丸山拓馬さんのビッグフライ
5種類ご紹介いたします
解説=丸山拓馬 写真と文=編集部※この記事はFLY FISHER 2022年3月号 (2022-01-21)を再編集したものです
アマゾンストリーマー メシアナver.
これはアマゾン川の河口にあるメシアナ島(巨大な中洲)で、ピラルクーをねらった際に使用したフライです。メシアナ島には農場や牧場がいくつもあり、それらと湿地帯とをつなぐ水路でピラルクーをサイトフィッシングでねらえるのです。川幅は広いところで30mほど。狭いところは15mくらいなので、日本国内の水路のライギョ釣りの延長線上にあるような感覚でした。ピラルクーはライギョと同じく定期的に空気を吸いに水面までくるので、サイトフィッシングは彼らの息つぎを探すことから始まります。呼吸のために浮上したピラルクーの姿を見つけたらダッシュで近づき、進行方向にフライをキャストします。呼吸を終えて潜っていくピラルクーの目の前に、フライがゆっくりと泳ぐ姿をイメージしてロングストロークのスローリトリーブ。アマゾンには小型のナマズがたくさんいて、その多くが細長い形をしているので、このフライもそこを意識して作りました。うまくフライをプレゼンテーションでき、長くスローなリトリーブを開始すると、手にしていたラインに強烈な衝撃が伝わり、圧倒的な重さとトルクフルな走りでラインが一気に持っていかれます。そして狭い水路を飛び出すかのような高いジャンプを繰り返す抵抗が始まりました。正直にいうとここから先はやり取りに夢中で、最初の1尾はどうやってランディングしたかよく覚えていません。それくらい強烈な相手でした。
重さは4g。ほぼフックとチェーンボールアイの重さだろう。ピラルクーは速く沈みすぎるとフライを見失うことがあるそうで、何種類か作っていったなかでこれが一番反応がよかったとのこと。使用タックルはロッドがセージ・Xi2 9フィート#12。フライラインはエアフロターポンWF12F。リーダーはバリバス・ショックリーダー70Lbを7ft前後
撚って二重にしたウイードガード(詳しくはグードゥーダイバーの解説を参照)。適度な張りと軽量化を両立するために、丸山さんが導き出したひとつの答えだ
東京湾デシーバー
東京湾の大型シーバス用に使っているフライ。12月末から翌年2月くらいまでの厳寒期に、デイゲームで岸壁や橋脚などの障害物に潜む魚をねらっています。水面から1mくらいの層を通すことが多いので、基本的にラインはインターミディエイトを使います。ただ潮流が早いことがあるため、タイプ4も用意しておいたほうがよいでしょう。あまり沈めないのは、障害物がらみの釣りなので、食い気がある魚が入れば浅いレンジでも反応が得られやすいのと、手返しをよくして多くのポイントをねらいたいと理由から。ガイド船のキャプテンから、ルアーのビッグベイトではテイルフックへのバイトも多いというアドバイスをもらい、アシストフックを装着するようになりました。数が釣れる釣りではないですが、釣れれば高確率で70cmオーバーで、なおかつ水面直下でもんどりうってバイトしてくる姿に病みつきになります。
重さは3g。水抜けがよく、空気抵抗も少ないので大きさの割りに投げやすい。障害物スレスレをねらうことが多いため、投射性を考慮してデシーバーを選んだとのこと。使用タックルはロッドがセージ・ワン 9フィート #8。フライラインはSA・ユニフォームシンクST10(タイプ4)と SWシューティングライン。リーダーはバリバス・ショックリーダー40Lbを5フィート前後。ティペットはシーガー・プレミアムマックスショックリーダー7~8号 を2~3フィート
サブフックは、アップアイのTMC785にワイヤを通してスレッドで巻き留め、瞬間接着剤で固定。この方法は大阪のフライショップ、ドラグフリーの筒井裕作さんに教わったそうだ。メインフックとの接続もシャンクにスレッドで留める
ドライコノシロ
これはオーストラリアのニューサウスウェールズ州へ、マーレーコッドを釣りに行ったときに使ったフライです。マーレーコッドは、オーストラリア最大の淡水魚で、記録に残っているのは全長183cm、重さ113kgというから夢があります。名前にコッド(英名でタラ)とありますが、アカメやハタに近い体型で分類上もスズキ目です。マーレーコッドは冠水した樹木、複雑な形状の岩などの障害物を好み、そういったポイントから水面に誘い出すのがセオリーです。釣行前に何本かフライを作ったのですが、待ち伏せ系の魚を水面まで誘い出すには、ハイアピールであることが絶対条件です。次に強靭な引きに耐えられる頑丈さ。最後に障害物に引っ掛かりにくいこと。これらをクリアしていたのがグードゥーダイバーでした。ちなみにグードゥーとは、オーストラリアの先住民族、アボリジニの言葉で「大きな魚」を意味し、主にマーレーコッドのことをさしているそうです。このフライで特に考えたのがウイードガードです。私は自作のバグやポッパーに、フロロ10号のウイードガードを付けているのですが、これが障害物を適度に弾き、魚にはフッキングしやすいのです。長年培ってきた最適解でした。マーレーコッドもできれば同じ仕様でと考えていましたが、大型のフックではガードが細いと充分な障害物回避能力を得られないため、最終的ににフロロ10号を2本撚って、1本にして取り付けました。結果はねらいどおりで、マーレーコッドを何尾もC&Rすることができました。
中空にするメリットは、高い浮力とフッキング率の向上。シーバスが吸い込んだ際に折れ曲がるかどうかは大きな問題だ
ドライコノシロを丸のみした70cmクラスのシーバス。ベイトが大きいとバキュームする力も強くなるようだ
ぴろぴろデシーバー
東京湾の秋のコノシロパターンで使用しているフライです。キャストして浮かべてただひたすら待つのではなく、オープンエリアでできるだけロングキャストし、着水後はリトリーブしてシーバスを浮かせて食わせるフライです。弱ったコノシロが水面に横たわって浮いていて、でもまだ生きていて水面をピチャピチャ泳いでいるイメージです。リトリーブすると水の抵抗を受けて若干潜り、止めると水面に浮上します。このときに発生する引き波がシーバスを刺激するようで、ボートの近くまで来ていても、お構いなしに水面が炸裂したことがありました。タイイングというか、クラフトの範疇かもしれませんが、テイルはスーパーヘアの束をライターで少し炙って、溶着させながらヒレ状に広げて作ります。また、ボディーは100円ショップで売っている梱包用シートを金属製のクリップに挟み、ライターで炙って溶着しながら中空にしています。この方法は横浜のガイドボート、シークロの升田龍兵さんに教えていただきました。ボディーができたらスレッドでフックに留めて、さらにエポキシで接着します。次にフックとボディーの接着部分を隠すように、頭の部分を梱包用シートで作ります。最後に油性マーカーでコノシロっぽい模様や色を塗り、シールアイを貼った後、表面をスーパーXクリアでコートして完成です。
重さは3g。アシストフックやカーリーテイルを付けてこの重さなら、違和感は少ないだろう。使用タックルはロッドがセージ・ペイロード 9フィート#8。フライラインはSA・ソナータイタンクリアーティップWF9I。リーダーはバリバス・ショックリーダー40Lbを5フィート前後。ティペットはシーガー・プレミアムマックスショックリーダー5~7号を 2~3フィート
ブラウンを基調に近い色のマテリアルでまとめられている。茶色系は天候や時間帯による色変化が少なく、安定して釣れる色と感じている
メインフックとサブフックをワイヤで繋ぎ、サブフックの後ろにカーリーテイルを装着している。接続はナイロンラインをループ・トゥ・ループにして、スレッドで留めている。スイベルのように回転はしないが、撚れはほとんどないとのこと
グードゥーダイバー
クリアウォーターの湖でラージマウスバスをねらうのによく使っているフライ。全長15cmを超えているのでビッグフライといってよいと思いますが、個人的にはレギュラーサイズです。ラージマウスバスは、大きなフライへの反応がよいことが多いので、ついつい大きいフライばかり使ってしまいます(笑)。障害物まわりからカケアガリなどの地形変化。リトリーブでもフォールでもオールマイティに使えるフライにしたい思ってカーリーテイルを付けていますが、残念ながら昨シーズンは結果を出せずに終わりました。
重さは5g。使用タックルはロッドがセージ・パイク 9フィート #10。フライラインはエアフロ・ターポンWF10F。リーダーはバリバス・ショックリーダー50Lbを7フィート前後とのこと
カバーにタイトに着く習性があるようで、ギリギリのところに投げて魚を引っ張り出すのはかなり楽しい。アピール強めのフライも合っていた
フォームシートで作った大きなカラーが印象的。ストップ&ゴーで大きなサウンドを響かせ、マーレーコッドを浮上させた。ヘッドとカラーは着色およびアイを貼った後にウレタン系接着剤で全体をコーティングして強度をアップさせている
2023/10/30