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「適水勢」を考える。

良型ヤマメの付き場は?

FlyFisher編集部=写真と文

尺ヤマメがいる流れを読む時によくいわれるのが「適水勢」という言葉。たしかにヤマメが定位する流れは、似たような流速であることが多くあります。とはいえ、川の流れは表層と底層で違うもの。今回は、そんな適水勢について考えてみます。
この記事は2017年秋号に掲載されたものを再編集しています。

毎秒30~35cm

流れの速度と形、虫との関係、水温の変化などなど、それらを総合して魚の付き場を捜すわけだが、その際によくいわれるのが「適水勢」という言葉。

最近はフライフィッシングでも使われるが、もともとはエサ釣りの世界でよくいわれていた。基本的には、ヤマメが定位するのに適した流れの速さを指す。もちろん生きものの話なので、数字には幅がある。基本的には毎秒10~60cmの流速だといわれ、季節や水温によって変わるものの、最も好んで定位するのは毎秒30~35cmだという。

だがここで問題になるのは、川の流れは表層と底層では異なるということ。たいていの場合、表層よりも底層のほうがゆっくりと流れている。石などの障害物にぶつかることで、底付近は流れが複雑になる。

そのため水面付近では適水勢よりも速い流れだとしても、底付近にはしっかりヤマメが定位しているということが多い。そもそも流速計を片手に釣りをしているという人は、まずいないだろう。だからこの数字だけを知っていても、あまり意味はない。

肝心なのは、ヤマメが好んで定位する流速がある事実を、知っておくこと。あとは魚が釣れた流れをじっくり観察し、波立ちのぐあいとか、底石の入り方とか、水深とかを把握すること。それを積み重ねることで、なんとなく「ここはいそうだな」という流れが見えてくるようになるだろう。

白っぽい場所?

時期によって、あるいは川によって、魚の付き場が変わるということは多い。主に岐阜の川で釣りをしているベテランが「このあたりでは、川底が白っぽい場所をねらうといいよ」と教えてくれたことがある。

川底に石にうっすらと藻類が付いて川底が黒っぽい場所では、流心付近では石が転がったり、動いたりするせいか、ほかよりも若干白っぽく見えたりする。そんな場所でヤマメが釣れるということなのかもしれない。実際、その時ヤマメが釣れたのは、川底が白っぽく見えるポイントが多かった。

これが全国の川で通用する話かといえば、おそらく異論は出てくるだろう。もともとこの話を教えてくれた方にしても、どこでも同様だとは思っていないはず。また同じ川であっても、魚だって個性がある。

イワナが潜むような場所でヤマメが掛かったり、あるいは適水勢よりだいぶ速い場所でフライをくわえることもある。いくら経験を積んで、魚を知った気になっても、川に立つと驚かされることはあるものだ。
同じ川でも、よい魚ほど毎度決まった流れに付くことは多い

隠れ家の重要性

魚にとって都合がよいのはエサが流れてくる筋で、しかも安全な場所ということになる。単に流速が適正というだけでは、魚が定位するには不充分といえる。魚にとって安全な遮蔽物は、たとえば岩だったり、流木だったり、岸際のアシだったりとさまざま。いずれにせよ、これらの障害物は重要といえる。

もちろんだだっ広いプールの流心でのんびりライズしている魚を見ることもあるが、人が近づけば当然逃げてしまう。生きものにとって、隠れ家というのは大切な要素なのである。
とある川の、ここも良型が付くという実績ポイント。大場所はポイントを絞りづらいかもしれないが、バブルラインなどを観察すると、エサが流れやすい筋が見えてくる

強い魚がいる場所

もうひとつ釣り人にとって重要なのは、より大きな魚はどこに付くのか、ということである。新仔ヤマメが群れている場所を知っても意味がないわけで、やはり知りたいのは尺のいる場所ということになるだろう。

エサが最も集まりやすい場所、つまりライバルよりもたくさんのエサが捕食できる場所は、魚にとっても競争率の激しい特等席。そんな場所は大ものが入る可能性が高い。

川を知り尽くしているような地元名手は、だいたいそういう場所を把握しており、その日その流れで尺ヤマメを釣ったとしても、しばらくすると別の大ものが再び付いていることは珍しくない。

2018/8/8

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