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ストリッピングか、リールファイトか

長良川本流、シラメのライズフィッシングを例に、フッキング後のやり取りについて鈴木寿さんが解説します。

鈴木 寿=文、FlyFisher編集部=写真
長良川・相戸のプール。一見フラットな流れだが、大きな底石がなどが沈み、表層の流れにも微妙なヨレが形成されている。百戦錬磨の魚たちはその向こうでライズを繰り返しているのだが・・・・・・

《Profile》
鈴木 寿(すずき・ひさし)1958年生まれ。愛知県名古屋市在住。プロショップ「ワチェット」店主。ソルトから本流まで季節ごとのさまざまなフライフィッシングを楽しむが、渓流シーズンを通じて、長良川のライズフィッシングは欠かせない釣りとなっている
この記事は2014年12月号に掲載されたものを再編集しています。

2014年4月の長良川本流のライズフィッシング。釣り人のフライをかわし続けて立派な魚体になったシラメはフッキング後、まるでスキを付くかのように、予想もしない動きに出た。

明暗を分けた二択

 長良川本流でライズを追いかけているフライフィッシャーなら、誰もが知っている有名プールである相戸のポイント。堰堤によって遮られた流れは、適度な深みと、魚が好む緩やかな流速を保っているので、シーズンを通じてコンスタントにシラメのライズが見られる。解禁から多くの釣り人で賑わっている場所だ。

 私もシーズン初期の長良川の釣りを楽しみにしているひとり。解禁当初は比較的容易に釣ることができる魚も、数ヶ月も経てばたちどころに警戒心を増し、釣り人の立てる位置から釣りにくい、流れの対岸付近に留まってしまう。

 そんなプレッシャーのかかった魚たちが付いているレーンまでの距離は約30m。しかも流心の向こう側の微妙なスポットだ。そんな場所を定位置としてライズを繰り返すようになるので、フライを到達させることすら難しくなる。辛うじて届いたとしても、ドラッグフリーで流すことは・・・・・・さらに難しい。

 長良川の水生昆虫のハッチが最盛期となる、4月中旬から5月初旬にかけて、釣り人の手が出せないところで捕食し続けるシラメたちは、解禁直後と比べて見事な魚体に育っている。風格さえ感じられる姿になっているのだ。私にとって、そんな状況のなか、このポイントで釣るシラメは格別な存在だ。

 2014年の4月最終週。ちょうど休みの日が雨模様だったので、迷わずこのプールを目差した。春の長良川は晴れる日にはほとんど下流から風が吹くのだが、ぐずついた天候になると上流から吹き下ろすことが多い。ダウンストリームでドライフライを送り込む表層の釣りは、上流から吹く風が最適で、例の対岸近くのライズをねらうのに願ってもないチャンスだったのだ。

 プールに到着すると、すでにライズははじまっていた。この日はよほど条件がよかったのか、普段どおり流心の向こう側ではあるものの、若干流れにかかるレーンでライズを繰り返していた。通いなれたポイントだが、いつもと違う展開を目の前にして新鮮な期待感に包まれる。

 頻繁にできる波紋を見ていると、流下している捕食物はかなりの量だということが判断できるが、実際に流れている虫はほとんど見えない。上流の瀬で起こっているはずのフタバコカゲロウのハッチを想定し、#20のCDCスペントパターンを9Xティペットの先に結んだ。そして投げやすい風が吹き、ライズが起きるタイミングを待つ・・・・・・。

細イト、小フックを使うミッジングの釣りでは、大アワセは禁物。ティペットに過分なテンションをかけずに、追いアワセまで含めて確実にフッキングさせる

 すぐにチャンスはやってきた。見るからに大きな(推定35cm)シラメが、口先とそのすぐあとに背ビレを見せる独特なライズフォームで射程距離ギリギリに入ってくる。風は上流からの緩やかな追い風。数回のフォルスキャストから祈るようなプレゼンテーションを試みる。奇跡的にフライがライズレーンに乗った!

 1mも流れないうちに、銀色の魚体が波間に浮上して、水面に張り付くように浮かぶフライを静かに吸い込んだ。

 ここで強いアワセは禁物。魚が沈むと同時にラインにテンションがかかると、カウンター的なショックがティペットに加わってしまう。運よくアワセ切れを免れても、強いテンションを感じたらシラメはたいてい水面近くでローリングしはじめる。大型シラメのローリングに9Xティペットの強度は空しいほど頼りない。

 力を入れすぎない程度にアワセを入れ、シラメが深みに戻っていってから、ラインのテンションを感じつつ数回追いアワセを行なう。

 ・・・・・・ここまでは上手くできたはず。さて、次の2つの選択肢が問題だ。ひとつはリールファイト。もうひとつはストリッピングを続けてランディングに持ち込む方法。

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2024/4/12

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