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当たればでかい、北陸の初夏

雪代明けからねらう良型のヤマメ

櫻井忠行=解説
富山のフィールドに毎年通っている川島直生さんが掛けた、堂々とした風体の尺ヤマメ。こんな魚が釣れれば、片道約250kmの距離を通うことなど、なんてことはない

平野を二分する丘陵によって、東西でフィールドが異なる富山県。いずれも急峻な地形のなかを流れ、天候などの影響を受けやすいが、ベストのタイミングで釣行できれば記憶に残るような魚との出会いが待っているはず。
この記事は2013年8月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
櫻井 忠行(さくらい・ただゆき)
1966年生まれ。富山県富山市在住。地元を流れる北アルプスを水源とする河川を中心に、中流から源流まで幅広く探っている。夏場は山岳渓流のイワナ釣りにも足繁く通っている。

大型メイフライが舞う雪代明け

富山県は中央で南北にのびる「呉羽(くれは)丘陵」の東西で、「呉東(ごとう)」、「呉西(ごせい)」の2エリアに分かれている。

呉東は背後に北アルプスをひかえ、流れる河川の多くは3000m級の山々を源流としている。そういった川は雪代による増水と冷水の影響が大きく、高山から海へと一気に駆け下るような、比較的流程の短い”天井川”が多いのが特徴だ。

一方の呉西は岐阜県境付近の山々を水源に持つ川が多く、なかでも多くの支流を擁す庄川水系が代表的なフィールドとなっている。

呉東に比べて高い山を持たない地域だが、少し奥へ入れば深い峡谷を形成して流れる渓が多い。例年ではほとんどの場所で6月中に雪代が収まるものの、呉東工リアではまだ青白く濁っている川もある。

場所によっては、梅雨時期にも雪代が出ている河川も多いので、水位などの情報は釣行前に必ずチェックしておきたい。呉西エリアは6月には完全に増水が収束する。

いずれのエリアでも、ヤマメが釣れる中流域では、この時期に、オオマダラカゲロウやモンカゲロウ、エルモンヒラタカゲロウなど大型メイフライのハッチが始まる。呉東・呉西とも初夏はこれらの虫を意識した、日中のドライフライの釣りが面白い。
7月下旬になればアブが大発生する富山県の渓。標高が低めの渓は要注意。でもそんな時こそ、チャンスになる場合も……

対照的なフィールドが集まる両エリア

呉西では、1つの川でも区間ごとに連続するポイントを釣り上がっていけるフィールドが多いが、呉東には大きな河原を蕩々と流れるような川が多く、ポイントが密集、連続しているところが少ない。

次のポイントまでに数キロ移動しなくてはならないことも多いので、隣接する渓を横断的に動きながら、各ポイントを探っていくほうが要領よく1日の釣りを組み立てられるはずだ。
呉東エリアの川の中流域は、川原の広いフラットな区間が多い。それぞれのポイントが離れているので、ひとつの川に固執せずに、近隣のフィールドを歩き回って魚を捜したい

また、呉東には漁協が管理していない河川も多く、放流実績がないことも珍しくない。そのため、全体的に魚が多いとはいえないが、広い場所を占有してエサを捕食しているヤマメは大きく、抜群のプロポーションに育っている。

一方の呉西は漁協の管理が行き届いており、放流活動も盛んだ。里から近くとも、鬱蒼とした森を流れる渓が多く、堰堤が連続する川が多いので、動きやすい格好で川に入りたい。事前に国土地理院の地図などで地形を把握し、入渓・退渓点を確認しておくのがよいだろう。

こちらは、7月に入れば日中の釣りは一段落し、イブニングの時間帯が面白くなる。堰堤下などの大場所で、ヒゲナガのハッチに合わせた釣りがおすすめだ。この時期は日照時間も長くなり、たっぷりとイブニングを楽しむことができるが、安全に退渓できるよう、時間配分にはくれぐれも注意。
タイミングさえ合えば、しかるべき場所から、しかるべき魚が反応してくれる。プール右奥のヨレに粘り強くフライを浮かべていると、いきなり尺超えが飛び出してきた

私自身は、暗い谷が多い呉西の川よりも、白い岩がごろごろ点在する明るい渓が多い呉東への釣行が多い。大岩の間を目が覚めるような碧い冷水が流れる渓で、一発大ものねらいの釣りが、このエリアの醍醐味だと思っている。
大量の雪代に磨かれて育つ呉東エリアのヤマメたち。管轄漁協のない河川では、魚の絶対数は少ないが、その分良型が多い

富山の釣りは天候に左右されることが多く、一度増水してしまうと平水に戻るのに時間がかかるなど、リスクが多いのも事実。現地に行ってみないと判断できないような状況も多いが、何度か足を運んでいれば、必ずよい釣りができるタイミングに当たるはずだ。
アダムズ
●フック……TMC102Y #14など
●テイル……コックネック・ブラウンなど
●ウイング……ハックルティップ・グリズリー
●ボディー……ダビング材各種・グレー
●ハックル……コックネック・ブラウン&グリズリー
釣り上がりのシチュエーションでオールマイティーに使える定番バターン。ハックルを厚めに巻いて、浮力を向上させている。シーズンを通じて有効なフライ


ガカンボバターン
●フック……TMC102Y #14など
●テイル……コックネック・クリームなど
●ボディー……ダビング材・各色
●ウイング……CDCナチュラル
●インジケーター……エアロドライウィング・FLピンク
CDCを両脇になびかせるような形で取りつけている。水面に張り付くように浮かぶが、インジケーターを取りつけることで視認性もアップさせている


ちなみに、7月も下旬ともなれば北陸名物「オロロ(イヨシロオビアブ)」が発生し、標高の低い渓から人を遠ざけるという点も、この地方の渓流の特徴だということを覚えておきたい。

2018/6/29

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