速く見せるorゆっくり見せる
愛知県のプロショップ・ワチェットの鈴木寿さんは、渓流、本流、浜名湖でフィッシングガイドとして人気だが、近年は南の島に熱中。最近活躍しているフライを紹介していただいた
鈴木 寿=解説速く見せるフライ
クリスタル・マンティスシュリンプ。シャコをイメージしたリトリーブ系のフライだ
フラッツスライダー。ボディーマテリアルは横に張り出させているが、スリムに成形。リトリーブ系とヒラヒラ系の中間タイプ
EPカービープロウン。ボディーをベンド側から折り返し、その余りをフックアイ直後で立ち上げることで、より強く水を押す効果をねらっている
EPフラッタークラブ。ボディーに幅を持たせることによって、スローなリトリーブでも姿勢が安定する。またフォーリングでアピールすることもねらっている
―今回は4本紹介していただきました。それぞれに対象魚とか、適した状況はあるのでしょうか
鈴木 僕はラインもほぼフローティングしか使わないし、どちらかといったらサイトフィッシングが中心なんです。だから、釣りとしてはもう、浜名湖のクロダイの延長です。で、対象魚はミナミクロダイ、トレバリー。そういう釣りに合わせてこの4パターンなのですが、大きく分けて2種類なんですよ。ひとつは速いリトリーブで誘う用。もうひとつはゆっくりヒラヒラ落とし込むタイプです。
―では、まず速いリトリーブ用というのはどれでしょう?
鈴木 クリスタル・マンティスシュリンプとEPカービープロウンです。スリムな感じのタイプですね。トレバリーなんかはリトリーブが速いほうがいいわけですけれど、やっぱり振動を出すような、音を出すような、水を押すような、性能はすごく求められると思っています。たとえば、ミズン(ミジュン)なんかがすごく追われているような状況で、似たようなシルエットのフライを投げればいいかな、と思うじゃないですか。だけどなかなか魚の興味をひかないんですよね。だから同じサイズでも、引いたときに水を押すような性能を持ったフライというのがすごく求められるなと感じるんです。だからこのカービープロウンは、EPファイバーを折り返して、水の抵抗を大きくしたい、という意図があるんです。イミテートするのがカニでもエビでもシャコでも、その形態よりもリトリーブに合わせたボリューム感というか、が、必要なんじゃないかなって思います。トレバリーでもいろんな種類がいて、GTとかカスミはわりと魚食性の強い魚だし、クロヒラとかオニヒラはどっちかというとその中間的な食性を持っていますよね。フラットに入ってきて、甲殻類を食べることが多いみたいで。ただ、どっちかというと僕は、オニヒラ的な食性を持った魚を釣るのに合わせたフライの選択というのをしていると思います。
―マッチング・ザ・ハッチ的な、ということですか。
鈴木 そうですね。まあ魚はそれほどセレクトしているわけではないでしょうが、フラットに上がってきたときに、なんかうごめいてるものを食べるわけじゃないですか。だから見た目よりも動きの模倣というか……。やっぱり、リトリーブの方法だったり、速度に応じた機能を持っているというのは大事じゃないかなと思います。シャコやシオマネキが泳ぐスピードってすごく速いじゃないですか。ああいうのをイメージしている感じです。
※以下の本誌からもご覧いただけます
書影をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします。FlyFisher2023年3月号 Early Spring
【特集1】南の島のフラットフィッシング
【特集2】水生昆虫小宇宙2023(おもに)メイフライ編
ここ数年、急速に広がっている日本のフラットフィッシング。 南のフィールドが開拓され、これまでメジャーだったクロダイとトレバリーに加えて、さまざまな対象魚が注目されています。 フィッシングガイドの数が増加していることも、この釣りをさらに楽しみやすくしてくれています。 まだまだ試行錯誤が続きますが、今号では、現時点でのメソッドやフライパターンなども紹介します。 また、「水生昆虫小宇宙2023」として水生昆虫研究家/写真家の刈田敏三さんによる解禁当初に注目すべきメイフライを解説していただいています。刈田さんがこれまでずっと提言しているように、私たちが見るべきは「ハッチ」ではなく「ドリフター」です。これらの虫がどのような形態で流下してくるかのサンプル写真が並びます。 さらに、さりげな添えられた刈田さんのフライパターンは長年研究を重ねてきた年輪とすごみが感じられます。
2023/2/14