“マシュマロ”をウイングにする発想
視認性と浮力の高い、バブルウイング・フライ
天海崇=解説
「エルクヘア・カディスは見えづらい」「パラシュートポストが年々太く長くなってきている」「CDC のナチュラルは視認性が悪いのでそもそも使わない」そんなあなたに捧げる、よく見え、よく浮く、新フライ。
《Profile》
天海崇(あまがい・たかし) 1973 年生まれ。栃木県佐野市在住。渓流や本流でのライズフィッシングやブラインドの釣り、またニンフを使った釣りも得意。北関東の渓を中心に、毎年北海道への遠征にも精力的。加賀フィッシングエリアでマネージャーを務める
この記事は2012年10月号に掲載されたものを再編集しています。天海崇(あまがい・たかし) 1973 年生まれ。栃木県佐野市在住。渓流や本流でのライズフィッシングやブラインドの釣り、またニンフを使った釣りも得意。北関東の渓を中心に、毎年北海道への遠征にも精力的。加賀フィッシングエリアでマネージャーを務める
ほぼメンテナンスフリーの高い浮力
フックデザイナーでありプロタイヤーでもある島崎憲司郎さん考案の「マシュマロピューパ」(00’年)。このフライの一部を取り入れた新フライをここで紹介したい。マシュマロピューパの特徴はなんといってもエアロドライウィングを折り返してエクステンドボディーにした「マシュマロ・エクステンション」にある。紡錘形で質量があり、軽く、触れると壊れそうな柔らかさながらシルエットをきちんと保持する。
このフライのヘビーユーザーであった栃木県在住の天海崇さんは、ある時、毎年足を伸ばしている北海道遠征用にオリジナルフライを1本巻いてみようと思い立つ。そして考えたのが、マシュマロピューパをアレンジした大型ニジマス用のビッグ・ドライフライであった。
彼は「マシュマロ・エクステンション」をボディーではなくウイングに用いたのだ。一言で言ってしまえばそれだけのこと。しかし、このちょっとした応用が、実は予想以上の効果をもたらした。想定外だったのは魚からの反応だけでなく、視認性がとてもよいこと、それに非常に投げやすい点であった。北海道の川では惜しくもバラしてしまったが、60cmを超える大型レインボーに口を使わせることにも成功。
遠征から帰宅した天海さんはさっそく渓流用にリサイズした14番のフライを使って各地の渓流で実釣を重ねていった。マシュマロ・エクステンションをウイングに仕立てたフライは、水面を流れる泡のように見えることから、バブルウイングと名付けて小さな改良を重ねる。バブルウイングはカディス、アント、ビートル、ホッパー、スパイダーといったようにウイングの下部分を変えるだけでバリエーションを広げることができる。そのほかフェザントテイルにすれば、ストーンフライのフローティングニンフや、メイフライのイマージャーとしても活用できる。

また、2番ロッドで18フィート前後のリーダー&ティペットのシステムでも問題なくキャストできることから、ロングティペットのリーダーシステムでも投射性において問題はない。これまでに好反応を示した魚はイワナ、ヤマメ、アマゴ、ニジマス、である。特に効果が高かったのは魚というよりもシチュエーションのほうで、人的プレッシャーの高い河川では反応の違いが顕著によくなったというのが天海さんのこれまでの印象だ。

「このフライはウイングが大きいためか、風や波の影響を受けて揺れながら流れます。もちろん水面下のボディーもそれに合わせて細かく揺れているわけですが、そのせいなのかどうかは分かりませんが、パラシュートでは出なかった場所でも反応を得ることがあるんです。また反応のよさに加えて非常に見やすいので、フライが見づらいなぁ、なんて普段から思っている人、あるいはそういったシチュエーションではぜひとも試してもらいたいです」
浮力も非常に高いため、ラフな水面でも効果的に使える。またそれだけでなく、反対にフラットな場面でも実績があるという。つまり使う場所を選ばないフライでもあるのだ。

上に並べたのは天海さんが実際に巻いたフライ群。見た目ほど魚には警戒心を与えないようで、少なくともこれまでにウイングの存在がマイナスになったと思える場面はないという。そして天海さんは、ウイングのカラーにエアロドライウィングのグレーやピンク、オレンジ、ブラック、グリーンをパターンや好みに応じて使いわけているが、なかでも特に見やすくて反応がよいと感じているのが、タンである。これを天海さんはスタンダードカラーにしている。そのほかホワイトを使ってフライトーンなどで後から着色するのもありかもしれない。
見やすい、釣れる、沈まない、といいこと尽くめのようだが、もちろん弱点もある。ヒットした魚の歯にウイングが絡み、ハリを外す際にエアロドライウィングが解れてウイングの形状が崩れてしまう点だ。これらを防ぐにはフックを外す際にフォーセップを用いることや、フックのバーブを予め潰しておくか、バーブレスにするのがよい。そのほうがフライも魚もダメージが少ないはずだ。最近はバブルウイングにラバーレッグを留めただけのスパイダーが絶好調だと話す天海さん。ラバーレッグはできるだけ細くて切れにくいものがオススメだ。
バブルウイングを作る
バブルウイングはある程度の数をまとめて作っておくのがよい。あとは好みのボディーとフィッティングするだけの簡単タイイングだ。ここで紹介するウイングのサイズは#14のTМC531、#13のTМC102Y、112Y、212Yに合わせたもの。そのほかのフックサイズに合わせる際は、適宜調整が必要だ。
●エアロドライウイング各色
●フロータント(パウダータイプ)
●ナイロンモノフィラ2号
●タイイング用のティーザーやブラシ
●ヘッドセメント








2019/8/20