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週末の激戦区で鍛え抜かれたドライフライ

週末の激戦区で鍛え抜かれたドライフライ

FlyFisher編集部=写真と文
フライ

ハックルスタッカーの視認性を高める

そもそもこのパターンを知ったきっかけは、何だったのでしょうか。

中村 私がフライを始めたころから、今もずっとお世話になっている人がいまして。その方がとにかくすごく釣るのですよ。で、ある時「フライ、何使っているのかな?」って、ちょっと見たらストレートのタイプのフックのハックルスタッカーだったのです。そして、その方と仲良くなっていろいろ教えてもらううちに、このフライの基本的な巻き方を教えてもらい、そこから使い始めました。ただ、その時巻いたフライは渓流に持っていくと見えなかったのですよね。なので、そこからだんだん改良して、今の形になりました。

 

その改良というのは、ポストについてでしょうか。

中村 そうですね。見えるようにポストを立てました。ほかにもソラックスやアブドメンの素材をいろいろ試したのですが、今のものが最終的なパイロットとフライとして、今のところ落ち着いています。あと、カーブドシャンクのフックにしました。やっぱり半沈にして、流れにちゃんと噛むようにしました。アンカーのようになる効果を期待しています。私のリーダーシステムは短いほうなので、すぐドラッグがかかってしまうのです。だから水面に刺さっていれば多少は防げるかなと。

 

ちなみにリーダーシステムはどのようにされていますか。

中村 リーダーが5X、ティペットは6Xで、全長で12フィートくらいです。今は、みなさん結構長く20フィートとかっていう人がいるじゃないですか。私は全然扱えないので、短くても釣れるようにと考えています。それから私のロッド、すごく硬いのですよ。自分としてはファーストアクションがやりやすいですので。うまい人だったら、軟らかいサオでもできるのでしょうけれど、私は「ここに入れてここまで流したい、そこさえドラッグがかからなければ」と思ってティペットとかも短くしてやっているので。それがこのフライとうまくマッチしているのかもしれません。

 

ちなみにフロータントは何をお使いですか。

中村 普通のペースト状のものです。シルバートラウトを使っています。それからイブニングの時だけ、これを塗ったあとにドライシェイクで白くしてよく見えるようにしています。フロータントはポストとハックルだけに塗って、ボディーは完全に沈ませるようにします。

 

 

 

 

渓流はほぼこのフライ

メイフライのような形状ですが、夏も使うそうですね。

中村 基本、まずこれを結びます。で、ほぼそれで終わっちゃいますね。それで釣れなかったら変えるのですけれど、大体反応があるので。サイズも#16でほぼ一択なんです。この通常のサイズを「丹沢スペシャル」と言っていて、あとはちょっとひと回り小さくした「中津スペシャル」があります。フックサイズを#20に落としています。

 

そうすると、そのハックルサイズはどのくらいでしょう。

中村 普通のパラシュートなら#16~18くらいじゃないでしょうか。

 

中村さんのホームグラウンドはプレッシャー高そうですものね。

中村 そうなんです。サンデーアングラーなので、あまり釣れないんです(笑)。ただ、とにかくホームグラウンドの丹沢は人のプレッシャーが高いんです。だいたい先行者がいるし、さっきまで誰かがこのポイントをたたいていたとか……。だからもう本当に最初のころは全然釣れませんでした(笑)。で、それを釣るために、少しずつ改良していって、この形になりました。先行者がいても、だいたいよい結果はでています。「1回の釣行で、絶対ボウズはないように」というコンセプトです。そうできているかどうかは別として(笑)。

 

具体的には、どのように改良してきたのでしょうか。

中村 まず、フックの形ですよね。先ほどもお話ししたように、カーブフックにしました。そしてフックの色です。ほかのメーカーさんではブロンズがあったり、黒のメッキがあったり。別に統計取ったわけではないのですけれど、何種類か作ってみて、いちばん反応がよかったのはやっぱりフラットブラック、つや消し黒、という印象なんです。あとフックのサイズもいろいろ試したのですけれども、プレッシャーが高いので小さめのほうが釣れる傾向があるようですので、#16という形に落ち着きました。

 

とはいえ、でもこのフライ、ハックルの長さが、普通のパラシュートだったらだいたい#12サイズくらいでしょうか。

中村 そうですね。普通のパラシュートだと、そのまま平らなので、その大きさになるのですけれど、これ、前に折っちゃうパターンじゃないですか。だからちょっと大きめにしたほうが存在感は出てくると思います。ただ、あまり密度が高いと反応が悪くなるみたいで、難しいですよね。ハックルの巻き数が今4回転になりましたが、最初はもっとガンガン巻いたのをつくっていたりしたのです。今、フロータントの性能がよくて全然浮いちゃうので、薄めのほうが反応はよいかと思います。

 

ウイングというか、ポストの色はナチュラル系ですよね。それは魚から見える可能性もあるからということでしょうか。

中村 実際それが釣果につながっているかはわからないのですけれど、そうですね。あとは見た目。ナチュラルな色が好きなので、フライボックスを開けたときに、オレンジとかピンクがないほうが個人的にはいいんです。そこは単純に自分の好みですね。あとこのシナモンだったらまだ見えるので。完全に白とかだと逆にちょっと見えにくいんです。

 

エアロドライウィングは1本4束中の1束を使われているという、この細さというのは。

中村 見えるギリギリまでしぼりたいんです。本当はないほうがいい気がするのですけれど、そうすると見えないので。なので、ギリギリまで細く。見えるギリギリまで減らすという感じですかね。

 

 

 

 

みんなが使わないから釣れる?

そもそも、このフライ、なぜ釣れると考えていますか? なぜパラシュートではなくハックルスタッカーなのでしょうか。

中村 なんででしょう(笑)。 多分ハックルが薄く見えるからですかね。ハックルスタッカーのライトパターンが、薄く見えるのがいいのかなっていうのと、あと半沈にすることで警戒心が少しは薄れているからでしょうか。でもこう、真正面から見ると扇型になっているから、流れているとき揺れる感じがするんです。ベターッっと張り付いた感じじゃないので。風とかで多少は揺れるとは思いますね。でも結局、ほかの人が使っていないから、というのが一番の理由じゃないでしょうか。スタンダードでもパラシュートでもない虫っぽさ、別に何かを模して作っていませんが、虫っぽいという感じでしょうか。

 

中村さんの先輩以外で、ハックルスタッカーを使っている人って見たことありますか?

中村 そういえば今のところいないですね(笑)。あ、あと、ちゃんと巻けたときって、流しているとハッチしている虫が寄ってくるのです。

 

そうなんですか?

中村 虫同士、仲間だと感じるのかよくわからないですけれど、そうなると「ああ、これちゃんと巻けているやつだ」って(笑)。

 

虫に認められるっていう(笑)。

中村 よくわかりませんが、なんかそういうことがあると「あ、これよく巻けているな」って。

 

このフライはライズの時にも使うのでしょうか。

中村 ライズの場合はマッチ・ザ・ハッチをちゃんとしている人のほうが絶対釣れるとは思いますが、このフライで一応ライズも釣れています。ただ、そもそもフライボックスにほかのフライが入っていないので。まずこれを結んで、ライズしていたら投げて、桂川や中津川のライズもそれで釣れていますので、まあまあ釣れているのかなと。サイズをもっと小さくしたり、色を変えたりとかはありますけれどね。ライズの時は。

 

ほかにタイイングのコツはありますか。

中村 そうですね。やはりこう、花びらみたいに上向きにするということでしょうか。

 

ハックルの形状がキモ、みたいな。

中村 そうだと思っています。水面より上側に出るように。

 

アブドメンはピーコックのバイオットですが、これにも理由がありますか?

中村 虫っぽいから釣れる、と思っています。それだけなのですけれど(笑)。あまり水を吸わないのでフライの重量が変わらないかな。厳密にはどうなのだろうっていうのはありますけれど。

 

中村さん基本的にタイイングがお好きですよね(笑)。

中村 タイイング、好きです。なんかこう、仕事中とかも考えちゃいますね(笑)。「あれ、こんなパターンイケるんじゃない?」とか。でも今はこの「丹沢スペシャル」ばかり巻いているので、考えるだけですけれど。でもマテリアルは、使わなくてもいろいろと買っちゃいます(笑)。

 

 

タイイング方法をチェック!

 

 

 

 


2025/1/27

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