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アカサカ釣具

渋谷直人さんのキャスティング

ロングティペットを扱うときのロッドは、曲がり続けているイメージが大事なのだ〈東〉

東知憲、渋谷直人=解説 編集部=写真

「基本」とは異なるタイミング感

flyfisher photo

フライキャスティングの基本動作は、振ったサオを止め、ラインが伸びきるまでポーズしてなにもせずに待ち、そこから手を動かしてロッドを曲げ直し、また停止させるという繰り返し。しかしロングティペットを扱うときのロッドは、曲がり続けているイメージが大事なのだ〈東〉

ロングティペットを扱う手の動きのなかに、停止時間はあるんです。ただ、標準よりもとても短い。長いモノをきれいに安定して扱うために、基本を曲げて、タイミングをちょっと変化させているわけです。

湖で遠投のフォルスキャストをするんだったら、ラインが伸びきるまでのポーズの時間って厳密に必要なんですけど、日本の川であれば多分5~8m、長くても10m程度。そのラインがもう伸びきった段階、ないしそのすこし前のタイミングで反対方向への動きを始めてよいと思うんですよね。ラインがターンオーバーする前のティペットは、フライの空気抵抗のおかげで、空中でキレイに張られた状態になっているんです。イヤなスラックもなく安定しているこの状態がとても貴重で、精度のあるプレゼンテーションにはとても大事。一度たるんだものはコントロールを取り戻すのが難しくて、自分のねらったところにいかせられるわけがないんです。

ポーズの間を長く取りすぎちゃうと、サオ先はまっすぐな状態に戻ります。ラインはターンしきって、リーダーとティペットがたるんで波打つ。精密なプレゼンテーションに対してよいことはありません。ただし誤解してほしくないのは、手はぐるんぐるんとつねに動いているというわけではないということ。手は確実にストップし、タイミングを一瞬待つんだけれども、ロッドティップはリーダーとティペットを張らせたまま動き続けています。

 

 

カウンターフレックスで稼ぐティップの移動距離

軟らかいロッドが作る大きな曲がりに対しては、大きな幅の振り角度と長いティップの移動距離を設けないと、軌跡がへこんでループの上側が安定しない、というのは大基本。渋谷さんは、復元の遅さと戦略的な質量配分を盛り込んだ設計のロッドで、ストップ後に発生するはね返り(カウンターフレックス)の移動分もキャストの中に組み込み、コンパクトな動作の中に大きな振り角と長い移動距離を実現している〈東〉

私のサオは、たとえば米国製のスタンダードなフライロッドと比べたら、やっぱり軟らかいです。ドライフライの釣りはドラッグフリーで流したいがために、ティペットを長くしますよね。それをコントロールするには長い引っ張り距離がほしいんですけど、フライはねらったところに落とさなきゃいけないわけだから、腕の動きは小さくまとめたい。コンパクトな動作で、かつ長くサオ先を引っ張ってあげる、というイメージですね。硬いサオだと、曲がりの時間は短いし、止めたあとのバウンドも小さいです。そんなロッドでループをねらった形にするには、ヒジの上下運動を使うか、面をずらすしかないと思っていますが、自然じゃなくなるっていうか、コントロールが難しい。でも僕のサオはそんな必要もないんです。サオとリーダー、ティペット、フライまでの全システムが理想の形を作ってくれる、セミオートマっていう感じ。自分のスタイルで振って、半自動的にそれができる状態っていうのが一番理想ですね。

プレゼンテーションキャストの準備として、バックでリストは思いっきり開いています。ロッドティップは水平より下がるくらいまで来ているかもしれないですけど、ラインには上空に向かうベクトルを与えてあるので、ループはプレゼンテーションする角の反対側、斜め上に向かっていきます。入力、ストップ、ポーズっていうブツ切りじゃなくて、一連の動きの中に重要な要素が一体化して組み込まれちゃってるので、きちんとやるのはたしかに難しく、こじれやすいところじゃないかなと思いますね。

flyfisher photo

バックキャストのストローク終了直前、すでにロッドは減速に入っている状態なので曲がりは減少しつつある

 

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その後ロッドはストレート状態から反対方向へと慣性で曲がり、ティップの向きはほぼ9時方向まで倒れ込む。ここから一瞬の「タメ」のあと、フォワードに移行していく

 

 

 

ストロークの前半にパワーオン

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