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普段使いのパックロッド

状況を限定しない「アスキスJ782P」

中根淳一=写真と文

ひと昔前のパックロッドといえば携行性はよいが、そのアクションに大きな期待をできないサオが多かった。しかし、今回シマノのアスキスファミリーに加わったパックロッドは、これまでとは一味も二味も違う高性能を実現させている。

理論以上に体感できる高性能


数ある釣りの中でも、これほど引っ切りなしにサオを振り続けるのは、フライフィッシングだけではないだろうか? 1日釣り続けたら前後に何度ストロークを続けるのだろう……この特殊なキャスティングをより快適かつ正確に、そして高い強度を実現するために、各社さまざまな工夫を凝らしている。

里見栄正さんが監修したシマノ社の『Asquith(アスキス)』も、そのテクノロジーが惜しみなく注ぎ込まれている「最新鋭」のフライロッド。さらに確固たるキャスティング理論を持つ、スティーブ・レイジェフ氏率いる、Gルーミス社が培ってきたフライロッド設計思想が融合しているのだから、その完成度の高さに疑問はないだろう。

『アスキスJ782P』を曲げてみると、5カ所の継ぎ目を感じさせないほど、きれいな弧を描く

アスキスの特筆するテクノロジーのひとつが「スパイラルX」ブランクス。縦繊維に対して、内層と外層へカーボンテープを逆方向に巻き付ける、サンドイッチ状の3層構造。これによって軽さを維持しながら、さまざまな方向への捻れ追従を可能にしている。縦繊維の直進性に斜め繊維の柔軟な追従性。

フライキャスティングにおいてストローク面のブレは、そのままループの捻れへつながる。これによってパワーが拡散することは周知だろう。もちろん、あえてストロークの面を意図的にコントロールする場面でも、その方向へ素直に曲がってくれる。

流れに乗った渓魚の強い引きにも、ブランクスが捻じれずに追従していくため、安心してやり取りが楽しめる


魚を掛けたときのやり取りでも同様に、魚が走る方向へストレスなくロッドが向いてくれるわけだから、不要な負荷がかからず、20㎝にも満たないヤマメの釣り味も損なわない。カーボン本来の粘りも最大限にいかせるため、80㎝を越えるコイだって難なくキャッチできる。

『アスキスJ782P』でキャッチしたイワナ。山岳渓流に潜む魚らしい黒みを帯びた容姿。多くの継ぎ目が欠点ともいえるパックロッドだが、専用設計のフェルールを配置して、スムーズな曲がりを実現している


約1年半の開発テスト期間中に里見さんは、1500尾以上の渓魚を釣ることによって、渓流釣りで必要なアプローチ時の繊細さと、釣り味を確かめてきた。最新テクノロジーの(時には机上の)理論的な優位点を越えて、数々の釣り場で有効性を体感してきたのだ。さらにアスキスの頑丈さにも驚いたという。

「渓流ではどうしてもロッドの先端側を岩などに当ててしまうとも多いのです。それでも破損したことは一度もありません」

繊細でいて強靭。ロッドデザインにおいて、時には相反する理想を、スパイラルXブランクスのアスキスは兼ね備えている。

斜面を降りるときや岩を越える時にも、両手が空いているという安心が得られるのはパックロッドの利点のひとつ

次々に魚をキャッチする里見さん。アスキス開発時のテストでは1500尾以上の渓魚を釣ったという

パックロッドのイメージが変わる


梅雨空の雲の隙間から、束の間の日差しが濡れた木々を輝かせている、岩手県の山岳渓流。アスキス・ファミリーに新たに加わった、6ピースのパックロッド『J782P』を携えて、軽快に林道を歩く里見さんの後からついて行く。畳まれたロッドが、ベストのバックポケットから先端を覗かせているだけなので、とても身軽な出で立ち。斜面を降りていく時にも両手を使えるので、安全の確保やロッドの破損も回避しやすいだろう。

水面からフライラインを引き剥がす時も、ロッドの捻れにおるブレがないため、スムーズにバックキャストへ移行できる


ひと昔前のパックロッドといえば、ベンディングカーブが滑らかではなく、実際の重量はもちろんのこと、そのアクションからも鈍重なイメージ。それでも、釣り味や投射性などを犠牲にしてまで、軽快さを必要とするシチュエーションがある。そのひとつが今回のような、起伏の多い山岳渓流だろう。

何尾釣ったか数えきれないほどのイワナたちと出会うことができた

しかし、今回発売されたアスキス『J782P』は、携行性を優先させながらも、性能を犠牲にした部分がないという。

「現在のカーボンロッドは4ピースが主流になっています。パックロッドというと6ピース以上のイメージだと思いますが、J782Pは2ピースロッドや4ピースロッドと同等に、違和感なく普段使いできるパックロッドに仕上がっているんです」

後半は下流側へ移動してヤマメをねらった

少し半信半疑ではあったが、里見さんがロッドを継いだ後に曲げて、ベンディングカーブを見せてくれた。驚くほどよどみなくきれいな弧を描いている。

「すべてのフェルールが専用設計になっているので、実際には6本ではなく11本分のブランクを作っているのと、同じ手間がかかっているんです」

パックロッドの欠点ともなり得る多くの継ぎ目に、ブランクスの剛性に合わせた、専用設計のアクティブフェルールを採用することによって、〝継いでいる〞感を最小限に解消している。

時には大きな岩を渡りながら、フットワーク軽く釣りを続ける里見さん。今回の川では必要なかったが……もし越えにくい流れがあれば、ロッドを畳んでベストのバックポケットに入れて高巻きすればよい。これが4ピースともなれば、木などに引っ掛かることもあるだろう。

撮影しながらファインダー越しにも、ロッドが描く曲線に違和感をまったく感じない(後から画像を確認しても)。

里見さんが投げ放ったフライは、必要なスラックをティペットに残しながら、思いどおりの流れに乗ってドリフトしていく。ここぞという場所に差し掛かった刹那、フライに魚が飛び出してくる。この日に何度も、くり返し見ることのできた光景。思い出すだけで、こちらの顔もにやけてくる。
「パックロッド=山奥に分け入るためのサオ」というイメージを払拭させる「普段使い」できるJ782Pは、常用したい1本となるだろう

2019/9/3

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