弧を楽しむ、秋の東北のニジマス釣り

宮城県/荒雄川

里見 栄正=解説
バットに手を添えつつ、ロッドのしなりを充分に活かして魚を寄せる。使っているのは#3ロッドだが、曲げ強度を高めたブランクが、50cm近い魚でも無理なくいなしてくれる

10月、広々とした高原の荒雄川では、瀬やプールには40~50㎝のレインボーが定位し、さまざまなスタイルの釣りが楽しめる。そんなドライフライにも好反応の荒雄川のトラウトと遊ぶには、低番手ロッドの釣りも面白い。
この記事は2016年1月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
さとみ・よしまさ
1955年生まれ。群馬県太田市在住。フライライン及びティペットコントロールを駆使したドライフライの釣りを得意としながらも、ニンフを使ったルースニングの釣りにも長ける。シーズン中は全国でスクールを行いつつ、川をめぐる日々。シマノ社のフライロッドの監修も務めている。


ニジマスのドライフライ・フィッシング

フラットで広々とした流れには水生昆虫も多く、一般河川がシーズンを終えても、ニジマスを対象としたマッチング・ザ・ハッチの釣りが楽しめる川として、荒雄川は多くの釣り人を楽しませている。
広々とした流れにポイントが散らばる荒雄川。水深のある場所では、良型が定位しているようすも見られる

一方で、浅い流れに定位しているトラウトをサイトでねらうこともできるほか、北海道の川で使うような大きめのドライフライを使ったブラインドフィッシングも成立し、さまざまなスタイルの釣りを受け入れてくれるのも魅力の一つだ。

そんなフィールドに、周辺の山では紅葉が見頃になる10月下旬、里見栄正さんが足を運んだ。シーズン中もイワナ、ヤマメの釣り場として有望な荒雄川は、里見さんにとっても長年スクールなどを行なってきた馴染みの深い川だ。
倒木の際やバンク際などのレーンに定位している魚は多い。川幅は広いが、小さなポイントでもていねいに探りたい

川幅は広く、所々で分流が数本に分かれ、それぞれに瀬やプール、落ち込みなどのポイントを形成している。さっそくそんな分流の1本に入ると、深さ80㎝程の緩い瀬にゆらゆらと数尾のレインボーが定位しているのが見える。目立った流下物は確認できないが、時おり派手なライズも見せている。
流心には一筋縄ではいかない魚も。大きめのホッパーパターンで反応を探る

ボトム付近に付いている魚はなかなか素直に反応してくれないが、1尾が浮上してきたタイミングで#8の大きめのカディスパターンをドリフトさせると、ゆっくりとした動作でフライを吸い込んだ。
里見さんが荒雄川で使っていたカディスパターン。ジェル状のフロータントを塗り込み、時おり水面を滑らせるようにフライを動かして誘いを入れていた

元気よく水面に躍り出るレインボー。バットのパワーを意識しながら魚を寄せる

タイミングを合わせてロッドを立てると、魚はバットから絞り込むような引きを見せながら、勢いよく下流に走り始める。里見さんはバットに手を添えながら、ロッドのパワーで魚の力を抑え込むようにいなし、確実に魚を寄せ、ランディング。

同じレインボートラウトでも、プールに溜まっている魚よりは、ある程度流速のある場所に定位している魚のほうが、やはりコンディションもファイトもよいようだ。
11月末日までニジマスをねらった釣りが楽しめるC&R区間では、再生産した美しい魚も泳いでいる。ブラインドフィッシングで充分反応が得られるのもうれしい。ニジマス相手のドライフライの釣りでは、時には流下する虫にフライを合わせるよりも、アピール力のあるフライで魚を誘ったほうが効果的な場面も

曲がりを楽しみつつ、魚をいなす

荒雄川のニジマスのアベレージは40㎝前後。最初に掛けた魚のサイズはそれよりも大きい50㎝ほどだったが、実は里見さんの使っているロッドは上流部の渓魚を相手にする場合と同じ#3。

実際に魚が掛かればかなり曲がるが、それでも必要以上に走られることなく、スムーズに掛けては取り込んでいく。
水深のあるところはルースニングでねらった。#12前後のビーズヘッドを留めたヘアズイヤー・ニンフが効果的だった

「普段、ニジマスでもコイでも#3ロッドで遊んでいます。このロッドは曲げ強度を重視してデザインされています。よく曲がるけれども、バットにはパワーを持たせてあるので、かなり曲がっても粘りが残ってくれるんです。もちろん、渓流の釣りを念頭にデザインしたロッドですので、イワナ、ヤマメでも気持ちよくサオを曲げてくれます」
『Asquith』の曲げ強度を示す。柔軟性と芯のある強さを両立させたブランクは、こんなふうに曲げてもその張りに余裕を残す

荒雄川のニジマス釣りは、紅葉の季節。周辺の山が色付くなかで釣りを楽しめる

通常であれば#5~6ロッドを選びたいような対象魚にもこの#3ロッドを選ぶのは、やはりサオがしっかりと曲がるようなやり取りを楽しみたいからだと、里見さんは話す。

低番手ロッドではランディングに時間が掛かってしまいそうではあるが、里見さんの釣りを見ていると、そのやり取りは実にコンパクト。ブランクの曲がりの限界が高いところにあるので、それこそ弧を描いた状態からでも魚に主導権を握らせず、余裕を持って曲がり(ファイト)を楽しむ釣りができるという。
『Asquith』はシマノとGルーミスのコラボレーションモデル。カーボンシートをX状に巻き上げる技術「スパイラルX」を採用し、ねじれ、曲げ強度に強く高い耐衝撃性も備えている。里見栄正さんがデザインを手掛けた『フリーストーン プラウデス』のアクションを踏襲した日本の渓魚を釣るためのロッド。リールシートには圧接バンブーを採用し、個性的ながら落ち着いたデザインとなっている。
#1/2(7フィート3インチ)、#2/3(7フィート6インチ)、#3(8フィート)の3モデルをラインナップ


そんな性能を持つブランクでは、カーボンシートをX状にティップまで巻き上げた「スパイラルX」を採用。ねじれに強く、よく曲がるが決して弱いわけではなく、いわゆる“ベナンベナン”な仕上がりにはならない。
右/ブランクにはコラボレーションを示す2つのブランドのロゴが並ぶ
左/同じ『Asquith』シリーズのフライリールにはハンドル側にドラッグ調整ツマミを設定。背面側はすっきりとしたデザインに


「ドライフライの釣りであれば、ニュージーランドやアメリカなど海外のフィールドも、このロッドで充分対応できると思います。実際にテストの段階でも60㎝のブラウントラウトで試したりもしました。僕の場合は、どのような釣り場でも渓流のイワナ・ヤマメの釣りと同じようなキャストフィールで釣りを楽しみたいという感覚があるので、やはりこういったアクションは理想的ですね」
フラットで広々とした渓相が特徴的な荒雄川。この日雨雲が断続的に通過していったが、雲の切れ間には明るい陽が差した

荒雄川でロングキャストを求められるような場面は少ない。一般渓流の感覚で楽しめるのも魅力

特に荒雄川のようなブラインドフィッシングで反応を得られるようなフィールドでは、必然的にロッドを振る回数も多くなる。手に掛かる負担も考えれば、こうした場面では、やはり番手の軽いロッドのほうがより1日の釣りがより快適になるかもしれない。

2017/10/23

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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