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ささきつりぐ

イワナを釣るための思考法|渋谷直人さんの解説

過去に「イワナは泳ぎたくない魚である」と度々口にしてきた渋谷直人さんにドライフライの流し方や考え方を聞いた。

文と写真=渋谷直人
Profile 渋谷直人(しぶや・なおと)

ガイドも含めてシーズン中120日は川で過ごす。そのテクニックだけでなく状況の観察力、魚を見つける目など山で遊ぶための非常に鋭い感覚を持つ。バンブーロッド・ビルダーでもある。

 

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イワナは泳ぎたくない魚

flyfisher photo

ヤマメとイワナのねらい方の違いはどのように意識していますか?

渋谷 ヤマメは比較的、流心の下流部ですね。一番主たる流れの下からアプローチすることが多いのに対して、イワナは緩流帯、巻き、肩、ヘリ、そういうところが結構メインになってくるので、近いところから確実につぶしていきます。比較的、対岸の奥というのは後回しにしても残っているので、手前を全部つぶしてから対岸をねらったほうがいいと思います。

 

ということは、フライの落とす場所は、ヤマメよりも格段に増える?

渋谷 もちろん。ヤマメの場合は、同じ筋に何回も投じることが多いです。水深があって流れが速い場所だと特にフライに気付いてもらえない可能性がありますから。イワナの場合は、同じ場所に投じるというよりは、もう数cmとか数mm とか、そういう感じで場所をずらして、自分が食うであろうと想定したところに明確に落ちるまで投数をかけるというイメージですね。イワナがなぜ難しい釣りになるかというと、イワナは泳ぎたくない魚だからなんですよ。流れが本当にないようなところに平気でいたりします。「普通に流れで待っていれば、簡単にエサ食えるじゃん」と思うのですが、そうではない。たぶん過去増水したときとかに、いい流れだったところで、水が落ちてもパクパクやっていたりするんですね。水が落ちたことに気付いてないのかな、つて思ってしまいます。

 

状況のいいところに移動したくない、ということなのでしょうか?

渋谷 そうですね。自分がねぐらにしている石の下とか、「自分のリビングはここだ」みたいに決めちゃって動かないんですよ。もちろん虫がバーツと出るような状況になるとアグレッシブに追ってきますが、それ以外のときは、エサが頭の上に来ないとなかなか食いつかない。それが渓流のイワナなんだと思います

 

なるほど。こちらがイワナの真上にフライを落とす必要があるということですね

渋谷 はい。だから、釣り人が「そこにいる」という確信があるなら、まず一番出ると思われるコースを流してみて、「あれ、今日もっと下?奥?手前?」と、ドアをノックするイメージで「今日のイワナさまはどこにいますか?」みたいな感じでフライを落としていきます。もう可能性があるあらゆるところにフライを置いて、生命反応を確認してみる、という感じです

 

場所がちょっとズレると食いにこないことって多々ありますよね

渋谷 ありますあります。とにかく、自分の上までエサが流れつかないと反応しないというのが結構ある気がしますね。状況がちょっとスローだと、それがめちゃくちゃ顕著に出て。それを釣れる人と釣れない人とでは本当、30対l~2 とかになってしまうくらいの差が生じるのがイワナ釣りです。ただし、ゆるいところとなると、その手前とか奥とか、もうあちこちに速い流れもあるわけですよね。それをまたいで釣る形にならざるをえないじゃないですか。それを全部、立ち位置を変えて投げられるならいいですけど、現実的にはそうもいかないですから、同じ場所からボンボン投げて流せるというのが、ティペットが長いということの利点ですね。

 

効率がいいというか

渋谷 そうですね。そして時間がかからない。立ち位置を動かさないことで、まず大体見える範囲で、投げる順番を最初に決めるんです。それでその順番どおりにやりながら数歩、移動をする範囲で、次に見える範囲を釣っていくという感じです。ただ、ちょっと広めの川でそのまま釣り上がっていくのはまた面倒なので、ある立ち位置で釣ったら、一度岸際まで戻って上流へ移動してまた立ち込んでいくほうがいいと思います。

 

コの字型に動いていくと。

渋谷 そのように動くと抜けは少なくなると思います。まあ実際には、長いティペットで正確にフライを落とすこと自体、やっばり難しいですから、ランダム性も含めて、本当に自分が落としたいところに落ちるまで投げたほうがいい、という感じですかね

 

ねらいがずれてしまっても、それもまたよしという。

渋谷 それはそれで「あっ、こっちにいたんだ」ということになることもあるし。ドラッグがかからないのであれば、少しくらいずれて不本意なところにフライが落ちても、流してみていいと思います。

 

 

増水時をイメージする

 

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イワナ。日本でもっとも人気のあるターゲットのひとつであることはいうまでもありません。この愛すべき魚は、思いのほかさまざまな渓流に生息しており、おおらかなようでいて、そのくせしっかり釣ろうとすれば高度なテクニックを要求してきます。さらに彼らの模様や表情には、エゾイワナ、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴギと一般的に分けられている4亜種の枠には収まりきれない、「多様すぎる」といえるほどのバリエーションがあります。今号では全国のフライフィッシャーに呼びかけ、膨大なイワナの写真をご提供いただいた「岩魚曼荼羅」をはじめ、佐藤成史さんによる解説、エキスパートに聞くイワナ釣りのコツや魅力など、「イワナさん、日本にいてくれてありがとう!」と思える企画を詰め込みました。


2023/6/5

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最新号 2024年12月号 Early Autumn

【特集】マスのきもち

朱鞠内湖のイトウ、渓流のヤマメ、イワナ、忍野のニジマス、九頭竜川サクラマス本流のニジマス、中禅寺湖のブラウントラウトなど、それぞれのエキスパートたちに「マスのきもち」についてインタビュー。

色がわかるのか、釣られた記憶はいつ頃忘れるのか、など私たちのターゲットについての習性考察していただきました。

また、特別編として、プロタイヤーの備前貢さんにご自身の経験を、魚類の研究に携わる、棟方有宗さんと高橋宏司さんに科学的な見地から文章をいただいています。

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「タイトループ」セクションでは国内のグラスロッド・メーカーへの工房を取材。製作者たちのこだわりをインタビューしています。


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