自在の6ピース
正直、6ピースのロッドは「サブ・予備・特殊」といったイメージがある。しかし里見さんは「予備という意識はまったくありません」と言い切る
里見栄正=解説、編集部=文と写真──これまでのシリーズでもそうですが、6 ピ—スは常にラインナップされている印象です。
里見 そうですね。今までの6 ピースも含めてアクション的には問題ないというか、非常に使いやすいものができるというのはわかっていましたし、ユーザーの方々からも、やはり6 ピースを望まれる声が少なくないんですよね。僕個人としても、アスキスの中でも6 ピースを作って使いたいという思いがありました
──前シリ—ズであるフリーストーン時代、最初に6 ピースを出したのはどういうコンセプトだったのですか?
里見 あの頃、2000 年くらいだったと思うのですが、4 ピースが出始めで、まだ2 ピースが圧倒的に多かった時代だったんです。ですが当然6 ピースだと、車の中に放り込むとか、非常に収まりがいい。携行にはメリットがたくさんあったのですが、ただ、アクション的にどうなんだ、という疑問は当然ありました。ですが結果的には非常によいものができたと思っています。SCL というシリーズはほとんど6 ピース構成にしていました。
使用したのはアスキスJ782P(7フィート8インチ#2-3)。フリーストーン時代から続く6ピースは評価も高く、もはやシマノの伝統といってもよいかもしれない。独自技術の「アクティブフェルール」は全体のアクションに好影響を与えるだけでなく、吸着性も高い
──6ピ—スというと、当然フェル—ルの数が多くなるわけですが、そのあたりの障害のようなものはなかったのでしょうか?
里見 障害というか……、実際に作ってみてフェルールがアクションを妨げるという発想は間違いだったと思い知りました。逆にフェルールのないワンピース・ロッドのほうが意図するアクションを出すのが難しいと感じています。ピースを刻んだほうが、パーツごとにアクションを調節できるので全体としてまとめやすいんですね。今回のモデルもそうですが、それぞれのピースごとに索材の特性なども変えていまして、そういう要素を組み合わせていけばむしろ、こちらが意図するアクションを作りやすいんです。またロッドには逆に曲がってほしくない箇所もありますから、そういう部分にフェルールを利用するというか。フェルールに関しては、シマノのフェルール、「アクティブフェルール」と呼ばれていますが、非常に特徴的で、よく曲がってくれるというか、途中でアクションを妨げてしまわないような設計になっています。中空のスピゴットタイプのフェルールで非常によく働いてくれますね。これは4 ピースでも同じ構造のものが使われていますが、繋ぎを多くしたために、よりキャスティングフィールがスムーズになった感じもありますよね。最初は僕も、どこかで半信半疑だったのですが、仕上がりがあまりにもよくできているのでびっくりしたのを覚えています。
普段の里見さんのイメージにはない、バックパック姿で軽快に歩く。「ベースバックパック20L」に「ストリームメッシュベスト」を組み合わせて使用。「あまり使う気はなかったのですが、友人に強く勧められて(笑)。近年の猛暑で多めにドリンクを持ちたい場合にも重宝しますし、使い勝手は非常によいですね」
──4ピースと6ピースではアクションの感触は変わらないのですか
里見 あまり……、いや、ほとんど変わらないと思います。使っていてこれは4ピースだな、とか6 ピースだなとかまったくわからないと思いますよ。もちろん全体の長さによる違いは感じます。でもそれ以外はなにも違いは感じないですね
捻ったり、跳ね上げたり、急に角度を変えたり、回したり……。里見さんの釣りは普通の人よりもロッドに負担をかけるように見受けられる。それでも5つのフェルールは全く問題なく里見さんの要求に応え、酷使に耐える
──使っているうちにフェルールが抜けてしまうというトラブルはありませんか?
里見 そういう話はほとんどないですよね。シマノさん、そういうところは本当に厳しいですから(笑)。まあ一応注意していただくに越したことはないですが、それほど心配する必要はないと思います。フェルール自体がよく曲がるので、オスとメスがしつかり摩擦を維持している、という気はします。ある程度硬いもの同士だと緩みやすくなるのかもしれません。
全体的に平坦な流れの中で、ここぞというところでフライをくわえた良型
──7フィ—卜8インチという長さに関してはいかがですか?
里見 アスキスですと、4ピースだと8フィートがあって、7フィート6インチがあってということなので、メインロッドとしてその中問に設定しました。本当に携行だけを追い求めたらもう少し短くてもよかったと思うんですが、これはあくまでもパックというか、予備というイメージではなくて、やっぱりメインロッドとして使いたかったので、だいたいそのくらいかなという感じですよね。何度も繰り返して申し訳ないですけど、6ピースとはいえ、あくまでもメインで使うロッドとして作っていますから(笑)。
もう何度も誌面で紹介しているが、里見さんのパラシュートはハックルが分厚い。浮力、空気抵抗、水面への引っ掛かりなどが考慮された構造。組み合わせるフロータントはギンク一択
※以下の本誌からもご覧いただけます
書影をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします。FlyFisher 2022年12月号 Mid Autumn
【特集】フライフィッシングの格好。
みなさんは普段、どんな「格好」で釣りをしているのでしょうか? 誰も見ていない渓流で、「格好」を気にする必要があるのでしょうか? 今号ではおしゃれにこだわるフライフィッシャーにお願いして、彼らのコーディテートと考え方をお聞きしました。そこには、(おそらく)フライフィッシングならではの矜恃と美学がありました。 来シーズンの渓流コーディネートの参考のため、奥深さの再確認のため、さまざまな視点でお楽しみください。また、昨今のタイイング用UVレジンの発展には目を見張るものがあります。トラウト向け、ソルトウオーター向けと2大ジャンルでの使い方を紹介しています。釣り場作りに目を向ければ、愛知県・寒狭川中部漁協と宮城県・鳴子漁協の組合長へのインタビューも掲載しています。お二方とも釣り人は「お客様」と言い切り、よりよい「サービス」を提供するために奮闘されています。
2023/6/21