LOGIN
Bibury Court

渋谷直人が語るドリフト論

100点のフライでもドリフトがだめなら0点にも変わるし100点のドリフトでもフライがだめなら0点になりうる

解説=渋谷直人

フライの良し悪しも、全てはきれいに流せていないと意味がない。そんな状態でフライをチェンジしたところで、自分の流すフライにのみ魚の拒否反応が起きることになる。

実際、長いティペットを使用しても対岸の流れは回避するのが難しく、魚の反応を確認するのは非常に困難と感じることも少なくない。すべての流れを思い通りに流せることがまずは理想で、キャスティング技術はそのために必要になると考えている。

キャスティングの際、ループがどうであるかとか、フライをきれいに巻くことができたかどうかは、魚にしてみればどうでもよいこと。究極的な正解は魚しかしらないし、これについて一生かけても到達できないジレンマを自分は感じているが、意識しているのかどうかでその人の釣果を大きく変えるはずだ。

ただし、ドライとドリフトは比率で語れるものではないことを認識するべきだ。いかに100点のフライでもドリフトがだめなら0点にも変わるし、100点のドリフトでもフライがだめなら0点になりうる。それはどちらかの答えが満点に近ければ、反対はそのすり合わせでよい。その答えの導き方として技術で補いやすいのがドリフトであり、経験や知識などですり合わせるのが、フライであると考える。

話をドリフトにもどそう。フィッシングガイドとしての経験から言えるのは、ほとんどの人がきれいに流していると思っていても微妙にドラッグがかかっていることが圧倒的に多いということ。僕自身も、本当に完璧に流せているのかと言われれば、そうではないのが現実だ。それでも、ドリフトがちゃんとできたかどうかの判断はしっかりできているつもりでもある。

理想は、大物の虫同様に、流れに身を任せるようにフライが流れることだ。それを難しくしているのは、基本的にティペットの存在だ。フライに結ばれたティペットが流れとはちがった方向に引っ張られることにより、その流速より速く引きずられたり、レーンからずれていくことがドラッグである。だからこそ、フライの流れ方に影響しないくらいのティペットのたるみがほしい。そのための長いティペットだし、さらに可能な範囲で細くしなやかにしたい。そしてこの
たるませかたをコントロールするためのリーダー、ライン、ロッド、そしてプレゼンテーションで、そのさきのメンディングや手探りの所作が必要になる。

さらに突き詰めてたるみをコントロールできれば、流速よりもフライをゆっくりながすことも可能になり、それも釣れるドリフトの要素である。虫は生きていれば、水面に落ちてもがく。もがけば水流よりは若干不規則に流れる。カゲロウ類のハッチ時にも同じような現象があり、ダンが水面で羽ばたけば一瞬浮こうとしてその場にとどまる。そのように、流れに対しては流速より少しだけ、遅く流れることが、虫っぽく演出するドリフトであると考えている。逆に流速より速く流れてしまうと、警戒心を与えるだけになる。魚にフライを追わせるだけでスレさせる原因になる。





※この続きは、月額700円+税で有料メンバー登録するとご覧いただけます。

2024/8/22

つり人社の刊行物
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03 1,980円(税込) A4変型判132ページ
【特集1】引き出しを増やしあらゆる状況に対応するために… グレに効く1000%ウキ活用術 【特集2】各地の傾向と対策、特選ポイントを公開 冬こそアツいデカバン石鯛 ねらったところへ仕掛けを飛ばし、潮をとらえてグレの口もとへサシエを届け、釣り…
Bibury Court
つり人社の刊行物
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03
磯釣りスペシャルMAGAZINE Vol.03 1,980円(税込) A4変型判132ページ
【特集1】引き出しを増やしあらゆる状況に対応するために… グレに効く1000%ウキ活用術 【特集2】各地の傾向と対策、特選ポイントを公開 冬こそアツいデカバン石鯛 ねらったところへ仕掛けを飛ばし、潮をとらえてグレの口もとへサシエを届け、釣り…
Bibury Court

最新号 2025年6月号 Early Summer

【特集】One Fly, One Soul 1本入魂のタイイング

釣れないフライはありません。しかし、より釣れやすい、より釣りやすいものは確実にあります。
「釣れやすい」とは、たとえば魚がエサと認識しやすいシルエットや姿勢をキャストごとにキープできることや、より刺激的な波動を常に発する構造のこと。 「釣りやすい」とは、たとえばキャスト中の空気抵抗が考慮され、スムーズにプレゼンテーションできることや、簡単には壊れない高い耐久性のこと。
そして、フライは最終的に美しいに越したことはありません。
これら無限の要素を取り入れて、自分で創造できるからこそフライタイイングは楽しいものです。
今号では佐々木岳大さんにドライフライの基礎を、嶋崎了さんにCDCの失敗しない扱い方を、中根淳一さんにキールフライのアイデアを、筒井裕作さんにホットグルーの使い方を教えていただきました。

また、中央アフリカ、ガボンでのターポンフィッシングの釣行レポートやポータブル魚道に関するインタビューなどもお届けします。


Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

 

NOW LOADING