最適解を追い求める。
「適切なロッドを選ぶ」というテクニック
安田 龍司=解説、FlyFisher編集部=写真と文ひと口に九頭竜川のサクラマス釣りといってもタクティクスはさまざま。時期に分けて釣り場の状況を捉え直し、それぞれの状況に合わせてフライと流し方を考える。そうすればおのずと適切なロッドが見えてくる。
協力=シマノ
この記事は2020年Early Summer号に掲載されたものを再編集しています。
アユザオなどで発達した、感度をアップする技術が用いられているため、太いフライラインを通じてでもさまざまな情報が伝わってくる
九頭竜川のエキスパート、安田龍司さんは、サクラマスの解禁から禁漁までを前期、中期、後期と3つに分けている。
この分け方の基準は水量、水温、そしてサクラマスの活性だ。
水量は前期から後期に向けて下がる傾向にあり、そうすれば当然ながら水温は上がる。そしてサクラマスは・・・・・・、よりスレてくるということだ。
スイング中の手元。ドラッグは緩く、ラインも保持しない。このまま魚にフライを持っていかせる
今回は安田さんがそれぞれの時期で使用しているフライを紹介するが、ご覧になればわかるように、後期に向かうにつれ、サイズが歴然と小さくなっていく。
そして重要なのは、フィールドの状況が変われば、使うラインが変わり、そうなると最終的にはロッドもそれに適したものを選んだほうがよい、ということだ。
シマノ・アスキスならば14フィート#8がオールマイティーな設計だと安田さんは語るが、ご存知のとおり、サクラマスの釣りはタフだ。心が折れるなんてことはしょっちゅうだし、だからこそこの釣りを「修行」と表現する人も多い。
ロッドとラインの性能が格段に進歩したことで、ほぼバックスペースを気にせず川に立てるようになった
そんな状況ではほんのちょっとした違いも大きな助けになる。
汎用ではなく、よりシチュエーションにマッチしたロッドを選べばより快適性が増す。
特にこの釣りでフライを適切にプレゼンテーションし続けることを考えるなら、適切なロッドを選ぶという行為は、テクニックのひとつととらえて構わないはずだ。
安田さんによるAsquithスペック解説
●15フィート/#8:遠投してしっかり沈める釣りに向く。スイングだけでなく、ナチュラル用。全モデルの中で最もティップアクション。といっても一般的なロッドに比べればスロー。
九頭竜川での推奨ライン:SA社STS-RタイプX~タイプ3。500~550グレイン。
●14フィート/#8:もっとも汎用性が高くて遠投もしやすい。初めての1本といえばこれをお勧めする。15フィートよりはバットに入るアクションだが、短い分だけ全体的にしっかりしている。
九頭竜川での推奨ライン:SA社 STS-Rタイプ7~タイプ3。450~500グレイン。
●14フィート6インチ/#7:15フィートのライト版のようなところがある。フローティングやインターを使った表層の釣りも向いている。軽いラインも投げられる。14フィートよりも軟らかいアクション。
九頭竜川での推奨ライン:SA社STS-Rホバー/クリア、タイプ2、SA社九頭龍スペシャル400グレイン。
●13フィート6インチ/#6:渇水時や小さい規模の川をできるだけ静かに釣りたい時に向く。ある程度長さがあるので、小規模河川のナチュラルの釣りにも向いている。
九頭竜川での推奨ライン:SA社 STS-RトリプルデンシティーH/2/6、F/H/CI 400グレイン、SA社 SRS-Rホバークリア 350~400グレイン、SA社九頭龍スペシャルR340~400グレイン。
●12フィート6インチ/#6:北海道・湧別川や岐阜県なら宮川くらいの規模で使う。ロッドが短いので、バンク際で上に木が張り出したりしているのを交わして投げられる。14フィートを短くしたようなアクション。
九頭竜川での推奨ライン:SA社SRS-Rホバークリア350グレイン、 SA社九頭龍スペシャルR340グレイン。
●15フィート/#8:遠投してしっかり沈める釣りに向く。スイングだけでなく、ナチュラル用。全モデルの中で最もティップアクション。といっても一般的なロッドに比べればスロー。
九頭竜川での推奨ライン:SA社STS-RタイプX~タイプ3。500~550グレイン。
●14フィート/#8:もっとも汎用性が高くて遠投もしやすい。初めての1本といえばこれをお勧めする。15フィートよりはバットに入るアクションだが、短い分だけ全体的にしっかりしている。
九頭竜川での推奨ライン:SA社 STS-Rタイプ7~タイプ3。450~500グレイン。
●14フィート6インチ/#7:15フィートのライト版のようなところがある。フローティングやインターを使った表層の釣りも向いている。軽いラインも投げられる。14フィートよりも軟らかいアクション。
九頭竜川での推奨ライン:SA社STS-Rホバー/クリア、タイプ2、SA社九頭龍スペシャル400グレイン。
●13フィート6インチ/#6:渇水時や小さい規模の川をできるだけ静かに釣りたい時に向く。ある程度長さがあるので、小規模河川のナチュラルの釣りにも向いている。
九頭竜川での推奨ライン:SA社 STS-RトリプルデンシティーH/2/6、F/H/CI 400グレイン、SA社 SRS-Rホバークリア 350~400グレイン、SA社九頭龍スペシャルR340~400グレイン。
●12フィート6インチ/#6:北海道・湧別川や岐阜県なら宮川くらいの規模で使う。ロッドが短いので、バンク際で上に木が張り出したりしているのを交わして投げられる。14フィートを短くしたようなアクション。
九頭竜川での推奨ライン:SA社SRS-Rホバークリア350グレイン、 SA社九頭龍スペシャルR340グレイン。
前期:2~3月のフライパターン
●前期の使用タックル
ロッド:シマノ アスキス14フィート#8、15フィート#8
ライン:SA 社 STS-RタイプX~タイプ3、450~550グレイン
リーダー:フロロ9フィート0X
ティペット:0~1X。リーダーとティペット合わせて全長9~12フィートに調整
ランニングライン:ナイロン8号
まずは初期用のフライ。全長は7~8㎝。一般的にはストリーマーと呼べる範疇かもしれないが、安田さんは「大きなウエットフライと考えてます」と語る。
サクラマスのストリーマーといえば、スイングというよりも、フライを流れに横切らせながら、すぐにリトリーブを開始する、というのが初期の釣りの定石だった。
しかし最近ではスイング中にリトリーブはするが、以前に比べればかなりゆっくりと行なうようになってきた。
「それでも少しずつスピードを上げるような加速は有効だと思いますが、速いリトリーブは疲れちゃいますから」とのことだが、充分に結果は出ている。
また、トレーラーフックにしているのも大きな特徴で、ループの長さは2㎝ほど。フックはすべて#8とスモールサイズ。魚に優しく、このサイズで普通にフッキングする。
●フック・・・・・・TMC784#8
●シャンク・・・・・・TMC202SP #1/0
●トレーラーループ・・・・・・ケブラー4.5号
●ビーズ・・・・・・ケイムラ玉ソフト3号
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●リブ・・・・・・ユニソフトワイヤS・レッド
●ボディー・・・・・・ピーコックハール
●ハックル・・・・・・ピーコックマラブー、スペイピーコック大、ブルーネック大
注目点は3つ。まず全体のドレッシングが薄いこと。
「最近はラインがよく沈むようになったのでフライを重くする必要はなくなりました。だからフライも以前より華奢になったんだと思います」。どれも基本的には大きくて軟らかいマテリアルがハックリングされているという構造になっている。
●フック・・・・・・TMC784#8
●シャンク・・・・・・TMC202SP #1/0
●トレーラーループ・・・・・・ケブラー4.5号
●ビーズ・・・・・・ケイムラ玉ソフト3号
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●ボディー・・・・・・フラッシャブーミラージュ
●リブ・・・・・・アリゾナシンセティックピーコック・ライトをツイストしたもの
●ハックル・・・・・・ピーコックマラブー、スペイピーコック(上のほうが多め)、ピーコックマラブー(グリーンネックに近い部分)
●ウイング・・・・・・フラッシャブーパール少量
●ヘッド・・・・・・ピーコックソード
そして、2つ目はフックとシャンクをつないでいるケブラーにシリコンビーズを入れていること。このパーツが抵抗を受け、水中だけでなく、キャスト中の飛行姿勢も安定する。特にバックからフォワードに移行する時のフックの絡みが激減した。
3つ目は、フックはアップアイではなく、ストレートアイを選んでいること、これをアイの下から上にループを通すことにより、ポイントが上を向き刺さりやすくなる。
●フック・・・・・・TMC784#8
●シャンク・・・・・・TMC202SP #1/0
●トレーラーループ・・・・・・ケブラー4.5号
●ビーズ・・・・・・ケイムラ玉ソフト3号
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●ボディー・・・・・・フラッシャブーミラージュ
●リブ・・・・・・アリゾナシンセティックピーコック・ライトをツイストしたもの
●ウイング・・・・・・フラッシャブーパール、ピーコックマラブー
●ハックル・・・・・・レア・ナチュラル、ピーコックマラブー、ヤングピーコック・オスのバックフェザー
●チーク・・・・・・ピーコック・ブルーネック
●フック・・・・・・TMC784#8
●シャンク・・・・・・TMC202SP #1/0
●トレーラーループ・・・・・・ケブラー4.5号
●ビーズ・・・・・・ケイムラ玉ソフト3号
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●テイル・・・・・・ピーコック・ブルーネック
●ボディー・・・・・・フレンチミニブレイド・オレンジ
●ハックル・・・・・・スペイハックル・ダイドレッド、レア・ダイドブラック
●ウイング・・・・・・ピーコックソード(長くて軟らかいところ)
中期:3月後半~4月中旬のフライパターン
●中期の使用タックル
ロッド:シマノ アスキス14フィート6インチ#7、14フィート#8
ライン:SA 社 STS-Rタイプ2、ホバー/クリア 450~550グレイン
リーダー:フロロ9フィート0X
ティペット:フロロ1X。リーダーとティペット合わせて全長12~15フィートに調整
ランニングライン:ナイロン8号
初期よりもぐっとサイズが小さくなる中期。テイルまでの全長が4㎝ほど。一般的なウエットフライとして、スイングさせて使う。
●フック・・・・・・TMC7999#6~8
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●テイル・・・・・・メッツ・マグナムネック・ブラック
●ボディー・・・・・・ミラージュティンセル
●リブ・・・・・・ピーコックソードの反対側のハール
●ハックル・・・・・・メッツ・マグナムネック・ブラック
●ウイング・・・・・・ビーコック・ブラッククイル
これらはメインのマテリアルの硬さで大きく2種類に分けられ、ハックルが軟らかいものは速い流れ用、硬いハックルを使ったものはゆるい流れで効果を発揮する。
近年、フライはすべてバーブレスにした。使われているフックはTMC7999だが、バーブレス用としてデザインされたわけではなく、そのままで外れやすくなる場合もあるので、ポイントを少し内側に向けている。この理由はやりとりの最中ではなく、ランディングの時のフックアウトを防ぐため。
●フック・・・・・・TMC7999#6~8
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●タグ・・・・・・ユニマイラー・ホロレッド
●テイル・・・・・・メッツ・マグナムネック・ブラック
●リブ・・・・・・ユニソフトワイヤS・レッド
●ボディー・・・・・・ピーコッククイル・ブラック、オーストリッチ・ブラック
●ハックル・・・・・・メッツ・マグナムネック・ブラック
●ウイング・・・・・・ピーコックソード
「バーブがないことで逆に刺さりがよくなります。僕の場合はバーブレスにすることで明確にバラシが減りました」。
TMC7999のバーブレスチューンナップ。上がノーマルで下がバーブレスにしてポイントの角度を上に向けたもの。これくらいでも性能は大きく変わる
本流では魚とやりとりしている時はラインは水中にあることがほとんどなので、ラインが常に水の抵抗をうけ、魚が首を振ってもフックが外れることは少ない。
ちなみにTMC784 やTMC785はバーブレスを前提としてデザインされているので、バーブを潰してもそのまま使用して問題ない。
●フック・・・・・・TMC7999#6~8
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●タグ・・・・・・ミラージュティンセル
●テイル・・・・・・ブラウンマラード
●ボディー・・・・・・ミラージュティンセル
●リブ・・・・・・ユニソフトワイヤS・オレンジ
●ハックル・・・・・・ピーコックマラブー、ヤングピーコック・バックフェザー
●ウイング・・・・・・スペイピーコック・ティップ
●フック・・・・・・TMC7999#6~8
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●テイル・・・・・・ゴールデンフェザイント・クレスト
●ボディー・・・・・・ラガータン・オーバルティンセル・コパー
●リブ・・・・・・ユニソフトワイヤS・オレンジ、ピーコックハール
●ハックル・・・・・・ヘロン、パートリッジ
●ウイング・・・・・・ブラウンマラード
後期:4月後半~5月のフライパターン
●後期の使用タックル
ロッド:シマノ アスキス14フィート6インチ#7、13フィート6インチ#6、12フィート6インチ#6
ライン:SA 社 STS-Rホバー/クリア 450~550グレイン 九頭龍スペシャルR 340もしくは400グレイン
リーダー:15~16フィート2X
ティペット:フロロ2X。リーダーとティペット合わせて全長25~30フィートに調整
ランニングライン:ナイロン8~10 号
後期のフライはテイルを含めた全長が3㎝前後と驚くほど小さい。
●フック・・・・・・TMC784#8~10
●スレッド・・・・・・ユニ8/0オリーブ
●テイル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ナチュラルブラック
●ボディー・・・・・・ミラージュティンセル
●リブ・・・・・・アリゾナシンセティックピーコック・ライト
●ハックル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ナチュラルブラック
このサイズを使う理由は、この時期はさらに水量が減って水温も上がってくるので、サクラマスの活性もおそらく下がってくるから。そうすると大きなフライに対する反応は明らかに悪くなるという。
本当にこんなサイズを見つけて食うのでしょうか? という質問に安田さんは「#14 の渓流で使うようなソフトハックルでも釣れたことがありますよ」と笑顔で返してきた。
●フック・・・・・・TMC784#8~10
●スレッド・・・・・・ユニ8/0オリーブ
●テイル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ダイドオリーブ
●ボディー・・・・・・ミラージュティンセル
●リブ・・・・・・コンドルクイル・イエロー
●ウイング・・・・・・ダック・ネックフェザー
●ハックル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ダイドオリーブ
しかも釣り方が独特だ。使うリーダーはなんと25~30 フィート。
基本的には30~45度下流へ投げてスイングさせるのだが、リーダーが長い理由は、「ターンオーバーさせないため」。
ティペットをたるませてフライを着水させ、沈下する時間を作る。そのままラインが張るにつれてフライを浮上させながらスイングさせるというイメージだ。
「フライがスイングする前に釣れることもかなり多いですよ」と安田さんは言う。
もちろんそのままスイングを続けるが、この時のキモはスイングスピードを落とさないこと。加速するのが理想だが難しいので、少なくともスピードを落とさないように心がける。
もともとはプレゼンテーションの加減でリーダーにスラックを入れていたが、そもそもターンしないように長くすればよいのでは、という発想がロングリーダーの原点だ。
●フック・・・・・・がまかつS13S #6~10
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●タグ・・・・・・ミラージュティンセル
●テイル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ナチュラルブラック
●ボディー・・・・・・スペイピーコック
●リブ・・・・・・ユニソフトワイヤS・コパー
●ウイング・・・・・・スペイピーコック
●スロートハックル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ナチュラルブラック
●フック・・・・・・がまかつS13S #6~10
●スレッド・・・・・・ユニ8/0ブラック
●テイル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ナチュラルブラック
●リブ・・・・・・ピーコックソードの反対側のハール
●ボディー・・・・・・ミラージュティンセル
●スロートハックル・・・・・・メッツ・ヘンネック・ナチュラルブラック
●ウイング・・・・・・ピーコックソード
2020/5/20