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ささきつりぐ

チューブフライについてのインタビュー

くやしい思いをしたくないためのチューブフライ

正田博=解説 編集部=写真
道具、フライ

波動を重視する

スイングの釣りで大切にしていることからお聞かせください。

基本、やっぱりフライが泳ぎ続けること。失速しなかったり、フライが止まらなかったりというのは常に意識しています。というかそれが、一番意識することですよね。本流の釣り、スイングの釣りで一番意識しなければいけないかなというところは、フライを泳がせ続けること。もうその一点ですね。

 

その泳ぎというのは、フライそのものが移動していく泳ぎと、フライのパーツがユラユラ動く、というようなことがあるかと思うのですが。

フライのパーツがピラピラ動くっていうのは、そんなに重要視はしてなくて。フライそのものが動く、ということですね。その中で、マテリアルがピラピラ動く。ピラピラ動くフライと動かないフライで、フライの強さというか、魚を惹きつける強さというのが出てくると思うんです。フライのピラピラ感って水の中で波動となって伝わるんだと思うんですよ。よく、水面ギリギリに泳がせると、水面に膜というか、水流ができますよね。あれが魚にも伝わると思います。だからこの水押しの違いでフライを使い分けているところはありますね。強いのでダメだったら、次の流しは弱めのものを選んだりして。

 

なるほど。

で、そのピラピラ……、波動を強くするために、ゾンカーはめちゃくちゃボリューミーなやつを選ぶんです。毛足が長くて毛の密度が濃い。

 

その押しが強いとどうなるのでしょう。遠くから魚を呼び寄せで来るとか、そういったイメージをお持ちなのでしょうか。

そういう感じです。結局、スイングの釣りというのは、魚にフライを追わせてなんぼの釣りなんですよね。やっぱり経験上、波動が強いフライは大ものが追いやすい。それは自分の中ではもう間違いないんです。

 

それは活性が高い魚が食いついてくるというイメージなんですか。

それが、なんかそうでもないかなと思うんですよ。昔は自分もそう思っていたんですけれど、意外と活性が低いのも逆に波動が強いフライを口にするというか。ただ、活性が低いというときはフライをついばむくらいなので、フッキングしないという。フライのテイルのほうをかじっているだけで。ただ、もう小さくてもいいから釣りたいなというとき、アタリがあんまり小さいから、もっとフライを小さくすればいいかなと思うと、今度は全然、アタリが出なくなっちゃうんですよね。やっぱりそのフライの波動が弱くなるから小ものも口を使わなくなるのかなというのは、今のところ自分の見解としてありますね。

 

波動を出しやすいのは軟らかいマテリアルのほうがいい、とかありますか?

いや、そこは関係ないです。軟らかいマテリアルと硬いマテリアルが組み合わされていてもいいんですけれど、肝心なキモは、マテリアル同士の動きを邪魔しないということなんだと思います。

 

フライも軽めですよね。

今どきのチューブフライと比べたら、軽めですよね。あんまりほかのを見たことないからよくわからないんですけれど、でも明らかに軽めだと思うんです。僕のはアルミがほとんどですが、重量が集中している個所がないじゃないですか。そういうのがいいのかなって自分の中では思っていて。実際なんか……なんだろうな、そのへんにいる小魚に近い波動を出せるのかなってちょっと思っているんですね。あとは一点に重量が集中していないから、スイングしたとき失速しづらいんですよね。最初に言った、とにかくずっときれいに泳がせ続ける、それがしやすいのは、重量が一点に集中していないフライだと思うんです。やっぱり流れってどうしてもずっと均一じゃないじゃないですか。石の裏の縦の反転流とか。重量が一点に集中しているフライだと、そういうところに差し掛かったらストンって入りやすいんですよね。あくまでイメージなんですけど。今、フライの泳ぎを横から見る水槽とかありますけど、それを見ても重量が均等なフライのほうが、流れが緩くても落下しにくいんです。

 

 

フライのカラーは空に合わせる

1本のフライの中の色数が少ないですね。

はい。基本やっぱり、なんだろうな、好み。好みも大きいんですけれど、あんまりひとつのフライにいろんな色を入れるのも好きじゃないんですよね。

 

釣果より好みですか。

いや、両方あると思います。昔はやっぱり、いろんな色を組み込んだりもしたんですよね。だけどなんか結局シンプルな配色のほうが釣れる気がして。で、そっちのほうが、カラーバリエーションも考えやすいというか。いろいろ混じった色だとわからなくなっちゃうんですよね。たとえばあるフライでダメだったとき、次に使うフライを迷っちゃうんですよ。

 

何が効いているのか、効いてないのかがわからなくなっちゃうと。

そうなんですよ。逆にこういう、わりと単色なフライであれば、次はじゃ、ガラリ変えてこっちのフライにしてみようみたいな。

 

それでよい結果が出ることも……。

多いですね。

 

水の色によってカラーをセレクトするのでしょうか?

わりとベースに使っているのはグレーオリーブなんですね。ボックスの写真(上)の左から2番目の。とりあえず何か迷っているときには、それを結ぶときが多いです。

 

それは水の色に関係なく。

水の色、関係なくですね。何か水の色……、極端にあんまり意識しないんですよね。たとえば夕方、真っ暗になったイブニングとかでも小さなウエットに普通に食ってくるじゃないですか。魚ってなにか見えてるんですよね。それこそさっきの話じゃないけれど波動とかで。

 

だから濁っているから目立つように、という考えではあまりないとか。

そうです。ただ、なんだろうな。最近はシーズンによって色の使い方があるのかなと思ってきています。冬場は、なんかとにかくキャメルレモンが効くなっていう印象が最近あって。これから4月、5月、6月になってきて、新緑の季節になってくるじゃないですか。そうすると、ボックスの写真のこの右から2番目の、それこそキャメルグリーンとか。

新緑の色っぽいやつですね。

だいたいラインはタイプ2とかメインで、フライは魚の目線の上を通すんですよね。で、魚が上を見たときに、木の緑とか、そういうのが見えると思うんですよ。だから最近のカラーセレクトとしては背景を見て合わせるというか。

 

それは背景に比べて、目立つように。

いえ、背景と似たような色に。だいたいまず選ぶのは似たような色です。なんでかは自分でもよくわからないですが、経験から似た色を選んだほうが、反応は明らかにいいです。このランの周囲は深緑がやけに目立つなっていうところでは、そういう色を選ぶことが多いですね。

 

逆に黒はどうですか。

黒は……、自分の中で決して万能色ではないです。何をやっても駄目だったときに黒を使うと、ポンってよかったりとか。どっちかというとそういう色なんですよね。

 

繰り返しになってしまいますが、水の色とか、とは全然関係なく。

関係ないです。クリアな時でも効きます。で、最近マイブームなのがこのピンク。ボックス写真一番左のピンクです。朝イチのローライトのコンディションとかは、やっぱりこのピンクとかなんか、よく効くんですよね。それは、わからないですけど、朝焼けで空が赤く染まるからこのピンクが効くのかもしれない。誰も使わなそうな色なんですけれど、それも釣れる理由としてあるかもしれません。とにかく朝焼けがパーって出ているときは、迷わずピンク結んでいます。あとはボックス写真の真ん中の下のほうにちょろっと茶色っぽいのが映っていると思うんですけれど。茶色というか、キツネ色。それなんかはたとえば周りが岩盤とか土の壁みたいな場所で使います。だから釣りに行って、パッて川だけ見るんじゃなくて、しっかり周りを見ることは重要なのかなって思っています。そうやってはやる気持ちを落ち着かせてフライを結んでいます(笑)。

 

タイイング方法については以下から確認できます

チューブフライのタイイング│ワンハンプ、ユニティ

 

 

 

 

2024/12/17

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