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進化するテーパードリーダー

「フロントヘビーテーパー」という新しい発想

FlyFisher編集部=文と写真
モーリス本社工場のスタッフ。真ん中が田中さん。リーダーの製造はすべてここで行なわれる(パッケージングは海外の自社工場)

「フライのタックルでも、まだ革新的なことができるって信じています。」
2020年、バリバスは新しいテーパードリーダーは発売する。それら5種はすべて、ウエイトフォワード構造。以前にもこのような試みはあったが、一度にここまでの種類が並んだことはなかったはずだ。製造元である(株)モーリスの田中誠治さんに話を聞いた。


協力=(株)モーリス=協力

この記事は2020年Early Spring号に掲載されたものを再編集しています。

リーダーは技術の結晶である


—— きれいな工場ですね。もうちょっとなんというか・・・・・・、町工場的な場所を想像していました(笑)。

田中 去年の7月に機械が入って8月くらいから試運転が始まってようやく生産がスタートしたという感じですね。

僕はモーリスに入社して27年くらいになります。弊社はその頃からテーパードリーダーを作っていて、僕も工場を見に行ったんですけど、けっこう秘密の部分があったりして、当時は実際に作っているところは社員でも見られない、という感じだったんです。行くと必ず機械は止まっている(笑)。工場長が「機械の調子が悪いから止めた」とか理由をつけて(笑)。

でも、その工場長がご高齢で引退したいとおっしゃって。機械も古いし、会社としてもリニューアルする、という話が出てきました。僕はフライもやるし、うちのテーパードリーダーがすごいっていうのをお客様からも聞いていたから、「なくしたらもったいないな」っていう気持ちがあって、一回どんな感じか見てきますよ、って行ったのが僕がリーダー製造に携わるようになったきっかけです。

まるでどこかのラボ、もしくは病院のようなクリーンな環境で製造される

—— それまで見せてもらえなかったんですか?

田中 機械が実際に動いているのは見たことがありませんでした。だからどうやって作っているかなんてまったく分からなかったんです。それで「僕がテーパードリーダーを作ることになりました」って挨拶して、初めて見せてもらいました。入社24年目にして初めて、「こうやって作っているんだ・・・・・・」っていう(笑)。

特注の機械でイトを引き延ばしながらテーパーを作っていく

原材料となるナイロンのペレットを押し出し、イト状にする

工場長は本当に厳しい人でした。今回みたいな撮影は絶対にさせなかったです(笑)。工場にあったのはほとんどが手作りで、彼の工夫が詰まりまくった機械でしたから。いざ自分で作ってみると、なおさらあの方のアイデアと工夫のすごさを実感します。テーパードリーダーって本当に技術の結晶なんです。

そして、いざ実際弟子入りしてみたら、自分が想像していた作り方とはまったく違ったんですよね。作る方法を見ていたら「この作り方だったらいろんなテーパーでできるんじゃないのかな」と思ったんです。すぐ試しに作ってもらって振ったら「あれ、全然違う。これけっこういいんじゃない?」っていう感じだったんです。

—— すでに新しいテーパーのイメージはあったのですか?

田中 いえ。むしろ作っているのを見て、「こうやって太くしたり細くしたりしてるんだ」というのを知って「じゃあこういうのもできるんじゃないか」ってその場で思いついて、「こうだといいな」ではなくて「これもできるの?」という感じでした。それがこれまでのものとは逆に、先端に向かって太くなる構造で。で、やってみて、実際に作って振ってみたら思いのほかよかった。全然違う、っていうのが分かって、これは面白いかもな、というところから始まりました。もしその時にできたものを振ってみて、「なんか変わらないな」だったら、製品にはなっていなかったでしょうね。これが、2年半くらい前の話でした。

—— そこから実際の開発がスタートしたのですね。

田中 先端が重いほうが当然ターンしやすい。とりあえずそこを意識して作ってみました。ターン性能がフライラインと同じような感覚ですよね。そこからいろいろなパターンを作っていきました。

ウエイトフォワード構造のリーダー


—— まず全体のラインナップを教えてください。

田中 テーパーの種類としては、スタンダードな先端が細くなるタイプを含めて4種類、ST(スタンダードテーパー)、FHF(フロントヘビーテーパー)、SST(スペイシェイプテーパー)、THT(トライアングルテーパー)になります。

製品は、「スタンダード」、「プロドライ」、「IWIバージョン」、「レコードマスターSW」、「エキスパート スティルウォーター」、「DH/サーモン」の6種類で、このうちSSTとTATというテーパーデザインはすべてバットが細く、先へいったん太くなって、また細くなるというウエイトフォワード構造になっています。

田中誠治さん。自身も熱心なフライフィッシャーだけに、クオリティーに妥協はない


—— まず大きな特徴は、フロントヘビーテーパーですが、感触はいかがですか? 多くの方が興味はお持ちなのはたぶん渓流用ですので、、まずはその辺りからお聞かせください。

田中 当然バットを太くすれば太くするほどターンはよくなるんですけど、それだと当たり前ですよね。だから今回は今までのバットの太さを前に持ってきて、その後ろでテーパーをつけてあげたら、ターン性能は大幅に向上したんです。

そして「プロドライ」は一番スタンダード、オーソドックスな形です。名前はドライですが、ニンフでももちろん使えます。ティペット部は11フィートのもので1mくらい、14フィートのモデルで1.5mくらいです。とにかくきっちりターンさせて、ねらったところにコントロールできますよ、というコンセプトです。ルースニングだと、マーカーの抵抗とかで投げにくいじゃないですか。そういうものを使ったとしてもトラブルは少ないし、ターン性能も高いです。

テーパーリーダーって、おそらくどこのメーカーも売れ筋は9フィートだと思うんです。でも、このリーダーを11フィートで作った理由は、短くするとフロントヘビーのメリットを感じないから。なので短くても11フィートだな、っていう。

でも11フィートだとロングリーダーシステムでやりたい人はかなりティペットを足さなきゃいけないので、14フィートもあったほうがいいかなという感じで設定しました。したがって「プロドライ」だけは2種類の長さ展開という形になりました。

—— バットは普通より細いのでしょうか。

田中 バットは細いです。細くて短い。バットのストレートの部分は20cmとか、長くても30cmあったかな、そんなもんです。そこからリアテーパーが始まります。ただ、やっぱりバットを細くしすぎちゃうと、ターン性能に影響が出るので、その辺は全体のバランスを見ながらですね。

うちのテーパードリーダーじゃなくてもそうだと思うんですけど、たとえば0X~7Xまであったとしたら、0~3Xは共通、4、5が共通、6、7Xが共通、みたいな感じで、ティペットのサイズは違ってもバットの太さはある程度同じだったりするんですが、今回は、すべての太さでバットのサイズを変えています。一番太くなるところがあるじゃないですか。それに対してバットのサイズを決めています。

FHT(フロントヘビーテーパー)のバリエーション。一口にウエイトフォワード構造とはいえFHTだけでも3種類が存在する。このイラストはテーパー構造を分かりやすくしたもので、実際はレコードマスターが最も太くなる

—— 岩井渓一郎さんモデルのIWIはやはり長いですね。

田中 岩井さんのは先端が2段のテーパーになっていて、ティペットも1.8m以上と長いんですよ。実はこれの前の「マッチザハッチ」というモデルがあるんですけど、それも同じ16フィートなんです。やっぱりしっかりティペットをターンさせたいっていうのがあって、ただの2段テーパーよりももっとターンさせやすいようにさらにフロントヘビーにしました。先端からテーパー2で急激に太らせています。

—— 実際の渓流釣りではターンしすぎちゃうのも問題かもしれませんしね。

田中 僕もさんざんいろんなリーダーを使ってきましたけど、メリットだけではないんですよ。やっぱり先が重いから、先にポーンと落ちちゃったり。でもそういうのって慣れの部分も大きいじゃないですか。そういうところの、「今までと違うな」というのをまず感じていただきたいんです。

そのうえで、今までの製品がいいのか、新しいのがいいのかっていうことを判断してもらえればと思っています。だからスタンダードのテーパーも作っていますし、選択肢のひとつとしてフロントヘビーテーパーを、という感じです。僕は当然ターンしやすいほうがいいって思っていますけど(笑)。

あと、リーダーは長いほうがいいとも思っています。扱える範囲で、という条件付きですが。その点、今回のリーダーはロングティペット・リーダーの新しい入口にもなると思っています。ターンオーバーしやすければ、より扱いやすいということですからね。

もちろんターンさせないでくしゃっと落とすこともより簡単になります。渓流では、どちらかといったらターンさせないくらいで、ねらったところに落とすということじゃないですか。フロントヘビーテーパーで投げるのに慣れちゃえば簡単だと思います。

でも、ソルト用やダブルハンド用ではターンオーバー性能の高さはきっとみなさん驚かれると思いますよ。リーダーもまだまだ進化できるんだ、ということを実感していただきたいですね。

●スタンダード ST
長さ:7.5ft、9ft、12ft
太さ:0~7X
これは、通常の先端へ向かって細くなるテーパーデザイン。ただし、素材、コーティングを一新し、しなやかさと耐久性を向上させた。渓流、湖、ソルトとフィールドを選ばない、スタンダードなシリーズ。

●プロドライ FHT(左) イワイバージョン FHT(右)
長さ:11ft、14ft(プロドライ)、16ft(イワイバージョン)
太さ:3~7X(プロドライ)、4~7X(イワイバージョン)
渓流用フロントヘビーテーパーシリーズ2種。プロドライは新しいテーパーコンセプトの中ではスタンダード的な位置付け。リア、フロントともに1段のテーパーでデザインされている。イワイバージョンはその名のとおり、岩井渓一郎さんのスペシャルモデル。2m近いティペット部を持ちながらフロントは2段テーパーになっており、ターンオーバー性能も高い。

●レコードマスター SW FHT IGFA
長さ:12ft
太さ:8~20lb
丸橋英三さんのアドバイスにより仕上がった1本。現行のリーダーの中でもっとも硬いナイロン素材が使用されている。テーパーはリアが2段になっており、これによりループを広めに作ることができるので、重いフライもトラブルなく運ぶことができる。とにかく先端が重いので強風下でも利点を感じることができるはず。

●エキスパート スティルウォーター FHT
長さ:14ft
太さ:0~4X
湖の釣りでも重要なのは遠くでしっかりとリーダーをターンオーバーさせること。これを実現するためのFHTだが、テーパー2の部分を急激に細く、テーパー1を緩やかにするという2段のフロントテーパーにより、ソフトなプレゼンテーションが可能になった。

●DH/サーモン SST(左) DH/サーモン TAT(中) DH/サーモン FHT(右)
長さ:いずれも18ft
太さ:-2~3X
ダブルハンドに特化したリーダー3種。SST(スペイシェイプテーパー)はリアとフロントの中間部分に太さが一定のボディー部分を設けたドリフト性能重視のデザイン。TAT(トライアングルテーパー)はリアとフロントテーパー両方をほぼ均等に長く設定して、FHTとSSTの中間としての機能をねらっている。

2020/3/26

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