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2度も掛けられなかった尺ヤマメ

あいつが釣れなかった理由02

富田 晃弘=文、FlyFisher編集部=写真
3週にわたって通ったY字に流れがぶつかる瀬(写真左が下流)。大場所ではないが、確実に魚が付くと言ってよい流れだ。Y字の合流から続く直線的な流れは、どこからでも飛沫が上がりそう
《Profile》
富田 晃弘(とみた・あきひろ)1969年生まれ。熊本県南阿蘇村在住。バンブーロッド・ブランド「Highland Cane」を手掛けるロッドビルダー。阿蘇の白川をホームグラウンドに、シーズン中には東北へも足を運んでいる。
この記事は2014年12月号に掲載されたものを再編集しています。 魚がどこからでも飛び出してきそうな1級のポイントでは、ロングドリフトが効果的。そんな状況でしっかりフッキングさせるためには・・・・・・。今でも鮮明に思い出すあの時のフライとドリフト・・・・・・

ロングドリフトでねらうも・・・・・・

幅5m、長さ20mほどの直線的な流れと、右岸からの流れ込みが合わさった、全体的に魚が流下物を捕食しやすい、ほどよい流速がある平瀬での出来事。

“ほどよい”スピードの流れというものが、秒速何cmであるのか正確なことはいえないが、全体的にどこからでもヤマメが出てきそうな流れ。そのなかでも一番のポイントは、やはり2つの流れがY字にぶつかったあたりだ。

最初に訪れたのは5月29日。ライズはないので、黒いミズバチ・パラシュート#12を結び、流れの筋を3分割して下流から刻んでいった。瀬尻側3分の1ほどのポイントで、7寸サイズが飛び出してきた。その後も同じように流していったが、Y字形に合流している最も有望だと思っていた場所ではバイトがない。しかし、次に右岸側からの流れ込みにフライを流すと、フワッと浮いてきた大きなヤマメが静かにフライを吸い込んだ。・・・・・・が、すっぽ抜けた。

このポイントで魚がスレているとは考えづらく、アワセのタイミングも問題なかったと思う。考えられるとすれば、直線的なメインの流れをまたいだドリフトによる、微妙なドラッグだったのかもしれない。

その魚に初めて見せるフライ、ドリフトは、非常に重要で、慎重を期す必要がある。とはいえ、複雑な流れの場合、やはり一発で決めるのは難しいもの。フライライン、リーダー・ティペット、そしてフライの落とし方は、後のドリフトにすべて影響してくる。今思えば、左岸からレギュラーでキャストできるように、もう少し上流側に立ち、しっかりフライラインにもたるみを持たせたほうがよかったと思う。そしてリーダー・ティペットはクシャクシャに落とさず、カーブをかけ、フライラインのみにメンディングを入れれば、ドラッグが回避できると同時に、しっかりとフッキングさせられる流し方になったのではないかと思う。

Y字ポイント、初日に使ったミズバチ・パラシュート#12
そして、ちょうど1週間後に再び同じポイントを訪れた。水温は17℃。この1週間は水位の急激な変化もなかったため、釣り逃した”ヤツ”がまだ付いていると思い、慎重にねらってみた。

前回同様水生昆虫のハッチもなく、またライズもないので、フライパターンはあえて前回と色を変えたオレンジ色のパラシュート#10を選んだ。

今回も下流から全体をまんべんなく流していく。左岸側から上流に向かってアプローチしていたのだが、例のY字ポイントに差しかかる前に反応があった。左岸寄りの筋に三角に頭を出した石があり、それが流れにヨレを作っていた。今回ヤツはその石の横から食ってきたのだ。

・・・・・・が、すっぽ抜けた。ドリフト距離が長すぎたのか、岸に乗ったフライラインがティペットにテンションをかけ、ヨレた箇所でドラッグが掛かってしまったように思われた。

あくまで”タラレバ”の話になるが、もう一度あのタイミングに戻ることができたら、#14前後のCDCガガンボを選択すると思う。なぜかといえば、長めのCDCレッグでシルエットが大きく見え、魚もフライを見逃すことがないだろうし、サイズを落とすことによって、魚が水ごと吸い込んだフライが少しでもしっかり口に入ったかもしれない。

それでもその時自分が選択したのは#10のパラシュート。これも水量や天気、ハッチ状況、過去の経験などからの答えなので、やはり正解は簡単には導き出せない。フッキングまで至らなかったのは、フライが悪かったのか、ドラッグが掛かったのか、どちらにせよ尺を優に超えるヤマメを、再度バラしたことに変わりはなかった。

Y字ポイント、2日目にヤマメを振り向かせたオレンジカラーのパラシュート#10
そしてさらに1週間後の6月12日、今日こそはと、またまた同じ場所へ。水温は20℃とかなり高くなっている。水温上昇による活性低下か、その日は朝から1度もバイトがない。例のポイントに着いてさっそく探りを入れると、ドライフライの下で反転するヤマメが見えた。さすがにスレてきたのかと思い、フェザントテイル・ニンフに結び変えて数投目に水面が割れた。しかし、釣れたのは2度も釣りのがしたヤツとは違う9寸ほどのヤマメだった。

それから梅雨に入り、増水後の川は春とは状況が大きく変わり、そのヤマメとの出会いはそれっきりなくなってしまった。

2回もフライに出てきてくれたのにフッキングできなかったことが悔やまれる。特に1度目はポイントのどこから反応があるか読み切れなかっただけに、ナチュラルなロングドリフトをねらいすぎたか・・・・・・。

レッグのシルエットでアピールしてくれ、魚も吸い込みやすいガガンボパターン。フッキングを考えるならば、こちらのパターンだったのか・・・・・・

フッキング率からみたマッチング・ザ・ハッチ

もうひとつ、フライ選択で悔しい思いをしたエピソードを紹介したい。2014年3月6日午前11時ごろ、水温は11度。舞台は本流の川幅50mほどのチャラ瀬から続くプールの下流に、幾筋かのバブルラインが緩やかに流れている場所。

仕事の電話をしながら、土手の上に立って川全体を見ていると、午後1時ごろ、筋で1つのライズがあった。昨日も同じポイントで午後2時ごろ、シマトビケラに対するライズがあり、9寸サイズのヤマメを釣っていた。川には、昨日ハッチしたと思われるシマトビ・アダルトや、ナミヒラタカゲロウのダンがパラパラと飛んでおり、ティペットには、昨日と同様カディス・イマージャー#14を前もって結んでいた。

少し時間が早いようにも思ったが「魚がライズしたんで掛け直します」と言って、仕事の電話は中途半端に切り、ライズのあった筋にフライを流してみた。

1投目でいきなり大きな頭がヌッと水面から出て、フライを吸い込んだ。余裕のあるタイミングでしっかりとアワセると、手もとには大もの確定の重量感が伝わってくる。今期初の尺ものかと喜んだ瞬間、ズルリとフライが抜ける感覚があり、あっけなくバレてしまった・・・・・・。

原因を考えた。流し方もアワセも問題ないはずだった。しかし、その後オオクママダラカゲロウのまとまったハッチが30分ほど続いた。確実な正解はいつも分からないが、もしかしたらフライがオオクマパターンだったらバレなかったのではと思っている。パターンがマッチしていればヤマメの猜疑心も薄く、水面のフライをしっかりと吸い込み、より確実なフッキングに持ち込めたはずだ。そのあとはオオクマのダンパターンで、8寸ほどのヤマメを釣った。しっかりとハリ掛かりさせるという意味でも、フライパターンを合わせることは重要であると感じた。

またもうひとつの原因としては、ヤマメが予想していた最初のライズの拠点のあった地点より下流でフライに出たこと。自分が想定していた魚の出るポイントを通り過ぎると、頭の中では別のことを考え始める。ピックアップしてどこに打ち直すか、また魚がどこかに移動しているんじゃないか・・・・・・など、いろいろ考えを巡らせているうちに集中力が分散し、フッキングミスが起こった可能性もある。

ただ、もしかすると途中で切った仕事の電話のことが頭の片隅に残り、確実なフックアップに影響したのかも・・・・・・と考えて自分を納得させたりもしている(笑)。

2019/11/19

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