稲見一郎さんのシーバス用ラインシステム
名手は何を気にしてどのようにラインを組んでいるのだろうか。ここでは稲見一郎さんのシーバス用ラインシステムをご紹介します
写真と文=稲見一郎
大型フライは短かく太く、スタンダードはシンプルに
東京湾でボートからシーバスをねらうようになって20 年以上経つが、使うフライが増えていき、サイズもさまざまに変化してきた。わずか1㎝ほどの小さいフライを使うこともあれば、約25cmもある大きなものまで私は使っている。そのため、リーダーシステムといっても一括りにできないのが実状だ。今回は大きいフライ(13cm以上)用と小さいフライ(13cm以下)用のシステムに分けて書いていこう。
ご承知のとおり、フライは大きく重くなるほど、その空気抵抗と自重で投げにくくなる。通常であればリーダーは、フライラインから伝わるエネルギーを減衰してソフトに落とす役割を果たしているが、大きなフライを投げる場合は、逆にそのエネルギーを損なわないように考えてやればよい。つまり短かいリーダーほど大きくて重いフライフライが投げやすくなるのだ。
下の図で紹介しているのは、全長が25cmにもなるビーストやゲームチェンジャーといった大型ストリーマー用と秋に使うコノシロを意識したフローティングストリーマー用だ。どちらも現在進行形で改良を重ね続けているので、何年か後には変わっているかもしれないが、現時点では最適なものだと自負している。
大きなフライであってもターンオーバーさせるためには、リーダーが太いほうが有利なわけだが、太すぎると食わないのでは?と考える人もいるかもしれない。しかし、大きなフライを投げる場合、リーダーが細すぎるとフライの空気抵抗に負けて縮れたり、絡みやすくなる。また、細いとシーバスをヒットさせても障害物などに擦れて簡単に切れてしまう。要は何ごともバランスが重要であり、フライをねらった場所へトラブルなく投げるための長さと太さのバランスを考えてシステムを組むとよいだろう。
次に13cmより小さいサイズのフライで使うリーダーシステムについて書こう。一般的にはこちらがスタンダードなシステムになる。特に難しいところはなく、フライラインの先に市販のリーダーをつけるだけなので、初心者にも理解しやすいだろう。私が店で説明する際も、なるべく簡単にできるものを勧めている。これから始めようとする人に、ラインシステムは難しいと敬遠してほしくないと思っているからだ。
また、シンプルなラインシステムは、トラブルが少なく使いやすい。「無事之名馬」という格言があるが、トラブルレス=優れたラインシステムといえるだろう。もう少しステップアップして、自分なりのラインシステムを考えるとしたら、全長が9フィートくらいで先端が16Lb前後という具合に、大まかなスペックを決めて何種類か試してみるとよいだろう
東京湾のシーバス用ラインシステム(大型フライ)
ロッド・ウインストン ボロンⅡMX 9ft#12
リール
・ティボー ガルフストリーム
バッキングライン
・SA バッキング30Lbを150yd
フライライン
・エアフロ ビッグゲーム400grainもしくはエアフロ トロピックパンチWF12F
コントロールライン(リーダー)
・バリバス レコードマスターSW 80Lbを90~120cm
クラスティペット
・シーガーフロロカーボン20Lb、40~45cm
ショックティペット
・バリバス オーシャンレコードショックリーダー40~60Lbを28cm以下
ノット
・バッキングラインとフライライン
バッキングラインの先端はビミニツイストでループを作り、ループ・トゥ・ループでフライラインと接続する
・フライラインとコントロールライン
コントロールラインのバット側はパーフェクションループ・ノットにして、ループ・トゥ・ループでフライラインと接続する。フライライン側は最初からあるループを使う
・コントロールラインとクラスティペット
コントロールリーダーの先端はパーフェクションループ・ノット。クラスティペットはビミニツイストでダブルラインにして、ループ・トゥ・ループで接続
(IGFAルールに則って、コントロールライン、クラスティペット、ショックティペットの合計長を7ft以内にする)クラスティペットとショックティペットの接続は、オルブライトノット&ユニノット。フライの接続はパーフェクションループ・ノット
東京湾のシーバス用ラインシステム(コノシロパターン)
※以下の本誌からもご覧いただけます
書影をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします。FlyFisher2021年Mid Summer
【特集】名手たちのリーダー&ラインシステム図鑑 渓流、本流、湖、ソルト、温水。47人の工夫とこだわり。
この釣りではとかくフライパターンに注目が集まりがちですが、フライを魚に届けるためのリーダー、ラインシステムも非常に大切な要素です。同じ対象魚をねらうのでも、フィールドが違えばフライと釣り方が違います。そしておのずとラインシステムも変わります。特に対象魚のバリエーションが広がり続ける中、名手たちの現時点でのシステムを整理してみました。ほか、朱鞠内湖のイトウの魅力、そして’マッドサイエンティスト’、ゲーリー・ラフォンテーンの名著『The Dry Fly』の第1章を掲載しています。
2023/6/15