人はツアーコンダクター1名も含め、5組9名とこじんまりしています。参加者は体格がよいブラジル人のおじさんたち。だんなと私だけ明らかに身体が小さく、「大丈夫か?」と不安になります。バルセロス行きのチェックインカウンターでも釣りザオを持ったおじさんだらけ。この飛行機の乗客はほぼ釣り人でした。
マナウスからは小型飛行機でホテルボートが待つバルセロスへ向かいます。
飛行機からは、アマゾン川が見えます。さすが流域面積世界最大の川。川の大きさに圧倒されているうちに、釣り人の町バルセロスに到着。
そして、これが私たちが宿泊したマザーボートです。コテージ宿泊よりも下流から上流まで釣りを楽しめます。
ルアーフィッシングで大ものを釣る
バルセロスの港から出発して、約2時間で初日の停泊場所に到着。さすがアマゾン川。支流のネグロ川でも川幅1〜2kmと巨大。鳥の鳴き声が聞こえ、両サイドはジャングルが広がっています。午後からネグロ川での初釣り。小型のアルミボートでどんどん細い川へと入っていきます。30分後、やっとポイントに到着。日差しは強く、サングラスの隙間から日焼けしそう。
ネグロ川は黒い川という意味で、タンニンなどの植物由来の腐食酸で文字どおりに水が黒い。酸性なのでカはまったくいないので助かります。でも、ホタルは生息しているのが不思議です。
当然、ガイドのポルトガル語も分からないので、指さす方向にキャスティング。でも、しばらくしてもまったく反応なし。暑いため、緊張感がなくなり、キャスティングも失敗。「まぁ、いいか」と思いつつ、そのまま5mくらい泳がせていると急にサオがズンと重くなり、初ヒット!。
なんの魚か分からないけど、強い引きに驚きながらもとにかく必死にリールを巻きます。
ピーコックバス!ガイドも「グランジ(大きい)、アスー(ピーコックバス最大種)、セイス(6kg)」と笑顔。ガッチリと握手。やりました!
ボートの上で写真撮影をしていると、ガイドが水に入れとジェスチャーします。「えー、この黒い水に入るの?」と思っていると
だんなに「大きいサイズが釣れた時は水の中で撮影をするんだよ。釣り人はこれがしたいんだっ」と言われ、仕方なく水の中へ。
最終的にこの最初に釣った魚が私の最大サイズになりました。このサイズを釣る難しさが分かっていればもっと喜べたのにと、後々後悔。
フライフィッシングでピーコックバスに挑む
釣行3日目。だいぶ上流に来ました。水位が低く、アルミボートでやっと通れるような場所が増えてきます。ポイントへの移動は、白い砂浜あり、倒木あり、つる植物ありでこれぞジャングルクルーズです。浅瀬には、日本で熱帯魚として売られている魚たちが泳いでいます。そして、いよいよフライフィッシングができる時が。ツアーコンダクターは大もののピーコックバスを釣るために10番のフライロッドを使っています。しかし、我が家には5番のロッドしかないため、浅瀬で小型のピーコックバスをねらいます。
ピーコックバスはジャングル内部の水たまりに繋がっている川岸や奥まった場所を好むとのこと。さらに倒木や低木の茂み、川面に張り出した木々の下などの障害物がある場所でエサになる小魚が来るのを待っています。そこで、支流から分岐した入江(ラゴ)にボートを停泊。ここでフライフィッシングをします。
ガイドは川底の窪みをさし、ピーコックバスが産卵に使った場所と教えてくれます。目を凝らすと、水中にそれほど大きくないボーボレータを発見。
浮足だって川の中に入ります。川の水は黒くても無臭で、その頃にはまったく気になりません。湿気がないので日陰は涼しいけど、日なたは太陽がジリジリします。水の中は心地よく、はしゃいでいると、ガイドから川底には淡水エイがいるので、踏まないようすり足で歩くようにと注意を受けました。
泳いでいる小魚が2cmくらいなので、フライも同じサイズのイワイミノーを結びます。低木の茂みに近づき、キャスティング。魚が見えると力が入り、いつもどおりなかなかポイントに入りません。また、日本では渓流でのドライフライのみのため、慣れないリトリーブがぎこちない。
その時、自分のフライの奥でパシャっとボイルがあります。魚の食い気は問題なしとさらに焦ります。やっと3投目で思ったところへフライが落ちます。アワアワとリトリーブをしていると水面直下でバイト、掛かりました!
小型のわりには引きが強い。次は派手なジャンプ、これぞピーコックバスと心が弾みます。
魚に翻弄されながらも、なんとか手元まで寄せ、きれいなボーボレータをキャッチ。けしてサイズは大きくはありませんが、ルアーでの釣果よりも数倍嬉しい1尾です。
その後は、ボートからもフライフィッシングも楽しみます。岸際でも水深があるので、もう少し大きなフライやポッパーなどを使います。
ボートの場合、ポイントまでの距離をおきます。自分の下手なキャスティングにイライラし、反省するばかりです。
午後6時を過ぎ、巣へ帰る鳥が大きな声で鳴きます。ボートから見る夕日は最高に美しく、満足感で満たされ、マザーボートへ戻ります。
ホテルボートの生活やアマゾンの自然
今回のマザーボートは2人1部屋の客室が5部屋、食堂が2部屋、キッチン、操縦室がある2階建ての小型の客船です。
客室は2段ベット、洗面、トイレ、シャワー、エアコンが付いています。正直、広いとは言い難く、シャワーもお湯は出ません。出るのはネグロ川の水。しかし、ここはアマゾンのジャングル、これでもすごい贅沢です。さらに、コンセントもあり、スマホ、カメラの充電ができるのはありがたいです。
食事はすべてバイキング形式です。朝は南国のフルーツとブラジルのパン(ポンデケージョ)、ケーキなどです。特にポンデケージョは焼きたてで、チーズの香ばしさともちもちした食感がお気に入りです。
昼食・夕食はサラダ、お米、パスタ、ステーキか豚肉の煮込み、ナマズやピラルクのフリッターです。味は絶品!ついついおかずを多く取ってしまいます。
さらに食後は必ずデザートをホテルの好青年スタッフがサーブしてくれます。女性には嬉しいサービス。
たまに昼食や夕食に浜辺でバーベキューすることもあります。釣ったばかりのピーコックバスを捌き、直火で焼いてくれます。びっくりすることにまったく臭みがない、身が軟らかな白身魚。味付けは塩、胡椒だけですが、大自然の中で食べると格別です。
食後は、昼ならばハンモックで昼寝をし、夜は満天の星空にホタルの姿も。
昼・夕食前は、楽しい食前酒タイムあり。釣りで汗をかいたあとの一杯、たまりません。お酒はビールかカイピリーニャ(サトウキビのお酒で割った甘いカクテル)。ワニの唐揚げやピラニアのスープなどおつまみも出してくれます。
また、この時間は他の釣り人との会話も楽しめます。皆、陽気なブラジル人。何を話しているかは不明ですが、マンガのように抱腹絶倒している姿を何度もみました。私たちにも、日本のことを質問してくれたり、ブラジルのことを教えてくれたりと親切で素晴らしい人たちでした。
ネグロ川では、魚だけでなくワニ、サル、さまざまな種類の鳥やピンクイルカ(アマゾンカワイルカ)の姿も。
特にピンクイルカは頻繁に見かけます。釣り人がリリースした魚をねらい、釣り船を尾行してきます。そのため、ガイドは魚が食べられないように、ボートを浅瀬に移動させ、茂みの中にリリースします。魚が豊富なアマゾンでも、1尾1尾の魚を大切にしているガイドの姿が印象的でした。
ネグロ川で出会った魚たち
6日間の釣行でピーコックバスの4種コンプリートには届きませんでしたが、8種類を釣ることができました。ピーコックバス3種類目のパッカ。
古代魚タライーラ。
カマスに似たビックーダ。
ごぞんじピラニア。
改良品種が観賞魚として世界的に人気のオスカー。
使用したフライはこんな感じでした。
旅行最後の夜。マザーボートはすでにバルセロス港の近くに停泊しています。ボートからバルセロスの町の明かりが見え、旅行が終わってしまう寂しさがあります。
6日間も連続で釣りをすることは初めてで、毎日が筋肉痛との戦い。後半は疲労困憊で、昼寝も夜も爆睡。しかし、釣りはもちろん、ほかの旅行ではなかなか味わえない日々でした。力の限りアマゾンを満喫しました。
また、主婦としては、ベットメイキング、洗濯、掃除などをすべてスタッフがしてくれて、上げ膳据え膳の夢のような時間でした。
2019/4/28