ベストマッチの威力

川の状況を読む、フライセレクト術

渋谷 直人=文・写真
魚の反応がいまいち悪い時、疑うべきは何なのか。そんな時に結び替えるフライのローテーションを秋田の名手に聞いた。

この記事は2011年8月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
しぶや・なおと
1971 年生まれ。秋田県湯沢市在住のバンブーロッドビルダー。ドライフライを使った渓流の釣りを得意とし、渓流はもちろん本流域にもフィールドを広げ、良型のヤマメを追い続けている。

そろそろ渓流域のブラインドフィッシングが最盛期を迎えるが、それはそれで絶好調に釣りまくるのは意外に難しいものである。理由は釣り方にもあるが、フライパターンも実は影響してくる。フライのベストマッチ感というものを感じることができるかどうか、渓流でよく釣る人は例外なくこの点を大切にしている。では、フライ交換はどのような時に必要になるかを考えてみたい。


①ライズしている魚がフライに出ない。
②絶対にいると確信したポイントで反応がない。
③フライに反応するが、アワセ損ないが多い。
④スムーズに釣れたが、ストマックを確認してみるとパターンとの相違があった。
⑤ドリフトやアワセのミスによってフライが見切られた。
⑥よい状態と見てとれる川でフライへの反応が少ない。

ざっと考えると、このようなシチュエーションが想像できるが、すべてはスムーズな釣りが成立しない場合に、フライ交換が必要となる。上手な人は、その変化に即座に対応して別の選択を開始するが、経験の乏しいうちは、フライが悪いのか、釣り方が悪いのか、あるいは川自体が悪いのか、その判断がどうしても難しくなってしまう。

そのためフライ交換のタイミングがつかめず、負の連鎖に陥り、魚との出会いを少なくしてしまうようである。できることなら、少しでも上手な方と同行するのが望ましいが、それがかなわない方も多いと思うので、解決の糸口を探ってみたいと思う。

<①の場合>
まずは魚が何を食べているのかを、観察することが重要だ。目の前の流れに何が流下しているのか? 何が飛んでいるのかを確認しつつ、ライズが派手か、静かなのかで水面への絡み方を考える。当然、派手であれば水面上の動きのある虫、静かであれば張り付いているか半沈みの虫を捕食している可能性が高い。ただし、まれに大ものの場合は、モンカゲやヒゲナガですら静かに押さえ込むライズを見せることもある。そのようなことを考慮してその捕食物に近いフライに替えなければならない。

<②の場合>
この場合はライズしていないことを前提に考える。その時期に最も反応がよいはずのパターンを真っ先に流してみて、数投流した後にフライをチェンジする。この場合は浮き方やシルエットが違うパターンに替えるのが有効で、パラシュートからソラックスやカディス、その後、半沈みパターンなど(その反対も有効)で、サイズは変えずにチェンジするのが有効である場合が多い。

<③の場合>
ニアミスのフライであったり、魚のスイッチが入りすぎて何にでも反応したりする場合がある。これも周囲をよく観察して、これだと思える1本にたどり着くまでチェンジする必要がある。それによって10尾釣れるところが50尾に変わったりもするのだから、真剣に取り組む価値があると思う。虫が判明している場合は、同じ虫のパターンのバリエーションを持っているとよい。なるべくなら重要種のフライは3種類くらい持つように心がけると、ベストマッチまでたどり着ける。これはプレゼンテーションをミスした時に魚の目先を変えるフライチェンジも可能にする。

<④の場合>
フライをそのまま使い続けることをおすすめする。人間が考えるマッチと魚が捕食のトリガーとする部分が違うために起こりうる現象で、最終判断は釣れるか釣れないかにかかっているので、釣れているなら問題なしと考えるべきである。逆にそのトリガーを考察して、新パターンを開発するきっかけにできるかもしれない。虫を観察してパターンを考えるのが王道と思っている方も多いと思うが、私はそのようには考えていない。釣れたパターンのどこに魚はそそられたのかを常に考え、それを強調したパターンを使いたいと思っている。

<⑤の場合> 3の項でも少し触れたが、パターンは合っているのに自分のミスにより警戒させてしまうことも少なからずある。そのときは魚の目先を変える必要があるため、水面への接し方やライトパターンに変化をつける。同じ虫に執着して食べている場合は、パラシュート→CDCソラックスやカディス→半沈み→スペントといった流れで試してみるとよい(順不同)。何でも食べていそうな場合は、サイズの大小も絡めるとさらに効果が得られると思う。そのためには、一度食べそこなったら交換するくらいでないとフライ自体にスレてしまう。

<⑥の場合>
こんな場合は大きく考えたほうがよい。メイフライパターンを使っていて反応がない場合はテレストリアル系に変更。水面上に浮かぶフライを使っていたら半沈みに変更。#10前後を使っていたら#18前後に変更。ダーク系でダメならクリーム系に変更など、大きく変えながら反応を確認していく必要がある。虫が流下していてライズも見えずフライにも出ないなら、魚が少ないか、ドライフライで釣りにならないことも考えられるので、その場合は釣り場を変更するよりない。
フライがマッチしたとたんに入れ食いモードに。通り一遍等の考えでは決してたどり着けない結果だった

渓流釣りでは、フライの威力は信頼すべきだと常に考えている。最後に魚との接点となるのはフライであり、フックであるわけだから、それらの選択で劇的に釣果を伸ばすことも充分考えられる。それを考えるのがフライフィッシングの醍醐味でもあり、奥の深い楽しみな要素でもある。

最近のことだが、こんなことがあった。雪代明けの奥羽山脈系の川でのこと。同行者と朝川に入ったらエルモンとヒメヒラタカゲロウが相当数ハッチしていて、私は迷わずクリーム色のイマージャーを結んだ。ところが好ポイントと思える数ヵ所を流しても無反応。

水温も8℃ほどで、雪代もまだ治まりかけということもあり、ドライフライには出ないのかと思ったら同行者がいきなりの尺イワナである。真っ先にフライを尋ねたらピーコックパラシュートとのこと……。腑に落ちないまま、次のポイントではようやくライズを発見!

私はそのままのフライを投じたが、10回流して無視。どうにか偶然のアワセで9寸ほどのヤマメを釣ったが、慌てて胃内容物を見た。そこで出てきたのは、それまでまったく見かけなかったオオクマのスピナーがビッシリ。少し上流でスピナーの大量流下が起きていたのである。そこからは爆釣のスタートである。#13パラシュートスピナーで、あらゆるポイントからイワナが食いついてくる。

まさにベストマッチで35㎝のイワナは釣れるし、同行者も31㎝を2尾(数はトータル60尾ほど)なのだから3時間ほどの釣果としては素晴らしいものであった。飛んでいる虫と流下している虫の違った面白い釣りであった。

2017/7/21

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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