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UVマテリアル大検証

フライショップのマテリアルにブラックライトを当ててみました

FlyFisher編集部=写真と文

不確定な要素で判断したくない

私の個人的な見解になりますが、たとえばここによく釣れるフライとあまり釣れないフライがあって、どちらも大きさや重さ、カラーなど見た目の差がほとんどなかったとします。こういった場合、よく釣れるほうはマテリアルの動きがよい、透け具合がよいというような、不確実な要素でなんとなく納得しがちです。しかし、たまたま釣れたというのではなければ、そこにもっと確実に差が出る要素があるのではないかと思うのです。それが紫外線によって光る、光らないという点、UVマテリアルに注目し始めたきっかけです。

ただ、同じUVマテリアルを使用していても、釣れる、釣れないの差が出てくるケースもあり、お客さんとの会話でもよく話題になります。正直にいうとまだまだよく分からない部分ですね。

自然界には紫外線によって模様が浮き出る生物がいて、昆虫や甲殻類などが多いといわれています。ほ乳類の中ではタスマニアデビルの目や耳が、紫外線を吸収して光って見えるそうです。人間の目には見えませんが、紫外線を感知できる生き物は、暗闇のわずかな光で見える模様やコントラストの差で、仲間や敵を見分けているのかもしれません。専門家ではないので、推測の域を出ませんが。

仮にUVマテリアルが絶対に効果があるかと問われると、必ずしもそうではないと思います。ただ、紫外線によって光るという要素を取り入れるのは、ごく自然なことだとも思います。そしてUVマテリアルが広まり、使う人が増えたおかげで、釣れるフライパターンを科学的に解明するきっかけになると思います。

 

 

濁りや水深を考えると選択肢は限りない

クリアウオーターがフィルターのない状態だとして、濁っているとフィルターがかかった状態になります。その濁りも緑っぽい色もあれば、茶色もある。濁りではないけれど早朝や夕方の水中は暗くなるし、当然水深によっても変化します。そこでは光って目立つほうがよい、魚が見つけやすいという要素が必ずあるはず。シルエットが明確なほうがよいこともあれば、ぼやけたほうがよいこともあると思いますが、このように考え進めていくと、選択肢が限りなく広がるのが分かります。

これらを理解したうえで、フライを考えたりタイイングを見直したりするのが個人的に非常に楽しいと感じています。同じブルー系統のクラウザーミノーを巻いたとしても、タイヤーが10人いれば、全員同じマテリアルということはまずないでしょう。そして一見よく似ていたとしても、そこに釣れる、釣れないの差が生じた場合、それは別のフライと考えるべきだと思います。その別のフライの理由のひとつとして、紫外線に反応するかしないかがあるのではないでしょうか。何も水中で使うフライだけとは限りません。仮にエルクヘア・カディスであっても、ウイングが光らないようにナチュラルのエルクヘアを使っても、実はボディーのダビング材やハックルが光っていたりすることもあるでしょう。そういったわずかな差も無視できないと思うのです。

 

 

光りすぎるとよくない?

これはUVマテリアルに限った話ではないのですが、よく「光りすぎるとよくない」という意見がありますよね。これには私も同感です。ただ「光るとよくない」ではなく「光りすぎると」というところがミソだと思います。生物蛍光でも生物発光でも、自然界では思いっきり光るわけではないと思うのです。人間から見て、明らかに光って見える状態というのは、もしかすると不自然な光りかたなのかもしれません。

 

 

flyfisher photo

 

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コマーシャルフライのなかにもUVマテリアルを使ったものがある。マラブーを使ったストリーマーやパラシュートフライのポストなどに多い。よく釣れる市販フライがあったら、一度ブラックライトを当てて、チェックしてみると面白い

 

flyfisher photo

 

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ユニスレッドのホワイトとチャートリュースを比較。通常の光ではどちらもマットな色だが、ブラックライトを当てるとチャートリュースのほうが圧倒的に光った

 

flyfisher photo

 

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ゲルスパン(ポリエチレン)のスレッドも比較。左はヴィーヴァス、右がワプシ。どちらも反射光を放ったが、ヴィーヴァスのほうが強く光って見えた

 

 

UVマテリアルの反射光を意識したフライたち

佐藤さんがタイイングしたUVマテリアル・フライを紹介。佐藤さん自身の体験として、増水で濁り始めた川で釣りをていたときUVマテリアルを入れたフライで釣果が変わったと感じたという。また、見た目が同じフライにUVマテリアルを入れたものと、そうでないものを知人に渡して、使ってもらったこともあるそうだ。その知人はUVマテリアルの有無を知らず、先入観なしで使った結果、釣果に明確な差がつくことはなかったとのこと。あくまで一例に過ぎないが、こういった地道な検証が次なるヒントにつながるのだろう。

以下は佐藤さんが実際に巻いたフライたち。通常の光とブラックライトを当てた状態で、見えかたや印象がどのようにが変わるか注目だ。

 

flyfisher photo

 

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ボディーを蛍光グリーンのスレッドで仕上げたエルクヘア・カディス。強い光を反射することでボディーが目立つだけでなく、ハックルの透明感も強調されている

 

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2024/6/20

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最新号 2024年12月号 Early Autumn

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