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WILD LIFE

ロッドに合わせて自分を変える

ここでは、名手2名にのロッドアクションの捉え方、現場でも役立つ意識の持ち方などを聞いた

解説=國武大毅、倉上稔

※この記事はFLY FISHER No.193を再編集したものです

 

 

極細ロングティペットを使う時のファーストアクション・ロッドの扱い方

 

解説

國武大毅(くにたけ・ひろき)

1973年生まれ。愛知県知多郡在住。その昔にオートバイのレーシング活動で鍛えた運動神経と動体視力を生かし、春先は小さなフライを使ったミッジングの釣りを楽しむ

 

中部地方の解禁期の風物詩である、広くフラットな川でのミッジフィッシング。水生昆虫のハッチがまだ本格化する前の2~3月、ユスリカにライズするアマゴやシラメを追い、多くのフライフィッシャーが長良川やその支流に集まる。

この釣りに必要なキャスティングをひとことで表わすと、「細いティペットを使いつつ、いかに遠くに飛ばすか」と言うのは、愛知県知多郡在住の國武大毅さん。國武さんが使うのはフライフィッシング用で10x、渓流釣り用で0.08号などのいわゆる極細ティペットだ。つまり、少しでも無理のあるキャストは簡単にライントラブルを生み、見た目の飛距離がいくら稼げたとしても、着水した先でティペットが絡まるようなキャストをしてしまうと魚には大いに警戒される。とはいえ、開けた河原は風の影響も受けやすく、また、低い気温のフィールドでは指先がかじかむことも多い。

厳しくも楽しいこの釣りにおいて、釣果をアップさせる一番の要素となるのは、「余裕のあるキャスティング」だ。國武さんはその感覚を、「トルクのあるループをゆっくり投げる感じ」「ループでフライを送るつもりのキャスト」と表現する。いつ起きるとも分からない、貴重な春先のライズを目の前にした時、普通は誰でもとりあえずそこにフライを置きたいという焦燥感に駆られる。そんな中でフライフィッシャーは、魚たちのライズの周期を確認しつつ、次にライズを見たらすぐに投げられる技術、ミスのないロングキャストを一度で決める正確性が求められる。

「自分がこれまでにしてきた失敗への反省も踏まえて一番よくないロッドの振り方は、ロッドで風を切るようなせわしいリズムのものです。これは意識の仕方も大きいと思うのですが、ループでフライを送ってやるという意識を忘れて、自分のスピードでロッドを振ってしまうと失敗することが非常に多い。あとは身体の使い過ぎですね。開けた川で遠くをねらわなければならないとなると、どうしてもそうなりがちなのですが、そこをあえて押さえる。釣り人のスピードでロッドを振るのではなく、ロッドに合わせたスピードで釣り人が振ってやる。すると、トラブルのない安定したパワーのあるループが作れるはずですし、結果的に細いティペットを使ったロングティペットでもトラブルなくキャストすることができます」

國武さんがアマゴ・シラメのミッジングで実際に使用するロッドは、たとえば2~3番ライン指定のミディアムファースト~ファーストアクションのグラファイトロッドだ(ただし開けた川では6番を使うこともある)。細いティペットを使うため、近年人気を集めている1番や2番(あるいはO番)のロッドとそれに合わせたラインの選択も考えられるが、飛距離との兼ね合いで、まずはそのくらいのスペックが無理なく扱いやすいという。そのうえで、フォルスキャストはなるべく少なく、また、ウエーディングにも対応できるように、いわゆるハイライン(ループの位置を高い位置にキープするキャスティング)で投げることを心掛ける。ちなみに、フルラインをキャストする場合のフォルスキャストからシュートまでのストロークの回数は6回(3往復)が目安だ。

「ロッドにはそれぞれ、本来持っている無理なく投げられる距離があります。それは使う人によってももちろん変わりますが、いずれにせよ自分が心掛けているのは、ロッドの持つ本来のポテンシャルに合わせてこちらが投げてやることです。細いティペットを使いながら、ロッドの番手をある程度以下に落とさないのは、やはり自分が投げたい距離との兼ね合いもあるからですね。あとは、特にミッジングにおけるキャスティングに際しては、身体全体をあえて使わないようにしています。腰から上だけを使って投げる意識です」

たとえば釣り場でキャスティングに苦戦している人がいた時、最も多く見られる典型的なミスキャストは「寝かせていたロッドを急に立ててラインを水面からごぼう抜きにし、そのままロッドにラインの重さを乗せて投げようとする。さらにその際の身体の動きも大きいタイプのキャスト」だと國武さんは指摘する。飛距離がほしいからといってファーストアクションのロッドを使っている時に、そのようなキャストをしてしまうと、ラインを動かすスピードが一定せず、そこに急なタイミングで入れるホールの影響なども重なって、ロッドティップが急激に凹むことによるテイリングが起きやすくなってしまう。これは長く繊細なティペットを使う釣りにおいて、最も避けなければいけない現象だ。

ではどうすればトラブルなくキャストができるのか。國武さんが意識しているのは、単純ではあるが、「ファーストアクションのロッドほどティップを使わず、ミドル部分を曲げてキャストするようにする」というロッドの振り方だ。ロッドを先端を使いやすいファーストアクションのサオほど、キャスティングのリズムも川では早くなりがち。だがそこでペースがアップしないように、具体的にはロッドを曲げる位置をより下に持って来るように自分に言い聞かせる。すると結果的に、コンパクトなストロークの中でループがフライを運んでくれるキャストができるようになるという。

「別の言い方をすれば、ファーストアクションのロッドを選んだ時ほど、ティップにラインの負荷を掛け続けて暴れさせない、そんな意識でもあります。ウエーディングして身体の動きが制限された状態で、上体をおもに使うことが多いミッジングのシチュエーションにおいても、これらの一連の投げ方は有効ですね」

 

 

身体の正面で腕を動かすショートストロークのキャストで投げる楽しさを再発見

 

解説

倉上稔(くらかみ・みのる)

1955年生まれ。群馬県太田市在住。管理釣り場のスタッフとして働いた後、県内で飲食店を開業し、現在は釣り仲間でもある奥様と二人三脚で近県の釣り場を毎週のように歩く

 

 

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FLY FISHER No.193 発売日2009年12月22日

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