LOGIN
Bibury Court

白川元さんのキャスティング練習方法

思い切ってロッドを倒す、バックキャストのドリフトを体感して身に付いたフルラインキャストのコツ習得の道

解説=白川元
Profile 白川元(しらかわ・げん)

昭和36年大阪府吹田市生まれ、東京都世田谷区育ち。駒場東邦中高等学校卒、立教大学法学部卒。医療関係の仕事を30歳で退職し、幼なじみでフライフィッシングを教えてくれた親友が大学院生として通う米国オレゴン大学に1年間語学留学をする。授業の休みにはオレゴン州内をはじめイエローストーン国立公園などを釣り歩く。帰国後32歳で、都内近郊にプロショップを構える株式会社サンスイに入社。40歳から新宿、池袋、上野、渋谷店の各店店長を歴任し、60歳で定年退職。現在は悪化した持病の腰痛を治療しながら、フライフィッシングを楽しむ。FFI(FLY FISHERS INTERNATIONAL)公認インストラクター(CI)、JFF会員。

※この記事はFLY FISHER No.193を再編集したものです

 

深夜練習が生んだ偶然

東京都内のプロショップでフライコーナーを担当していた白川元さんはキャスティングインストラクターとして、お店に来るお客様にアドバイスする機会が多かった。そんな白川さん自身が初めてぶつかった大きな壁は、「どうしてもフルラインが出ない」というものだった。

昔、フライ好き、キャスティング好きの仲間同士、機会を見つけては休みごとに集まって練習を行なっていたという白川さん。その時に使っていたのは8番タックル。いわゆる高番手に入るロッドで、フルラインが出ないはずがないという意識はあったのだが、いくら練習を繰り返してもラインを飛ばせる感触が得られなかった。

きっかけは、その頃に1人で行なっていた夜の東京お台場公園での練習。まだできたばかりで照明も人も少ない暗い公園で、いつものようにフォルスキャストを始めたその日。ある瞬間から、「スルスルスルッ」と後方に伸びていくラインの重みを、ロッドをとおしてはっきりと感じることができたという。その感触に合わせ、自然にラインを送り、そこからタイミングを計ってシュートをしてみたところ、それまでずっと悩んでいたのがウソのように、フルラインが意外なほど簡単に飛んでいった。「そこからうまく行く時のキャストの感触というものが掴めるようになりました。灯りのない中でキャストすることで、視覚に頼りすぎずラインの重みを感じとることができたんですね」。その後、引き続きキャスティング練習を続けていく中で、白川さんはその時に体感できた一連の動作が「バックキャストにおけるドリフト」になっていると気づいたという。

フライキャスティングにおいては、ラインを動かしてきたあとの急停止、ストップの大切さがよく指摘される。これは、推進力があるタイトループを作るうえで欠かせない要素だ。だが、そこから一定距離以上のロングキャストをしたいと思った時には、その距離に応じてストロークの幅自体も広げる必要がある。その際は、空中に保持するラインの量を増やすと同時に、ストロークの幅も稼ぐために、明確なストップのあとに若干自分の腕をラインが伸びていく方向に送るようにする、いわゆるドリフトの動きが必要になる。

「今は違いますが、自分がうまくロングキャストができずに悩んでいた頃には、ストップに比べてドリフトの必要性を指摘してくれるテキストやビデオはほとんどありませんでした。ドリフトとは、単純に言えばストップのあとにキャスティングのアーク(またはストローク)を広げる動作であり、特にロングキャストにおいては必須のテクニックということになるんですが、自分はそれができていなかった」

「なんでそれができなかったのかというと、たとえばロッドは後ろに倒し過ぎてはいけない、という思いの呪縛があったんです。キャスティングの初心者が、ある程度の距離をまず投げられるようになるためには、ロッドを後ろに倒しすぎない、という注意が有効だと思います。ただ、その人がある程度上達してきて、もう近距離は充分に投げられて、次にオープンスタンスを取り入れたロングキャストをしようと思ったら、その時に実際は、必要に応じてロッドを倒す必要が出てきますよね。そのことに気づくきっかけが、当時の自分はうまく得られていなかった」

もちろん、実際にフルラインをキャストするには、タイミングのよいホールやしっかり面を作るまっすぐな腕の動きなど、必要とされる動きがほかにもいくつかある。ただ、それらの要素に比べても、特にバックキャストにおけるドリフトの重要性については、昔の自分を含めはっきりとアドバイスをもらえる機会が少なかったと白川さん。現在、ほかの人のキャスティングを見る時も、このドリフトに関する指摘は、上達のきっかけにしてもらえることが多いそう

 

 

キャストの連続写真

flyfisher photo

①バックキャストのストップ

 

※この続きは、月額700円+税で有料メンバー登録するとご覧いただけます。

 

※以下の本誌からもご覧いただけます

書影をクリックすると電子書籍を取り扱っているサイト(Fujisan)へジャンプします。

FLY FISHER No.193 発売日2009年12月22日

【特集】Defying Gravity キャスティングの壁を超える

やすらぎが求められる今日、フライフィッシングは自然にローインパクトな付き合いのできる奥の深い趣味として多くの人々に支持されています。『FlyFisher』 は全国誌として、高い支持を得ているフライフィッシング専門誌です。最先端のテクニックはもちろん、目が覚めるような自然の一瞬の美を切り取った写真の数々が読者を魅了します。


2023/7/7

最新号 2024年6月号 Early Summer

【特集】拝見! ベストorバッグの中身

今号はエキスパートたちのベスト/バッグの中身を見させていただきました。みなさんそれぞれに工夫や思い入れが詰まっており、参考になるアイテムや収納法がきっといくつか見つかるはずです。

「タイトループ」セクションはアメリカン・フライタイイングの今をスコット・サンチェスさんに語っていただいております。ジグフックをドライに使う、小型化するフォームフライなど、最先端の情報を教えていただきました。

前号からお伝えしておりますが、今年度、小誌は創刊35周年を迎えております。読者の皆様とスポンサー企業様のおかげでここまで続けることができました。ありがとうございます!


Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

 

NOW LOADING