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海人スタイル奄美

入力の順序でループは変わる

身体の部位ごとに確認するキャステイング

加藤力=解説

《Profile》
加藤力(かとう・つとむ)
1971年生まれ。愛知県名古屋市在住。同市で「フライフィッシングショップ加藤毛ばり店」を営む。FFF公認キャスティングインストラクター。まずループのメカニズムをしっかり理解してもらってから実践に挑む、段階を追ったレッスンに定評がある
●フライフィッシングショップ 加藤毛ばり店 http://www.katokebari.com/
この記事は2012年10月号に掲載されたものを再編集しています。

身体の部分ごとに動きを見直すことによって、修正箇所を判断する


きれいなループを作るために、より遠くへ飛ばすために、自分のフライキャスティングを見直したい。しかし、まずどこから手をつけてよいのか分からないといった人は意外に多いのではないだろうか? そんな時、たとえばキャスティングに必要な、リスト、肘、肩、など個々の部分の動かし方を段階的に見ていくと、修正箇所はぐっと分かりやすくなる。

DVDなどでインストラクターのフォームを見て、上手なキャスティングの全体像を掴むのもよいが、自分の癖を矯正したい場合には、パーツごとに見直してみるのも大切だ。

名古屋市でプロショップを営む加藤力さんは、スクールでビギナーにキャスティングを教える際、ロッドを振るために最小限の動きとなるリストを使ったキャストからスタートするという。

加藤さんがまず頭に入れておいてほしいと話すのは、ロッドティップから出るラインの長さに合わせて、身体の動きを変化させるように意識するということ。出ているラインが短い時はほとんどストロークを取らずに、手首(リスト)を中心に動かしてロッドを振るだけで充分。

しかしラインが長くなり、リストで振ることが限界になると、よりストロークをとるために腕全体を使う必要が出てくる。そして、さらに空中に保持するラインが長くなったら腰の回転と体重移動を行ない、最終的にはダブルホールも利用する。

このようにロングキャストになるほど、身体のさまざまな部分を駆使してラインに力を伝えることが必要になってくる。下の①~④の写真は、徐々にラインを長くした場合のフォームの違いで、飛ばしたい距離が長くなるほど、身体の多くの部位を動かしていることが分かる。その際に注目したいのが、ロッドを持つ腕1本の中でも、力を入れる順番を意識するということ。基本的には、肩、肘、リストの順に、リストに遠いところから順に動かすように心掛ける。腕の関節の中でも最もスピードを与えられるリストを最後に使ったほうが、ロッドをスムーズに加速させやすいからだ。

リストは身体の中で最もコンパクトにスピードをつけてロッドを曲げることができる部分なので、渓流域で手前のポイントをねらう時のように、手首を正しく使うだけでも充分にコントロールされたキャストができる

ラインがやや長くなったら、肘の動きを取り入れたキャストに移る。腕を鞭のように、先端に向かって徐々に加速させるイメージで振る

さらにロッドから出すラインが長くなったら、よりループに力を加えるために体重移動を加えたキャスティングを行なう。フォワードキャストの場合は、後ろ足から徐々に前足、バックキャストに移る際には前足から徐々に後ろ足に重心を移動させて、腕の動きに勢いをつける

最終的にダブルホールが必要になるが、③を抜かしてすぐにダブルホールに移るのが一般的。実践で体重移動が必要な釣り場は少なく、余分な動きは、魚を驚かしてしまうこともある

段階的「ネジレ」チェック


フォームごとに身体の動きを確認していけば、どの部分を修正すべきかが分かりやすい。そのことは特に多くのフライフィッシャーが陥りやすい症状の一つである「ネジレ」の修正にも役立つ。ねじれたフォームでロッドを振ると、ロッドティップが直線的ではなく、3次元的な不安定な動きをしてしまうからだ。すると発生するループも面が崩れて空気抵抗が増え、結果的に飛距離が落ちてしまうことになる。これはロングキャストになればなるほど、つまり身体を動かす部分が多くなるほど、頻繁に発生しやすいミスである。

しかし、伸びていくループを見て、ティップを直線的に動かせていないことが分かっても、どこがねじれているのかということは、直感的に分かりづらい。そんなときこそラインが出ている長さに応じた身体の使い方にならって、初めに手首だけ、次に肘、そして腕全体、腰の回転・・・・・・と、部分ごとにどの段階でねじれが発生しているのかをチェックしてみることが効果的になる。

リストを動かす際に、手首が横向きに開きすぎてしまい、それとともにロッドティップも3次元的に動くことになる。短いラインの状態でロッドを振ってみて、こんな形になっている場合は、まずリストの倒れを修正しよう

腕全体を動かして、長いストロークを取ろうとするときによく起こるネジレが、ロッドが外側に向いてしまうもの。このほか、バックストップの際に逆に内側に傾いている場合もある。このときは腕全体をキャストする方向に対して真っ直ぐに動かすため、グリップを手前に引き付けるようにロッドを振るのがコツ

さらに腰を回転させて勢いをつける際、ロッドを真っ直ぐ動かそうとするあまり、身体をひねりすぎてしまうと、ネジレが発生する。ターゲットからも目を離してしまうので、身体の向きが変わってしまうほど、腕を後方に移動させる必要はない

円弧を描かないように注意

段階のあるキャスティングのフォームで、常に最小にして最大の働きをするリスト。この部分を使ってキャストするのは悪いことではないが、それだけに頼り過ぎてしまうと、ロッドティップが円弧を描くように動きやすくなる。一定量以上のラインを投げる段階では、よりタイトなループを目差すために、前後運動となるストロークも大切な要素。リストは開閉によって、おもにアークをコントロールできるが、ストロークを伸ばすには腕そのものの移動が不可欠になる。そのため、ある程度の距離を求めるならば、必ず肘や腕全体の動きと組み合わせてロッドを振るように練習しよう。


加藤さんはスクールで、まずループの構造をイラストで説明してから、実際にロッドを振ってみる。アークとストロークでループができるメカニズムを理解したうえで練習すれば、自分のキャスティングをセルフチェックしやすくなる

シュートの目安位置をラインにマークする
ロングキャストの練習では、自分がシュートする際に空中で保持する最後のラインの長さを決めておくと、無駄なフォルスキャストでループを乱さずに済む。加藤さんの場合は、13~ 14mのラインをティップから出せばシュートを行なっている。(腰まで浸かったウエーディング時)その場合、ラインに印をつけて置き、それがティップ付近に位置したらシュートする。また、ラインを引いてきたらピックアップする(フォルスキャストを始める)場所にも印をつけておくと効率よくピックアップ、シュートが繰り返せる。

ロングキャストの練習には力強さとコントロール性を併せ持ったVグリップが最適。また、ロッドはビギナーでも扱いやすく、ロングキャストも可能な6番が加藤さんのおすすめ。ラインはWFが望ましく、特に視認性のよいオレンジカラーのロングベリー・タイプがよい

ラインの長さに合わせたフォーム(入力順)で投げることにより、腕の各部分を必要以上力まずとも、スムーズにループを作ることができる。逆に、肘の前に手首を動かしてしまうなど、入力順序を間違えるとループが乱れる原因になる

2019/8/15

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
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最新号 2023年12月号 Early Autumn

【特集】尖ってるドライフライ

今号では、編集部が「面白いな」と感じた渓流用のドライフライのタイイングと考え方を紹介します。取り上げるのは、パラシュートスパイダー、エルクファンタジィ、丹沢スペシャル、マジックバレット、里見パラシュート、ヨッパラ、特殊部隊の7本です。これらを並べてみると、みなさん気にかけているのは、耐久性、浮力の持続性だけでなく、「誘い」であることがわかります。水面の流れより遅く流れる、フライそのものが揺れる、マテリアルが揺れる、などさまざまですが、いわゆるナチュラルドリフト以上の効果を明確にねらっているものがほとんど。来シーズンに向け、ぜひ参考にしてください。
またウォルト&ウィニー・デッティ、ハリー&エルシー・ダービーに関するフライタイイングの歴史、そして、『The Curtis Creek Manifesto』(日本ではご存知、『フライフィッシング教書』として翻訳されています)の作者、シェリン・アンダーソンについても取り上げています。


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