尺と出会う条件Q&A 2/3
水温や当日の現場状況、釣行時期について
森村義博、角田智、天海崇、板谷和彦=解説各地のエキスパートたちは、いったいどんな状況判断をして、よい魚を釣りあげているのだろうか。フィールド選び、釣行のタイミング、フライの流し方、それぞれ限られた時間でより「尺」に近づくためのアドバイスをきいた。
この記事は2014年10月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
森村義博(もりむら・よしひろ) 1956年生まれ。静岡県三島市在住。地元の狩野川水系をホームグラウンドに、シーズン中は毎日のように川を観察。ナチュラルドリフトでソフトハックルやカディスパターンを送り込む釣りが得意
森村義博(もりむら・よしひろ) 1956年生まれ。静岡県三島市在住。地元の狩野川水系をホームグラウンドに、シーズン中は毎日のように川を観察。ナチュラルドリフトでソフトハックルやカディスパターンを送り込む釣りが得意
《Profile》
角田智(つのだ・さとし) 1961年生まれ。長野県佐久市在住。千曲川水系の釣りに詳しく、本流域を中心に尺サイズの魚の付き場を熟知している。解禁初期から数多くの支流を含めて、川の観察は怠らない
角田智(つのだ・さとし) 1961年生まれ。長野県佐久市在住。千曲川水系の釣りに詳しく、本流域を中心に尺サイズの魚の付き場を熟知している。解禁初期から数多くの支流を含めて、川の観察は怠らない
《Profile》
天海崇(あまがい・たかし) 1973年生まれ。栃木県佐野市在住。「加賀フィッシングエリア」に勤務し、北関東周辺のフィールドに詳しい。プレッシャーの多いエリアながらも、毎年多くの尺ものを手にしている
天海崇(あまがい・たかし) 1973年生まれ。栃木県佐野市在住。「加賀フィッシングエリア」に勤務し、北関東周辺のフィールドに詳しい。プレッシャーの多いエリアながらも、毎年多くの尺ものを手にしている
《Profile》
板谷和彦(いたや・かずひこ) 1969年生まれ。石川県金沢市在住。ホームリバーは地元でもある手取川水系。マッチング・ザ・ハッチから源流の釣り上がりまで楽しむが、ドライフライで本流の大型ヤマメを引き出す釣りも得意
板谷和彦(いたや・かずひこ) 1969年生まれ。石川県金沢市在住。ホームリバーは地元でもある手取川水系。マッチング・ザ・ハッチから源流の釣り上がりまで楽しむが、ドライフライで本流の大型ヤマメを引き出す釣りも得意
実際尺が釣れそうな状況を教えてください。
角田
ホームの千曲川を例にとれば、尺サイズのイワナが出やすい時の傾向として、早期(2、3月)は水温が上がる(=魚の活性も上がる)正午から午後3時頃までの時間帯がベスト。さらに晴れの天気であれば条件はさらによい。自分なりの基準としては魚が釣れる水温は4℃以上で6~7°以上ならば、かなり活性は上がる。ただし、基本的にメイフライなど水生昆虫のハッチは少ないので、ニンフを使った釣りで実績が高い。
また、4~6月も良型が姿を見せるのは午後以降の時間帯。ライズねらいの釣りが多くなるが、この時期は晴天よりもやや曇った天気がよいようだ。
7~8月は、里川でどうしても水温が高くなり、渓魚には厳しい環境になりがちなので、適水温を保った標高の高い山岳渓流へ入ることをおすすめする。
千曲川の尺超え。大ものは本流のストラクチャー際に潜んでいることが多い
板谷
イワナはヤマメと違って生息年数が長いので、同じエリアにいる魚体のサイズはまちまちであることが多く、小さい魚よりも大きな魚のほうが早い時期(水温が低い時期)からフライ反応するように感じる。逆に夏場になると、小さな魚のほうが活性が高いと感じている。おそらくは水中の溶存酸素量とそれぞれの個体の酸素の必要量(大きな個体のほうが酸素を消費する量が多いのでは?)によってそういったことが起こるのではないかと考えている。
また、ヤマメの場合、北陸では冬期の水温が低く水量も不安定なためエサが少なく、そのために春先に尺サイズが釣れる可能性は低い。しかし経験則ではあるが、ヒゲナガやヒラタ、マダラやモンカゲロウなどの中~大型の水生昆虫の羽化時期を境にヤマメのアベレージサイズがひと回り上がり、尺ヤマメの可能性も上がってくるようだ。そういった意味では雪代が明けた以降のタイミングが尺ヤマメねらいの釣りのスタートとなり、さらにこれから訪れる秋の季節が1年の中で最大のチャンスだと考えている。
板谷さんは毎年解禁直後から岐阜県の蒲田川にも訪れる。ここも尺を超えるイワナ、ヤマメの実績が高いフィールドだ
森村
シーズンを通じて水量豊富な本流域に出掛けることが多いため、尺サイズのアマゴ・ヤマメに出会えるチャンスは常にあるわけなのだが、実際に結果が出た時の傾向としては、平水からやや渇水の水位、曇天や小雨がパラつく日、水生昆虫の活発な羽化が見られた日が多かった。釣れた確率からいえば、時期は4~5月、そして9月が最も多い。
しかし、渇水、快晴、水生昆虫の羽化がほとんど見られない真昼間・・・・・・という状況下においても実は何度も尺を釣ったことがある。たとえば、今年の4月25日はまさにそんな日だった。
狩野川本流の荒瀬で、#15のカディスピューパに31.5cmのアマゴが飛びついた。時間は午後0時30分。渇水で快晴、虫も出ないという、フライフィッシングには最悪とも思える状況。警戒心の強い尺を水面に向かわせたのは、水生昆虫の流下が少なく、水中では充分なエサが摂れないためだと推測している。また、フライをアピールさせるため、小さな動きを与えたことも効果的だったはず。僕は、このような状況下であっても積極的に川に立つ。そして、ほぼ1日中釣りをしている。長い時間川にいれば、当然尺ヤマメにめぐり会うチャンスも増えてくるはずなのだ。
森村さんのフライボックス。カディスをイメージしたソフトハックル・パターンが多い
天海
よいイワナが釣れそうな時とは、やはり確信の持てるほど高活性の時。たとえば、虫っ気があり、釣れてくる魚の平均サイズが9寸ばかりであれば、ぐっと尺は混じる可能性が高くなる。そんな気配がある状況では、いつもより簡単に釣れるのでアプローチも雑になってしまいがちだが、多少のドラッグが掛かっても魚たちは水面を割ると感じる。実際これは川の水量にも大きく影響することになるので、やはり事前の状況判断がキーになる。
天海さんがホームフィールドとする北関東の渓。流すレーンをしっかりと見極めたうえでフライをドリフトさせる
2019/9/2