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アカサカ釣具

『瀬戸際』、復刊。

著者・佐藤成史さんインタビュー

写真と文=FlyFisher編集部
有田川支流の典型的なアマゴ。この周辺には朱点が極端に少ない個体が見られるというが・・・・・・


佐藤成史さんのライフワークともいえる、『瀬戸際の渓魚たち』が、2020年の最新事情を追加し、西日本編と東日本編にわけられ復刊した。取材時は1990年代。あの頃と今、渓魚たちを取り巻く環境や、自身の活動の変化をインタビューした。


『瀬戸際の渓魚たち 増補改訂版西日本編』画像をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします。

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この記事は2018年発売『FlyFisher 30Years』に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
佐藤 成史(さとう・せいじ)
1957年生まれ。群馬県内水面漁場管理委員。全国の渓流での取材、執筆、撮影、講演活動、スクールなどを精力的にこなす。フライフィッシングや渓流関連の著書は多数。群馬県前橋市在住。




冒険は続く


—— 『瀬戸際の渓魚たち』(以下、『瀬戸際』)の単行本発売から、今年でちょうど20年です。その後も精力的に渓流での取材は続けられていますね。

佐藤 もちろん、折あるごとにいろんなところへ出かけています。渓流魚に関する情報は、できるだけ新しいものを入れるようにしていました。

2005年とか、それくらいから10数年間、水産庁の委託事業の検討委員をやっていましたので、その間に渓流魚の最新の研究やら、最新の漁場管理の方法やらをずいぶん学びました。

全国の漁協に配られた、水産庁の『渓流魚の放流マニュアル』、『渓流魚のゾーニング管理マニュアル』(いずれも水産庁のウエブサイトにてPDFで閲覧可能)などの作成にも携わったり、水産庁関係、漁協関係、行政、水産試験場などで働く人たちとの繋がりもできました。

そして、その期間に在来種や在来個体群などの価値が高まる風潮が、この本を書いた時よりもずっと出てきているんですよ。

有田川流域で行なわれた講演会「森と川と海が育む有田川のアマゴ」にて、プレゼンテーションする佐藤さん。現状の漁場管理などについて語った

—— この本でいろんなタイプの魚が紹介されましたが、その後、「○○イワナ」といったような新しいものが発見されたり、定義づけられたりしたのでしょうか?

佐藤 いわゆる斑紋変異といわれるようなものは、この本で取り上げたものが基本ですね。そこからさらに分かれるような形で、もっと細かい差異とかはありますけれど。来年見に行こうと思っているところもありますよ。

北日本系のヤマメと関東のヤマメ、西日本系のヤマメ、アマゴは、パーマークの形状を見ていると、西にいくにつれてだんだん丸くなっていきますよね。そういう平均値としての傾向はちょっとあるような気がします。西日本にいって在来の魚のパーマークはどんな形でしたかって聞くと、だいたい丸いという答えが返ってきます。だからどうしたってことなんですけど(笑)。

独特のコツがあるのか、佐藤さんの手にかかれば魚はすぐおとなしくなる


—— そういう冒険はまだ続いているということですね。

佐藤 それは『フライロッダーズ』のほうで、不定期ですけど、やらせてもらっています。今はヤマメとアマゴで書かせてもらってますけど、今度はイワナを取り上げたいと思っています。東北、北海道に結構ネタがあるので。

—— あの時のあの魚はどうしているかな、って釣りに行くこともあります?

佐藤 しますします(笑)。まだ大丈夫だ、なんて感じでね。まあみんな細々と生きてますよ(しばらく本のページをめくる)。

うん、うん……、みんな大丈夫ですね。みんな大丈夫ですが、その後禁漁措置になったということもありますよね。

イワメの川もたしか禁漁ですし、対馬のヤマメは本当にいたらしい、ということになってるようですね、遺伝子の解析によって。原稿を書いた当時は放流した魚ということでしたけど、対馬にはヤマメがいてもおかしくないですからね。



この本で一番最初の章に掲載したヤマメの南限については、これの復習でこないだ九州に行ってきたんです。本当の南限、というのが改めてわかって、そこに先月(2018年4月)行って釣ってきました。『瀬戸際』のころにいわれていたところよりも南です。

興味深いのは、その時釣った川ではない場所でも、実は昔からアマゴがいたというんですよ。そういわれている川に先月行ってきたんですけど、たしかにちょっと面白い魚でしたよね。

そもそも九州ではヤマメのことをエノハといったりマダラといったりするじゃないですか。でも赤い斑点があるということについては何もいっていないんです。どっちもマダラだし、どっちもエノハなんです。

じゃ、どういう区別をしたのでしょうか? おそらく両方いたんです。どこ行っても両方釣れたんですよ、きっと。そんな風に感じています。

今は、なぜアマゴに赤い斑点が出てくるかという発現のメカニズムの研究がいろいろと進んでいますので、研究が進めばいろいろわかるかもしれませんね。



イワナについても、九州と四国にはイワナはいないっていわれてきたけれど、もしかするといたのかもしれないということが研究されています。

九州にイワナが昔からいますよといわれても、放流をされていたのも事実。でも、ある大学の先生がある古い文書の中に、アマゴとは違う魚らしい記述を見つけたそうなんです。

そこは九州のかなり寒いところで、今でも魚はたくさんいて、そこにいるイワナはニッコウ系なんですよね。僕たちの先入観だと、西に行くとイワナはキリクチになる。白い斑点がなくなって、ヤマトイワナ系の魚になるというイメージがあるじゃないですか。

でも、九州の海は豊後水道で日本海と繋がっていて、海水魚の分布としてはあの辺は意外と日本海側の魚が多いんだそうです。

だからそれを考えると、ゴギとか、日本海系のニッコウイワナが向こうから入ってくれば、九州にニッコウ系のイワナがいてもぜんぜん不思議ではないんです。だからそこでなにか特殊な遺伝子型が見つかって、独自のタイプがあったとしたらそれは在来種になりますよね。

ただ、DNAを見ればっていうけれど、実はそれも非常に難しくて、そう簡単なものではないんです。

今は読み出す方法も進化していますけど、ある養魚場から持ってきたヤマメと、放流履歴のない最源流のヤマメのDNAを見ても、ある見方をすると同じ魚になってしまう。だけど、別の要素を読むとぜんぜん違う魚になってしまう、ということが起こりうるんです。

僕が自分でやっているわけではないので詳細はなんともいえませんが、この先生のいっていることと、こっちの先生がいっていることは随分違うなあ、とかそういう感想を抱くことはあります(笑)。



進歩する遺伝子解析技術がもたらすもの


—— 『瀬戸際』のころは、見た目と生息地からの推測によるところが大きかったですが、今は遺伝子解析があるんですね。

佐藤 この20年で一番進歩したことは、遺伝子解析ですよね。この部分でずいぶんと進展があって、在来魚、非在来魚の判別ができるようになってきています。

世界の潮流だと思うんですけど、いろんな大学でそういう研究を盛んにやっています。

今まで、僕たちは魚を釣ってその外観を見ることしかできなかったけれども、遺伝子を調べることによって、僕たちに見えなかったことが見えるようになってきました。

あそこで釣った魚はこういう遺伝子を持っていたんだな、とかそういうことを織り交ぜながら、また新しい渓流魚の分布図、みたいなものを思い描いたりできますよね。

ただしこれまでは、魚の遺伝子と外観を照らし合わせて研究する人が意外といなかったんですよね。

水産庁に出てくるデータでもハプロタイプの相違は認めることができても、こういう遺伝子を持っている魚の外観はこうです、という研究はなかなかないんですよ。

でも、それを最近やっている研究者が増えてきたので、だいたいどんな見た目だったら在来個体群の可能性が高い、とかくらいは見えるようになってきました。

これは有田川の京都大学の和歌山研究林で神戸大学の佐藤拓哉さんがやっている「有田川流域アマゴの健康診断プロジェクト」なんかでもそういう方向でもやっていく研究があるみたいなんですね。

その結果は楽しみなんですが、そういう今までわからなかったことが、見えるようになってきた20年でもありましたよね。

この『瀬戸際』を書いていたころは、要するに僕が大学でやった勉強と、それまで書かれてきたすごくマニアックな書籍とか論文を参考にした範囲でやってきたけれど、遺伝子解析が始まってから、そういう知識では追いつかなくなってきてしまいました(笑)。

容易なことではないですが、自分で勉強しなくちゃならないわけです。大学の先生に話をお聞きするのでもわからないことが多いので、日々これ精進です。人生ずっと勉強ですよ(笑)。

—— ご自身でもDNAの採集を?

佐藤 それはもうどんどん提供していますよ。この川のイワナは変だとか、なんでこうなんだろうというやつは全部調べてもらっています。解析料金も昔はものすごく高かったんですが、今はそうでもないので。

まあこっちはアブラビレ切って、大学の先生たちに、はいって渡すだけなんですが(笑)。ただ、遺伝子はすぐそんなに結果がでるものでもないし、なかなか新しい発見というのもないですけどね。

アマゴの遺伝子分析用サンプル採集風景。割り当てられた採集ビンを記録する。容器にはあらかじめ番号が振ってある

アマゴの遺伝子分析用サンプル採集風景その2。アブラビレと尾ビレの先端をカットする。アブラビレは渓流魚の泳ぎにそれほど影響していないと考えられ、なおかつ再生しないので調査済みの個体か簡単に判別できる、尾ビレの先端は人間の爪のようなもので比較的簡単に再生する

アマゴの遺伝子分析用サンプル採集風景その3。切ったヒレを容器に入れて持ち帰り、これを研究施設へ送る

変わる立場


—— 釣り場に関する意見を求められることも増えましたか? 『瀬戸際』のころは、現場に行って状況をレポートするとか、こうすれば釣れる、こう巻けばフライは美しくなる、という内容を伝える仕事が主だったと思うのですが、その後は釣り場管理に関して発信するというか、アドバイスされることも増えたように見えます。

佐藤 そういうのは多いですね。それは、『瀬戸際』の後に『21世紀の渓景色へ』という連載をやりましたが、あれでいろんな地域の釣り場を取材して、それが連綿とひとつのストーリーになっていますからね。

その関係で釣り場の管理はどうあるべきか、ということを考えるようになりました。キャッチ&リリースとか、各地でいろんな試みが立ち上がって、ダメになってしまったものも含めていろいろ見てきて、それについて思うところはもちろんあるし、そういった活動に対する客観的な見方もしつつ、という感じで。

でも、これは正解がないですからね、結局。それぞれの地域、やる人によって、求めている釣り場とか魚とか、それぞれ違うでしょうから。

いずれにせよ、僕たちは限られた資源で遊ばせてもらっているのは間違いないので、それがなければ結局なにも生まれてこないわけだし、資源、というのもをやっぱりちゃんとリスペクトしていかないといけないと思うんです。そのためにどうしたらよいのかというのは、ずっと模索していることですよね。


—— 釣り場を立ち上げる人というより、いろんな人たちを繋ぐハブ、という役回りになりそうですね。

佐藤 それが今の僕に求められていることなんじゃないですかね。

主には、こういう一例があります、ここにこういうことを研究している人がいますよ、ということを紹介していくことなんですけど、それぞれの会合があったら、それに応じたプレゼンをしてご理解をいただけるようにするということですね。そういう機会は多々あります。

こないだも九州へ行って、宮崎大学の先生と九州大学の先生を引き合わせて、これから一緒にやりましょう、みたいな。今度は神戸大学の佐藤拓哉さんにも加わっていただこうかと思って。

彼らはまさに研究していることが重なっていて、それぞれに進んでいることがあります。それをお互いに交流していただければもっと面白いことが起こるかなあと。まあ、これを僕がやるのが適切かどうかわからないけれど、社会貢献みたいなものですから(笑)。

自分が大切に思っているものを釣りをしない人たちにも大切に思っていただくために、っていう気持ちはありますよね。

逆にね、フライをやらなくても『瀬戸際』を読んでくれていた、という人が結構いるんですよ。

大学の先生たちでも、参考文献としてこの本を使ってくれている方々もいますし、大学の先生でフライフィッシャーもいますし。釣りの本もそんなに捨てたものではないんですよ。見る人は見ています。

水産庁の検討委員をしている時に、全国の水産行政に携わる人とか試験研究に携わる人とかいろんな人と会ってきましたけど、基本的にみなさん魚が好きだから。それだけのことなんですよね。

僕もずっとフライフィッシングをやってきましたけど、ヤマメ、イワナ以外の魚にも当然興味はありますし、地元ではヤリタナゴの保護活動のお手伝いとかもずっとさせていただいてます。


21世紀になった渓景色


—— 現在、地球環境の変化ということもいわれていますが、ずっと渓流を見続けてきて、なにか具体的な変化はありますか。

佐藤 温暖化とかいいますけど、そういう時期なんだと思います。この原因が人為的かそうでないかの議論は別にして、やはり温暖化の影響はあると思います。集中豪雨が増えた、とか。

でもそういう川の回復の程度とかを総合的に見ると、なんていうんでしょう、自然環境が豊かなところだと回復が早いというのは変わらないですよ。やっぱり植林が80%のところよりも、広葉樹林の中の川のほうが、災害にも遭いづらいし、遭ったとしても回復が早いし、魚が消え去るということはありません。

光の加減で美しい光景だが、放置された人工林の環境に対する悪影響が懸念される

そういうことを目撃すると、氷河期だとか、結局そういう時代を乗り越えてきた生きものたちなんだなって思います、やっぱり。ただし、もうこれはもどらないな、と感じるところもありますよ。でもそれはこの20年、30年の間に始まったことではなくてやっぱり河川改修だとか、ダムを作ったり護岸を作ったりとか、そっちのほうが影響はずっと大きいと思います。

でも、悲観的になるばっかりじゃなくて、地域全体が住んでいる人たちの渓流魚に対する意識が高くなっているもの事実です。実際に改善されたこともたくさんあります。

たとえば、ナガレモンイワナがいる河川なんかは今、禁漁になっています。

『瀬戸際』で取材したころの僕は、彼らがいる川がわからなかったんですよ。だからあのエピソードは、琵琶湖に流れ込むどこかの川にナガレモイワナがいる。どこにいるかわからないけれど、それについて記述した文章を手がかりに釣り場を探すというストーリーが軸になっています。

でも、もちろんその地域では、昔から知っている人は知っているイワナだったんですよね。

で、そういった人たちが、生息河川を禁漁にする際にすごく尽力して、今では資源量は回復して、すごくよい状況になっています。そしてこの活動には30歳代、40歳代の人たちが結構関わっていますよ。なんとか資源量を残したい、という切なる思いでやっています。

また、こういうものはただ禁漁にすればよいというものでもないんです。禁漁にすると逆に人が来ちゃったりするので。できるかぎり釣獲圧という釣り人のプレッシャーをかけないように工夫をしていかないと。

一緒にいるのは「みんなの毛鉤倶楽部」代表の榛木敏之さん。有田川の調査に積極的に協力している

—— 国内外来種の問題も含めて、外来種ということにも意識が高まっています。

佐藤 方向性としては、釣り人がどうこういうことではなくて、生態学の先生とか研究者が考えることだと思っています。釣りをする人間の多くは、釣るか放流するか、しかないですよね。こういう魚をこういうところに放流するのはよくない、と研究者の方がいうなら、やはりやめたほうがいいと思います。

だから、ヤマメとかイワナとかも、いわゆる国内外来種と呼ばれる系群が違う魚の放流は極力控えたほうがよいと思います。

在来種はそこにずっと生きてきたのだから、実際にいくつもの苦難も乗り越えて何万年も前からそこにいる魚たちなので、その環境に適した魚であるはずですから。

でも、やっぱり在来種は強いですよ。成魚放流だなんだって放流をしても、特に釣り人の多い川は、逆にそういう魚が在来の魚を守っているという面もあるんです。

成魚放流の魚はやっぱり釣られやすいので、釣り人はそれ釣って満足して帰っちゃう。大きいの釣れちゃうと、あとで釣れた小さいのは逃しちゃったりするじゃないですか(笑)。

その小さいのが在来種だった、という現象があるんです。だから放流そのものもいろんな考え方をしたほうがいいのだと思います。稚魚放流がいい、発眼卵放流がいい、っていうけれど、どういう魚を増やしてどういうことに利用して、どういうことを結果として残したいのか、ということを考えないと。

今の渓流の一般的な管理システムでは、どんな放流のやり方をしてもダメです。魚は増えません。好きなだけ釣り人が持って帰って、釣り人の好きなようにさせる状況では、いくら放流して、どんな方法でやろうとも大差ないと思います。

だから、今ある資源というものをいかに磨耗を防いで、いかに次世代に繋いでいくかっていう、持続的管理をどう実現していくかが一番の問題なんです。

魚が増えて、釣りも楽しくできるような環境ができるだけ多くのところにあったほうが絶対いいじゃいですか。釣りをしたら魚は減りますよね。だけど禁漁にされたら釣りはできないんですから、そこに行く意味さえなくなっちゃいますし。

で、こういう時に重要なのは、とにかく釣り人と漁協とか釣り場を管理する側がコミュニケーションをとって、膝を詰めて、理不尽なことをいわれてもちゃんと話を聞いて、そのかわりこっちのいっていることを聞いてもらって、信頼関係を築いていくってことです。

そういうふうにやってそれぞれのやりたいことを補えるというか。しかも、魚ができるだけ増えるような釣り場を作っていくには、地域全体でもその川の環境そのものについて、考えていかなければなりませんしね。


—— フィッシングジャーナリストと紹介されることも多いそうですが、もはやその肩書きにおさまりませんね。

佐藤 あの……、肩書きは「ツリーライター」でいいんじゃないでしょうか(笑)。本職はライターですけれど、実際写真やったり、釣りのスクールやったり、何が本業で副業なのかわからない状態です。

でも、生きものというのはいかに素晴らしいか、いかに美しいか、いかに永遠か、ということを文章やら写真やら、で伝えられればいいと思っています。

『瀬戸際』のころはほとんど魚しか見ていないような状態でした。下ばかりみて釣りをしてたらぜんぜん気がつきもしなかったんですが、今は、生態系の中のひとつである生きものとして魚があって、それを取り囲む生きもの全般を、それはもう、ミミズだってアメンボだって、西日本に行けばカンタロウミミズを見つけては喜んでいるし(笑)、いろんなところに行けばそれぞれに特殊な生きものがいるし、そういうところで釣りもしつつ、ということが楽しくなってきましたね。

生きとし生けるものに対する愛着やら、ほら、独身なものですから、愛情を寄せるものはほかにないですから(笑)。魚たちを中心とした自然界が描く風景、みたいなものに美しさをすごく感じるようになってきましたね。生物多様性という言葉もありますけれど、生きものの彩りというか、そいうものの関わり合いが愛おしくなってきました。

だから特定の生きものがこれはどういう種で、とかそういうことではなくて、メイフライが羽化して、それを魚がボーンと食べている、というだけでその背景にあるストーリーを思い描くだけで嬉しい。それこそがフライフィッシングというか、フライフィッシングをやっていてよかったな、というところですよね。自分が自然に参加できたというか、中に入れたような、気持ちよさを感じるというか。

—— だいぶ丸くなりましたか?(笑)

佐藤 ははは。いや、歳とっただけでしょう(笑)。

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2020/8/3

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最新号 2024年12月号 Early Autumn

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