面をずらすループコントロール
バックハンド&サイドキャストのヒント
鈴木 寿=文
逆U字にラインを着水させたい場合など、渓流での釣りで使用頻度の高い、バックハンド&サイドキャスト。ループを傾けるという意味では、基本的に同じ2つのキャストだが、その傾け方のキーは肘の位置にあった。
この記事は2013年11月号に掲載されたものを再編集しています。
《Profile》
すずき・ひさし
1958年生まれ。愛知県名古屋市でプ口ショップ「ワチェッ卜」を営む。渓流・本流・海まで幅広い釣りに精通。米国IFFFマスター&ツーハンドキャスティグインス卜ラクターの資格を持ち、季節に応じたスクールを精力的に実施している。
すずき・ひさし
1958年生まれ。愛知県名古屋市でプ口ショップ「ワチェッ卜」を営む。渓流・本流・海まで幅広い釣りに精通。米国IFFFマスター&ツーハンドキャスティグインス卜ラクターの資格を持ち、季節に応じたスクールを精力的に実施している。
ここ数年、各地でキャスティングスクールが頻繁に行なわれるようになっており、自分のキャストを見直すきっかけも以前に比べてはるかに多くなっているように感じる。オフシーズンは、キャスティングの練習でスキルアップを目指す期間ととらえている人もいるほどで、国内のレベルも格段に高くなっているようだ。しかしその一方で、「芝生の上では上手くいくのだけれど、実釣になるとトラブルが増えて……」といった声も未だ少なくない。
オーバーヘッド・キャストを見てみれば、ロッドをタテにして振って面を作る方法が、ティップの軌跡を最も高い位置にキープして、ループを自分の正面で正確にターンオーバーさせやすいので、やはり基本のフォームといえる。しかし、実はロッドアングルを左右に傾斜させ、風や障害物に対処するサイドキャストやバックハンド・キャストのほうが、実際の釣りの場面では使う機会が多いといえるだろう。

特にナチュラルドリフトを必要とする渓流の釣りでは、右岸左岸でサイド、バックハンド・キャストを効果的に使い、ループ面を意識的に傾けたプレゼンテーションが必要になってくる。
そんな場合によく使われているネガティブカーブ・キャストは、展開途中のループをターンオーバーする直前に着水させてU字に近いカーブを形成する方法。そのため、たとえ障害物がなくてもラインを曲げて着水させるためには、ロッドを傾けて振らなければならない。
今回はこの2つのキャストに焦点を当てて、その腕の動かし方のポイントとなる部分を紹介していきたい。
面を傾けるということ
サイドキャストとバックハンド・キャストは傾ける向きこそ異なるが、基本的にはタテのものを、角度を変えて振っているだけ。バックハンドでは利き手と逆の側に面を作るので複雑に捉えられがちだが、基本的な構図としてはどちらも同じなのだ。いずれのキャスティングも、まずは基本的な「アーク」についておさらいしておきたい。アークとは、ロッドを振る際のスタート時のロッドの傾きから、ストップ時の位置までの振り角のこと。ストレートラインパス(SLP)といわれるロッドティップの移動軌跡を直線的にするため、アークをロッドの曲がりに合わせて狭くしたり、広くしたりして、ループの幅を調節する。アークは肘を起点にした底辺が上を向いた二等辺三角形をイメージすると分かりゃすい(イラストA)。前後のロッドの振り幅が左右の辺で、上の辺がロッドティップの軌道だ。これは、サイドでもバックハンドでも変わらない。まずは左右どちらヘロッドを倒しても、アークを意識することで、整ったループが形成しやすくなるということを覚えておこう。

アークを正確にする腕の動きは肘から先、前腕がロッドと同じ方向に向いていると動作が安定する(イラストB)。その際、たとえば肘が身体に付いていると、前腕がバックキャスト時にロッドと同じ方向に傾かず、結果リストの開閉に頼ることになってしまう。するとリストが起点となり、ラインの長さに応じてコントロールしなければならないストロークの自由度か損なわれてしまう(イラストC)。


この部分を理解していれば、肘の位置、そして前腕の向きを変えるだけで、キャスティングの面を正確に保ったまま、自在に傾けることができる。
ちなみに、ショートキャストではアーク全体を前傾させ、ラインが長くなるにつれてSLPを水面と並行にしていくのが基本。比較的ショートレンジを釣ることが多いバックハンドとサイドキャストでは、当然、ループが水面に向かうような形で伸びていくのが理想だ。

肘の位置を意識
まず、バックハンド・キャストでは、傾斜角度に合わせて肘の位置を身体の外側に移動する(イラストD)。ロッドの傾き(=面の傾き)が大きくなるにつれて、肘を外側に移動させると前腕を無理なくロッドと同じ方向に向けることができる。
リストの動きを多用して振るバックハンド・キャスト(イラストE)は、ショートキャストを、限られたスペースで行なう場合には最小の動作で行なえる利点があるが、やはりストロ-クが限られてしまうことから、長いラインの扱いには限界がある。また、何よりも常にキャスティングの面をキープし続けることが難しくなってしまう。そのため、前腕とともにロッドを振るような感覚で投げれば、アーク幅も把握しやすく、面も安定させやすい。

サイドキャストの場合は、キャスティングアングルを利き手側に倒すわけだが、これも、バックハンド・キャスト同様、前腕の向きそのものを傾斜する要領で行なえばよい(イラストF)。ただし、45度くらいの傾きまでは、これまでと閉じ考え方で問題ないが、傾斜が水平近くまで倒れれば、関節の相当柔軟な人でも前腕がバックキャスト方向へ向けられないことが分かるはずだ。

これでは、アークの幅が足りなくなり、テイリングを作る原因となってしまう。こんな場合はストロークの後半でリストを使って必要なアークを稼ぐか、身体を利き手側に開いて前腕がバックキャスト方向に向く体勢を作ると、安定したキャストが可能になる(イラストG)。

いずれのキャストも前腕をロッドと同じ方向へ傾斜させることで、的確なアークと正確な面を作るキャスティングが可能となり、さまざまな角度でループをコントロールできる。そして、その動作を決定付けるのが、いつも“肘の位置”となるわけなのだ。

2017/7/18