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アカサカ釣具

C&Fデザインの工夫

C&Fデザインの代表にフライボックスを製作する過程での工夫や発送などをデザイナー視点で語っていただいた

中根淳一=文と写真 C&Fデザイン=協力
Profile

米ノ井公夫

株式会社西安度エフデザイン、株式会社ヨネノイデザイン代表。これまでオーディオ機器を中心に、家具や日用品、伝統工芸品までデザインしてきたノウハウをフライフィッシング用品へも取り入れてきた。機能と美しさを兼ね備えたC&Fデザインブランド製品すべての意匠を担当しているプロダクトデザイナー

C&Fが米国へ帰ってきた

23年9月下旬に米国ユタ州で開催された、AFFTAコンフルエンスにボ—トボックスが展示されたわけですが、会場での反応はいかがでしたか?

新型ウイルスの影響などで、世界的に物流が滞っていた関係もあってか、会場では「C&Fが帰ってきた!」という雰囲気でした。今回のショーで、フライボックス部門の賞をいただけたことで、世界中のメディアが注目してくれています。特に米国では発売されたばかりの商品ですから、来シーズン皆さんに使っていただくのが楽しみですね。

 

フライ

 

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ベストプロダクト賞のボックス

ユニバーサルフォームシステムを採用した、ボ—トボックスを開発するまでの経緯を教えてください。

フライボックスのフォームを脱着できる、フォームチェンジャーを考えたのは、もう30年くらい前だと思います。これまでは既成品の箱を使って、フライ保管用の大型ボックスを作って販売していました。しかし、防水の大型ケースにどれほどの需要があるのかが未知数だったので、多額の投資が必要な金型の製作に躊躇していました。それでも、米国を中心にボートボックスが普及しはじめたことで、いまならば必要とする釣り人も多いと考え、長年の構想を形にする決断をしました。

難しかったのは、現実的な小売価格で販売するための商品開発です。そこで、1つの金型で成形したパーツを、2つ1組でひっくり返して組み合わるアイデアを思い付きました。本来必要な2つの金型を、1つに集約することで、コストを大幅に削減することができました。だからバックルが両面に付いているんです。現在の形に近い最初の試作は4年ほど前にできていたのですが、そのころ大型の3Dプリンターを使った試作を、無理のない価格でつくつてくれる業者と知り合うことができました。これまでの削りだしでの試作品作りと違い、時間も費用も大幅に融通が利くようになりました。

 

大型のボートボックスにはハンドルが付いているものも多いですね。

ハンドルを付けるかどうかは社内でも議論に上がりました。ハンドル部分にフライは入らないわけですから、私たちはボックス本体を無駄に大きくしてしまう理由になると考えました。本体が大きくなりすぎれば、ポートバッグなどへの収納で不都合が生じます。

 

 

内部にもいくつかの突起や溝などがあるのですが、何に使うものなのでしょうか?

すでに発売されている製品に留まらず、今後の商品展開を見据えて金型をデザインしています。たとえば、新製品として発売予定の大型コンパートメントボックスも、最初から作ることを前提に、仕切りを取り付けるための溝をデザインしてあります。新しい企画に着手するときは、事前にできるかぎりの拡張性を検討しますね。それでも、新しいアイデアが生まれれば、金型を修正することも少なくありません。

 

そのような新しいアイデアは常に考えているのですか?

いつも考えています。でも、1つのものに執着し続けていると考えが偏ってしまい、かえってよくないこともあります。そんな時にはいったん考えるのをやめるようにしています。少し時間をあけることで、次に考えはじめた時に、新たなよいアイデアが思いつくこともあります。

あと、僕は設計段階ではほかの人の意見を聞かないようにしています。頭の中にあるアイデアを言語化したり、2次元の図面で見てもらっても伝わり難いので、それならば試作品を作ってから話をしたほうが、よい意見が聞きだせると思っています。

 

これまでに発売された製品で培ってきたアイデアも、生かされていますか?

たとえば、これまでの商品ではフリップの付け根が固定されていて、180度開いた状態を維持することができません。小型のボックスであれば、片手で持つことがほとんどなので問題にはならないのですが、ボートボックスは大きいですし、置いた状態で使うことが前提です。開いた状態ですべてが見渡せるように、フリップの付け根部分を可動式にすることで、180度開いた状態を維持できる構造を考えました。

ほかにも、ボートボックスだからこその部分として、シリコン製の足を両面で8ヵ所に取り付けました。濡れたボートデッキ上での滑り止めとして機能し、魚を警戒させるガタゴト音も軽減してくれます。開いた状態でも安定して機能することが大切です。

 

サイズはどのように決まっていったのですか?

他社が販売しているボートボックスから、大きく逸脱しないようには配慮しましたが、無駄に大きくすることだけは避けるように意識しました。まずは基準として、1面にLサイズのフォームが3枚入るように考えましたが、検討する途中で、少し大きくすることでSサイズとMサイズの組み合わせで、1面に4枚のフォームが入ることにも気が付いて、最終的なサイズを決定しました。

 

デザイナ—としても釣り人としても、米ノ井さんのアイデアが満載ですね。

製品テストなどはスタッフ(の佐々木岳大さん)をはじめ、お付き合いのあるガイドさんたちからもフィードバックをいただいています。それらをデザイナーとして完璧なものに仕上げていくのは楽しい作業ですよ。そもそも、このC&Fという会社を立ち上げたのは、自分がクライアントになって、好きなように物を作りたかったからですからね。

現時点でデザイナーとしての満足度はどれくらいですか?

70%くらいでしょうか?先ほど話した3Dプリンターもそうですが、常に技術や素材も進化しています。それに合わせてデザインも進化させる必要がありますから、これからも100%満足することはないと思います。

 

まだまだ今後も新しい展開がありそうですね、楽しみにしています。本日はありがとうこざいました。

社内で発表していないものまで含めると、数えきれないほどのアイデアがありますから、これからも楽しみにしていてください。

 

 

 

 

2024/12/5

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