LOGIN

フィールドに合わせたダブルハンドの選び方

5モデルを使い分ける『Asquith』ダブルハンド・ロッド

西井堅二=写真と文

タックル事情は日々進化し、ダブルハンドはライト化が進んでいる。
そんな今、フィールドによる使い分けの最新事情について、安田龍司さんに解説していただいた。


《Profile》
安田 龍司(やすだ・りゅうじ)
1963年生まれ。愛知県名古屋市在住。九頭竜川水系において、サクラマスを河川環境の指標として川を守る活動を行なう「サクラマスレストレーション」代表。ストリーマーやウエットフライの釣りを得意としており、各地の本流釣行の経験も豊富。正確な釣りのテクニックに裏打ちされたタイイング技術にも定評がある。
●サクラマスレストレーション http://sakuramasu-r.org/

この記事は2020年Mid Autumn号に掲載された記事を再編集しています。

協力=シマノ

フィールド&スタイルに合わせる

ダブルハンド・ロッドがポピュラーになって久しい。おおまかなトレンドとしては近年、タックルのライト化が進んでいる。

具体的には、使われるロッドの番手が下っている。さらに、番手に比例する部分もあるのだろうが、長さも短めが選ばれる傾向がある。

しかしながら、スタイルが多様化している近年、それぞれのスタイルに合わせて選ぶのが基本。

十勝川水系の支流。川をたどると、支流でもこの規模のポイントが見つかる。タックルは複数用意しておきたい

そこで、オーバーヘッドとスペイ系のキャスティングの両方を臨機応変に使い分け、スイングだけでなくナチュラルなドリフトも強く意識したスタイルを実践している安田龍司さんに、フィールドに合わせたタックル選びの最新事情を紹介していただいた。

まず、ダブルハンド・ロッドを使うシーンとしておおまかに、以下の5つに分けてみた。

①大河川本流の中下流域
②大河川本流の上流域
③大河川に次ぐ中規模河川の本流域(準本流)
④湖
⑤海

フィールドの個性や魚種などにより変わる部分もあるが、ここではこの5つのシーンを想定した。

なお、安田さんは自身が監修したシマノ『アスキス』の5モデルを使い分けている。


12.6フィート6番~15フィート8番。やや長めのスペックのモデルをラインアップするのは、ナチュラルドリフトを意識すると、ロングロッドが有利なため。

アスキスは軽さと高感度が特筆すべき特徴。手にすれば、スペックほどの長さを思わせない軽さを実感でき、ロングロッドのアドバンテージが際立つ。14フィート8番で、200gを切る195gを実現している。

本流のロッド選び

本流で使用するロッドを選ぶ場合、基本的には河川の規模に合わせて選ぶ。

ただし、ナチュラルドリフトを重視すると、シューティングラインを高く持ち上げたいこと、送り込む距離を長く取りたいことなどから、スイングより長いロッドが有利といえる。

このため、どんなスタイルを重視するかも、ロッド選びの重要な要素といえる。

9月上旬、安田さんは北海道を訪れた。釧路川の上りアメマスをダブルハンドでねらった。ロッドは12フィート6インチ6番

①大河川本流中下流域

国内の大河川本流域では、14.6フィート7番、14&15フィート8番を使用。
川の規模にもよるが、繊細なナチュラルドリフトを重視すれば14.6フィート7番が秀逸。

8番の14フィートと15フィートは、川の規模、ないしは流速や水深を考慮して選ぶ。

マックスレベルで沈めたい場合、最も重い550グレインの出番となり、この場合、必然的に15フィートになる。

フィールドの規模や対象魚によりロッドを選ぶこともあるが、使うべきラインを基準に選ぶという考え方も時には必要。それが何より重要なキーワードになることがある。

アメマスのために用意したフライ。効くとされるチャートリュースを入れてみた

②大河川本流上流域

大河川の本流でも、上流に向かえば規模はやや小さくなる。

その場合は、13.6フィート6番、14.6フィート7番、14フィート8番を使用する。ナチュラルドリフトを意識すれば、14.6フィート7番に手が伸びる。13.6フィート6番と14フィート8番の使い分けは、川の規模に応じて。

十勝川本流。ダブルハンドが似合う素晴らしいフィールドだが、2016年の台風被害の影響がいまだ残る

大河川の本流でも上流域になると、流れが細いポイントが目立つようになる。そんな場合、やや短めに加工したラインの出番が増える。これは、ナチュラルでもスイングでも同様。

③中規模河川本流(準本流)

たとえばかつての北海道では、盛夏の一時期を除けば、比較的長期にわたって本流の釣りが楽しめた。

しかし近年、台風による被災の影響、夏場の渇水と高水温などにより、以前より好機が短くなっている。被災の影響か、本流の魚が少なくなってしまったフィールドもある。

そうしたなか、大河川の本流ばかりでなく、それに次ぐ規模の“準本流”にも目を向けている。そこで活躍するのは6番。

“準本流”クラスの流れ。近年、この規模のフィールドにも注目し、タクティクスを模索している

アスキスの6番の守備範囲の広さには目を見張るものがある。

35m以上の実釣距離を想定しているが、硬さはなく、あくまで繊細。ヒット後はよく曲がるが、フィールドテストではシロザケも難なく引き寄せられたほどのパワーを秘める。

細めのティペットによる大ものねらい、湖のドライフライやストリーマーのリトリーブもこなす。

12フィート6インチ6番でねらう“準本流”。規模は違えど、大河川本流さながらの釣りを楽しめる

④湖

湖では近年、ダブルハンドがスタンダードになった感がある。当初は8~10番という高番手も使われていたが、ライト化の流れが顕著。

そんな今、安田さんがメインで使うのは6番。ラインは主に、スペイ系とオーバーヘッドの両方のキャスティングをこなすSA『アトランティックサーモンショート』。別表のとおり、オーバーヘッドを意識したウエイトをセレクトしている。

湖での使用はまだあまりポピュラーではないが、SA『シューティングテーパーショートRタイプ ホバー/クリア』もおすすめ。全長が26~29フィートを短く、バックスペースの制約が大きいポイントで有力な選択肢のひとつ。クリアとホバーのシンクレートが綿密に設計され、リトリーブの釣りにも向く。

12.6フィート6番とアトランティックサーモンショート・340グレイン(スイッチロッド用)・フローティングの組み合わせは、ドライフライの釣りにおすすめ。非常に軽快な釣りが楽しめる。

アスキスのテスト中、サケマス有効利用調査河川の忠類川を訪れた。良型のシロザケを引き寄せているのは13フィート6インチの6番。6番でこれだけのパワーを秘める。それでいてアクションはしなやか

8番の2モデルは、45m前後&45~50mの実釣距離が想定されている。それだけのパワーを秘めているが、シューティングラインの処理がひとつのハードルといえる。意識して練習したい

⑤海

海アメや海サクラ、カラフトマスやシロザケなど、サーフの釣りでも近年、ダブルハンドが主流になっている。

メインで使うのは8番。波が低く、穏やかな時は14フィート。軽めのラインで繊細な釣りを心掛けたい。波が高い時は15フィートで波をかわす。

アスキスの実釣距離は、14フィート8番は45m前後、15フィート8番は45~50mの設定で開発されている。

カラフトマスやシロザケねらいで、フライを水面直下に漂わせたい時、SA『ST九頭竜スペシャル-R』がおすすめ。このラインは浮力を低めに設定しており、浮きすぎず、波の影響を受けにくい。表層を安定してスローリトリーブすることができる。

北海道釣行のために用意したアスキス。ダブルハンドもフィールドによって使い分ける時代

目的を明確にし、魚に近づく

ダブルハンド・ロッドは近年、ライト&ショート化の流れが顕著。確かに、かつてはややオーバースペックなものが使われていたシーンもあり、その流れは必然ともいえるだろう。

しかし、過度にそれを意識する必要はなく、あくまで自分がやりたい釣り、それが求めるスペックを冷静に見つめ、判断することが重要といえる。

ナチュラルなドリフトを意識すれば、ロッドは断然、長いほうがよい。かつてなら、長ければ重くなり、キャスト後の操作性、感度という部分がスポイルされるなど、ジレンマがあった。

しかし、アスキスはこの課題を軽々とクリア。さらにその上をいき、新たな可能性を感じさせてくれる。

技術は着実に進歩している。ぜひそれにふれ、必要以上にトレンドに流されることなく、自身の釣りを冷静に見つめ、高めていきたい。

ダブルハンド・ロッドもいよいよ成熟期に入ってきた。どのタックルを選ぶか? それもまたかなり重要、かつ、フライフィッシングの大きな楽しみになってきている。

群れを捜すのに苦労したものの、奇麗なアメマスをキャッチ。ダブルハンドでねらう格好のターゲット

2020/11/2

つり人社の刊行物
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…
つり人社の刊行物
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編
瀬戸際の渓魚たち 増補版 西日本編 本体2,500円+税 A5判カラー256ページ
1998年刊行の幻の名著が2020年の視点も加筆されて、復刊です。 フィッシングライターとして現在も活躍する佐藤成史さんのライフワーク、人間の活動などにより生息場所を狭められる渓流魚たちを追いかけ写真に収めた貴重な記録。 インターネット前夜…

最新号 2020年12月号 Mid Autumn

特集
共鳴するウエットフライ
エキスパートが実践していること

 今号の特集はウエットフライ。十人十色、という言葉がこれほどマッチするフライフィッシングはないかもしれません。エキスパートたちには「この釣りを始めたきっかけ」から、今実践しているテクニックまで、さまざまな質問をぶつけてみました。すると、実は似たような釣り方をしていることも少なくない、ということに気づかされました。
 先般22年ぶりの復刊となった、佐藤成史さん著『瀬戸際の渓魚たち』。Special Topicsと題しまして、阿武隈高地の天然イワナについて現状を取材してきました。日本列島形成の背景をもとに浮かび上がってきたのは、イワナたちの「山越え」という仮説。人類の営みと比べたら気の遠くなるような時間をかけて脈々と受け継がれてきたイワナたちの「血」。そんな歴史を感じることのできる幸福と、現状への警鐘があぶり出されています。
 巻末の長編特集は、来日も幾度となく果たし、「フライキャスティング」に大変革をもたらしたといってよい、メル・クリーガーさんを紹介しています。メルさんをよく知る5名に、知られざる側面を含めた彼の功績、人となりを語ってもらいました。
[ 詳細はこちらから ]

 

NOW LOADING