スマートに、スプライス
段差をなくすフライラインとリーダーの接続
FlyFisher編集部=写真と文フライラインとリーダーの接合部でコブができてしまうと、ガイドへの引っかかりをはじめ何かしらのストレスにつながる。ネイルノットできれいに結べても多少の段差はできてしまうもの。そんなお悩みを解消するのが「スプライス」という方法だ。
この記事は2012年10月号に掲載されたものを再編集しています。
ライントラブルのもとのひとつに結び目がある。これをできるだけスマートに、できるだけ数を減らすことでトラブルは未然に防げるわけだが、特に気になるのはフライラインとリーダーの接続部分。ここはティペットの絡まりや、リーダーキャストの時、また釣りを始める前にラインを引き出す際など、ガイドへの引っかかりがストレスにつながることは何かと多い。
ここで紹介するのはスプライスという手法だ。ご存じの方もいると思うが、基本的にはラインの中にリーダーのバットを貫通させる接続方法のため、ライン径の違いによる段差を解消できるのが最大のメリット。唯一の出っ張りは結び目だけとなる。ただしこの方法は、ライン先端の径とリーダーのバット径が近すぎると貫通ができなかったり、ラインのコア材によっては不向きなものがあるなど、どんなアイテムでも可能というわけではない。だが先のライントラブル云々や、キャスト時のターン能力をティペットまでしっかり伝えることなどを考えると、積極的に活用したい。ここではそんなスプライスによる接続法を2つ取り上げた。
渓流でオススメの基本形
スプライス+1回結び+瞬間接着剤20フィート以上のロングティペット・リーダーシステムで良型をねらい続ける秋田の名手、渋谷直人さんの方法。スプライス後の結びをラインに食い込ませることで、出っ張りをほとんどなくすのが特徴だ。針に刺したラインがL字型になるようにしっかり押し込んで、抜いたあともそのままの形状でスプライスするのがコツ。
クリッパーの後ろに付いた短い針をフライラインに挿し込み、ラインを折り曲げるようにして針先をラインから突き出す。ラインはL字にクセがつくまでしっかり押し込む
先端が尖るように斜めにクリッパーでカットしたリーダーのバットを、針から引き抜いたフライライン(L字状のままを保っておく)に挿し入れる。この時カットしたバットの長い側が上を向いた状態で行なうとスムーズ
ここでうまくリーダーのバットが入らない場合、または入るが先端が出てこないといった時は、ラインをもう一度クリッパーの針に突き刺し、指でしっかり押し込んで出口となる穴が広がるようにしてから再度トライする
貫通させたリーダーのバットをいくらか引き出し、ラインを1回転で結ぶ。締め込む際は濡らしてからバット側とティペット側を同時に引いてしっかり締め込む
結びコブができるまで①を引っ張り、ある程度コブが小さくなったら②も引っ張って締め込み、最後は口も使って①②③を均等に引いて最後は結び目がラインに食い込むようにする
食い込んだ結び目と、リーダーが出ているラインの先端部に瞬間接着剤を塗布すれば完成。結び目がラインに食い込んでいれば、出っ張りがなくてスムーズ
さらにシンプルな結ばない接続法
スプライス+瞬間接着剤スプライスしたあと、リーダーバットの先端に瞬間接着剤を塗布してフライラインの中に引きいれるだけのシンプルな方法。実践者である福島県の伏見邦幸さんによれば、これでスッポ抜けたことは一度もないとのこと。また50㎝クラスのニジマスを釣ったあとでも問題はなかったと話す。
縫い針をフライラインに挿し入れ、約5mmのところで突き出す。そのまま進めて一度ハリを引き抜いてしまう
一度引き抜いた縫い針を今度は反対側から入れ、後端の穴が残るまで深く挿しこむ。次に縫い針の穴にテーパーリーダーの先端(ティペット側)を通す
そのまま縫い針を引き抜いて、バット付近がラインの中にくるまでテーパーリーダーも引き抜く。ただしこの時は摩擦が強く掛からないようゆっくり行なう
テーパーリーダーをラインからすべて引き抜かないように注意して、リーダーのバットがラインから3㎜ほど突き出た状態にする。次にその突き出た部分に瞬間接着剤を塗布する。このあと塗布した部分をラインの中に引きいれるので、ここから先の作業は素早く行なう
瞬間接着剤を塗布した部分をリーダーの先端側から引っ張り、ラインの中に引き入れてしまう。直後にラインが真っ直ぐになるように指で調整する
さらにラインに作ったテーパーリーダーの出入口部分に瞬間接着剤を塗布して完成。塗り過ぎると接続部分全体が硬くなってしまうので、少量でよい
プラスワン 結び目を被う
スプライスで接続したリーダーとラインの接続は、熱収縮チューブで被うとさらに耐久性が増す。チューブで被う以外には、紫外線硬化樹脂タイプのボンドでも同じように結び目の凸凹を埋めることができる。工程自体も難しいことはない。写真はノットスリーブを使用した例。このほかにも薄地の熱収縮チューブなども効果的
スプライスはラインのコアと径が重要 スプライスはどんなラインでもできるわけではない。コアが単線のモノフィラなどは不可である。しかしコアがブレイデッドであれば、シンキングラインでも可能だ。ただし共通するのは、リーダーのバット径とライン先端の太さのバランス。特に渓流用でよくあるのは、リーダーのバットが太くてラインを通せないケース。市販のテーパーリーダーはメーカーによってバットの太さが違うので、手持ちのラインに合うかどうかを事前に調べるか、カットして対応できる場合はバット側がある程度細くなるまで太い部分を詰めてから使う
凸凹をなくす専用アイテム スプライスには先に紹介した縫い針やクリッパーのほかにも、専用のアイテムが販売されている。安全に確実にできるため、ビギナーはもちろんのこと、スプライスを頻繁に行なう人にもオススメ。写真はスプライス専用ツール「シマザキ・リーダースプライサー」。二つ折りの溝にラインを挿し込み、付属のニードルを使って誰でも簡単にスプライスの作業ができる。ラインの太さに応じて溝も2サイズあり、持ち運びにも便利なコンパクトサイズ
接続部をカバーするための熱収縮チューブはライン径に合ったものを使用する。黄色や赤や黒といった電気作業用のを流用したものが多く市販されているが、「ティムコ・ノットスリーブ」は透明なので被せたあともスマート。2サイズ入っており、ほぼすべての番手をカバーしてくれる
2019/7/25