より“遊ぶ”ためのツーハンド
本流を快適に釣るためのタックル
安田 龍司=解説 オーバーヘッド・キャストでは、直進性があり反発力のあるブランクが、少ない力で推進力のあるループを作ってくれるライトライン化が進む本流ツーハンド・ロッドだが、安田龍司さんが提案するのは投げやすく、かつよく曲がる、日本のトラウトと遊ぶためのサオ。しなやかなアクションが持つ釣り味を楽しんでみれば、本流の釣りがもっと新鮮に感じられるはず。
この記事は2016年7月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
やすだ・りゅうじ
1963年生まれ。愛知県名古屋市在住。九頭竜川のサクラマス自然再生産を増やすために活動する「サクラマスレストレーション」の代表を務めながら、シマノ社のフライロッド(ツーハンド・モデル)の監修も行なう。九頭竜川のほか、シーズン中は各地の本流に通う。
やすだ・りゅうじ
1963年生まれ。愛知県名古屋市在住。九頭竜川のサクラマス自然再生産を増やすために活動する「サクラマスレストレーション」の代表を務めながら、シマノ社のフライロッド(ツーハンド・モデル)の監修も行なう。九頭竜川のほか、シーズン中は各地の本流に通う。
高感度という釣り心地
短いシューテイングヘッドをオーバーヘッドで飛ばして、対岸の流れを釣る。一方バックスペースのとれないバンク際に立ち込んだ時は、水面を使ってヘッドをターンさせる。タイプの異なるラインを使い分け、さまざまなキャストスタイルで魚にコンタクトしていく。サクラマスの泳ぐ本流として知られる福井県九頭竜川の釣りでも、そんな多彩なアプローチが求められる場面は多い。バット部にはコラボレーションモデルの証として、「SHIMANO」と「G・Loomis」のロゴ
「これまでのツーハンド・ロッドよりも、より多くのシチュエーションで快適に釣りができること、そして“釣り心地”を重視したロッドを作りたかったんです」
そう話すのは、シマノ社のフライロッド『フリーストーン』などツーハンド・モデルのデザインにかかわってきた安田龍司さん。2~5月のシーズン中は九頭竜川に通いこみ、毎年多くの魚を手にしているほか、「サクラマスレストレーション」の代表として河川環境やサクラマス自然再生産の向上を目指して精力的に活動している。
今回『Asquith(アスキス)』で目指したのは、日本の本流フィールドを意識した、釣り味にもこだわったしなやかなフライロッド。魚が掛かればバットからしっかりと曲がる一方で芯のある強さも持っており、激しい引きに追従するティップが、細いティペットのやり取りを有利にしてくれる。この性能は特徴的なローリングをするサクラマスや、バーブレス・フックでのファイト時にも有効だという。
水面を使ったキャストでは、ブランクの持つネジレ剛性が力を発揮。3次元の動きでも、ロッドの力を余すことなくラインに伝えてくれる
さらに安田さんがこだわった性能がロッドの“感度”。これを高めることによってキャスト時にラインの重みが乗る感覚がつかみやすく、魚のより繊細なアタリもとらえやすくなる。特にラインテンションの弱いナチュラルドリフトを多用するような釣りでは、アタリが分かりづらいことも多く、高感度のロッドティップはそういった状況で大きなアドバンテージを発揮してくれるという。
「フライが川底の石に当たる感覚が分かるように、ドリフト中でも鋭い感度が得られます」と安田さんが話すように、剛性と重量のバランスを最適化することによって感度を高められるという設計が強み。これはアユザオに用いられている技術を応用したものだという。
「繊細なアタリがとりやすく、小さな魚でもしっかりと曲がってくれるロッドです。それでも曲がりの限界は高いところに設定されているので、低い番手のモデルでも余裕を持って大型魚とやり取りを楽しむことができます。柔軟なキャスティングができ、幅広いレンジを釣れるブランク性能を持っているのも特徴ですね」
キャスティング性能を損なうことなく、繊細なアタリも感知し、そして魚に対してオーバーパワーにならない。日本のフィールドではそんなツーハンド・ロッドが扱いやすい。
シマノとGルーミスのコラボレーションモデルとしてラインナップされた『Asquith(アスキス)』のツーハンド・モデル。カーボンシートをX状に巻き上げた「スパイラルX」の技術を採用し、ねじれ、曲げ強度に強い特徴を持つ。基本的には『フリーストーン LDD』のアクションを踏襲したモデルで、湖のドライフライから本流の深場を探る釣りまで、さまざまスタイルに対応する4モデルを揃える。薄くグリーンがかったブランクカラーが特徴
さまざまなキャストスタイルに対応
フライラインやポイントによってさまざまなキャストを使い分ける安田さんだが、新たにデザインしたロッドでも、そういった背景が意識されている。ブレや振動のないブランクはオーバーヘッド・キャストの直進性を高めてくれ、ねじれに強い性能は、水面を使うスペイキャストのループも安定させてくれる。上手はロッドを支える程度に添えるだけでOKという、安田さんのオーバーヘッド・キャストのフォーム。しなやかな反りは、軽く振るだけでラインを運んでくれる感覚を養ってくれる
そんなブランクに使われているのが、シマノ独自の技術で、さまざまなジャンルのサオにも採用されている「スパイラルX」。その名のとおりカーボンシートをX状にティップまで巻き上げており、しなやかながら独特の粘りと強さを持っている。「曲がる=弱い」という矛盾点を解消し、これまで釣っていたポイントも、1つ下の番手で対応できることも多いという。
「私の場合、プレッシャーの高い場所、魚の反応が控えめな状況では、細イトでより繊細な釣りができる#6ロッドを選んでいます。一方、風のある場所、飛距離を必要とする場所、重いフライを使う時には#8を使用します。いずれの番手も大型魚を充分キャッチできる性能を持っているので、これまで#8で釣っていた場所を#6でアプローチしてみるという使い方もできるはずです」
ロッドと同じタイミングでフライリール『Asquith』(#6-8)もラインナップ。アルミ素材のオールマシンカット仕上げで、ドラッグ部分を防水構造にしている
通常ロッドには細いほどねじれやすい、太いほどねじれにくいという特性がある。しかしカーボン繊維を斜めにサンドイッチする3層構造の技術と、樹脂を大幅に減らした“筋肉質”ともいえるブランクがその矛盾を解消してくれている。だからこそ、今まで魚にとってはオーバースペックだと思われていた場所の釣りでも、より「掛けて楽しい」タックルで挑むことができるのだ。
ホームグラウンドである九頭竜川のサクラマスをはじめ、北海道の本流に泳ぐレインボートラウトやサーモンを相手にテストを繰り返してきたツーハンド・ロッド。より深く釣りを楽しむためのオールラウンドモデルとして、日本の本流や湖の釣りを盛り上げてくれそうだ。
適合ラインをより快適に投げられるだけではなく、±1番手のライン選びにも対応。リールシートの金属部品はアルミ製のアップロックタイプ。強度と軽量化を両立させる素材を採用し、ブランクの軽量感を損なわないようなコスメティックが施されている。ちなみに今回のモデルではフェルールにもこだわり、#6にはトルクを出しやすいスピゴットフェルールを採用。通常芯材にはカーボン素材をそのまま使用するが、ツーハンド・モデルの過酷な使用状況を配慮し、フェルールの摩耗対策として芯材にもコーティングを施している。一方#8、14フィート以上となるとやはり振りの軽さが重要であり、重量を抑えられるオーバーフェルールを採用。もちろんいずれも精度の高いテーパーデザインで接合するように設計しているため、ロッド抜け防止のためのテーピングは必要ないという
#6(12フィート6インチ)/300~380グレイン対応
#6(13フィート6インチ)/350~430グレイン対応
#8(14フィート)/400~500グレイン対応
#8(15フィート)/450~550グレイン対応
2017/8/21