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「筋」を釣る、湖のアメマス

”2尾目以降”を続けて掛けるために

桶屋潤一=解説
湖で運続ヒットするには魚を散らさずに釣ることが第一。回遊する群れの幅を風によってできる湖流の筋で判断し、手前の魚からねらっていく

群れで回遊する阿寒湖のアメマス。その行動と風の状況を把握し、ピンポイントにフライを投げ入れれば、「1投1尾」の可能性もある。
この記事は2012年6月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
桶屋 潤一(おけや・じゅんいち)
1963年生まれ。北海道阿寒郡在住。阿寒湖漁協組合員として、湖のフィールド環境をよりよくするための活動を日々行なっている。フィールドの魚の付き場や状況に精通しており、ガイドとしても活躍中。また、ドライワカサギの釣りのエキスパートとしても知られる。

手前から静かに

「以前、同じ場所に立ち込んだまま、連続20投で20尾ヒットさせたことがあります」と話すのは、阿寒湖漁協の組合員でありでガイドも務める桶屋潤一さん。

湖のウエーディングの釣りで最大のチャンスとなるのは、魚の群れが回遊してきた時だ。とはいえ、ポイントに立って漫然とキャストしていたのでは好機を生かせない。最も基本的なことは「魚を驚かせずに釣り続ける」ということだという。

これには、ポイントへ近づこうと必要以上にウエーディングしてしまい、岸際を回遊してくる群れを知らず知らずのうちに沖へ遠ざけてしまわないようにするといったことも含まれる。また、できるだけラインで水面を荒らさないようにキャスティングすることや、不用意な遠投にも注意。

初めから群れの真ん中を目掛けてキャストすれば、当然魚は驚いて散ってしまうので、必ず手前からねらっていくということを心掛けたい。
”次の魚”を続けて掛けていくためには、ウエーディングでのプレッシャーやフライラインの着水音にも気を遣いたい

群れの幅を把握する

そのうえで桶屋さんは、湖の釣りならではの注目点があると話す。それは回遊する群れの「幅」を見極めるということ。群れの幅が分かれば最も適切な距離をとって魚にアプローチしやすくなり、どこにキャストすればよいのか、より明確になる。

虫がハッチしている時であれば、ライズしている範囲により、ある程度群れの規模を知ることができるが、水中のベイトを捕食している時は、目で実際に確認することが難しい。

そんな状況でキーとなるのが湖面に吹く風である。風が吹くと湖面に「潮目」のような湖流の筋ができ、その筋に沿ってエサが集まってくる。湖面でハッチしている虫はもちろん、水中のプランクトンなども集まりやすいので、ベイトとなるワカサギも寄ってくる。

すると、それらを捕食しようとするアメマスも湖流の筋に沿って移動することになるので、筋の幅=群れの幅と考えることができる。そ
の時の筋は水面が白く泡立ったようになるので肉眼でも確認でき、強い風が吹くほど筋は細くはっきりとなるので、魚の位置がより確認
しやすくなる。
1つの筋(レーン)のねらい方
湖流の筋は岬などにぶつかった場合には、その箇所から徐々に太くなっていく場合が多い。ラインをねらう際には、「X」の場所に立っていれば、①~⑥の番号順のように最初は筋の手前にフライを落とし、その次に筋ギリギリの場所にキャストしていく。
ウエーディング位置から扇状に筋の手前を探っていくのがベストで、筋の中(破線の部分)に投げてしまうと魚を散らすことになる。扇状にポイントを探り終えたら、場所を移動して同じレーンでもほかの場所を探ってみるのもよい。
強い風によりレーンがはっきりするほどチャンスになる一方で、ピンポイントでフライを落とさなければならなくなるため、アキュラシーの高いキャスティングが大切になってくる。


風によってできる湖流の筋は島や岬の角などの場所で発生しやすく、ほとんどの場合、岸と平行になるので、釣り人から見ればレーンを横からねらうことになる。その際は基本的に手前の魚から釣っていくことになるのだが、筋の3mほど手前の場所でもやる気のある魚であれば充分に反応してくれる。

大切なのは手前で反応させるこのアプローチを利用して連続ヒットにつなげることで、いきなり筋の上にフライを投げ入れてしまうと、2尾目以降のヒットはなかなか続かなくなってしまう可能性が高い。

その後は同じレーンでも場所をずらしながらキャストを繰り返していくが、基本的には自分の立っている位置からねらえる範囲を扇状に探り、それを終えたら場所を動いて再び同じように探っていく。

筋は1本だけではない

桶屋さんによれば、風が強い場合ほど湖流の筋は何本もできやすいという。この場合、筋と筋の間隔は必ずしも一定ではなく、それぞれの筋ごとに魚のレーンができていると考えてよい。

その場合は最も手前の筋を探り終えたら、それをまたいで次のレーンにキャストすることになる。いきなり沖のレーンを探ってしまうと、やはり手前の魚を驚かせてしまうことになるので、自分がウエーディングしている位置からで構わないので、手前の筋をしっかりと探り終えてから沖のレーンにポイントを移していきたい。
筋は複数できる
湖流の筋は、島や岬などの風がぶつかりやすい地形で発生しやすい。「X」の場所でウエーディングしていれば、複数のレーンを手前から順番にねらっていける。その際も扇状に①~⑨の順番に手前の筋から釣っていく。この時、1ヵ所のポイントをねらう際にも、できるだけ筋の手前から探るのがベストだ。もちろんキャスティングレンジ外にも筋はできるが、無理な遠投をして場を荒らしてしまうのはNG。


桶屋さんは、その際も扇状にフライを落とすポイントを広げていくという。このほか、あらかじめ湖流の発生する場所で魚の回遊を待つことは、よい結果を出すうえでも大きな要素。その際、群れがどの方向から入ってくるのかを知っておくことも釣りを有利に進めるポイントになる。

魚は湖流の方向(=風が吹く方向)に逆らって泳ぐ習性があるということを頭に入れておけば、群れが進む方向を予測することができる。一方、ハッチの釣りの場合はライズフォームの向きでも判断することができる。

ちなみに、居付きの魚をねらう場合にも同じことが言えると桶屋さんは話す。特に阿寒湖に多い岩盤底のスリットには多くのアメマスが付いていることが多い。

こういったポイントを釣る際にも、必要以上のウエーディングは行なわず、奥に投げてポイント全体をトレ—スするように探るのではなく、手前端から徐々にねらっていくのがベストだ。

2018/5/30

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