LOGIN
アカサカ釣具

ガンガンの瀬はあえてゆっくり流す

スロードリフトで攻略する

板谷和彦=解説
一見するとドライフライの釣りが不可能なところでも、底石付近の流速に合わせたドリフトを行なうと、チャンスを広げられることがある

「でかいヤツは、強い流れの下にいる」石川県在住の板谷さんは、表層付近の流れより、底石近くの流速に重きをおき、一見するとドライフライでは太刀打ちできないような速い流れをスロードリフトで攻略する。

この記事は2012年8月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
板谷 和彦(いたや・かずひこ)
1969年生まれ。石川県金沢市在住。解禁直後は岐阜県蒲田川でのマッチング・ザ・ハッチの釣りを楽しみ、その後は地元の川を中心に本流でのヤマメ釣りを楽しむ。初夏以降は北陸の渓を中心に岐阜県や長野県まで足を伸ばす

ドリフトスピードで変わる良型の反応


私がねらうのは中流~本流の比較的規模の大きな流れがメイン。地元石川県の手取川を中心に、岐阜県の高原川や宮川、庄川といったフィールドである。これらの川はみなヤマメの生育がよく、シーズンを通して数も安定している。また、同じエリアに大小さまざまなサイズが混棲しており、いちばんよい(強い)流れにも大ものが入っていることが多いので、効率よく大ものをねらうことができる。

いくつかの流れが合わさって流下物が集められているラインに良型は付く。底石が入っていたり、別方向から流れがぶつかっていたり、何かしらの変化がある場所だ。具体的に言えば底石の入った流心脇の比較的水面がフラットなところや、ガンガン瀬の中にスポット的にできた緩流帯などである。

そういった場所をドライフライの流し方を変えて、底石付近にいる良型ヤマメの捕食スイッチを入れ、フライに反応させるという釣りである。たとえば、アップ&アクロスで流したけれど反応がなく、ポイントを過ぎたあとにやっぱり気になってダウン&アクロスで流してみたら釣れた、そんな経験を重ねるうちに、フライを流すスピードによって違いがあるのではと思うようになった。

水面の流速と同じスピードでフライを流す、いわゆるドラッグフリー状態がドリフト速度としては最速になる。そこから水面に置いたラインやリーダーをアンカーがわりにして、スピードダウン(スロードリフト)させていく。どの程度遅くするかは、川によっても、またその日の状況、季節や時間帯によっても違うので、良型がどのドリフト速度に反応するかを意識しながらの釣りだ。つまり、流す距離ではなくて、ポイントを通過する時間をどの程度調整できるかが、カギとなる。

流す筋でも距離でもなく、時間を変えることで大ものの反応をみる。そのためには立つ位置とラインの置き方を考えてフライのドリフトスピードを調整する。その日の状況に合わせて、実際の流速よりもどれだけ遅くするかがカギとなる

水面の流速に捉われない


ガンガン瀬の流心脇や、瀬の中に点在する底石の入った緩流帯を流す際、実際にはドライフライで流すには速すぎるような流れでも反応を得られる。あくまでも魚がいる底付近の流速に合わせるイメージなので、水面のスピードにあまり捉われないようにしたい。

魚のいる層の流速をイメージする

フライを流すスピード調整は、ポジション取りで変化を付けることが多い。下流側からストレートラインで投げればドラッグフリー(最速)、同じく下流側から逆U字にすればドラッグフリーからややブレーキがかかった状態。サイドの位置からカーブキャストでL字にすれば、強めのブレーキがかかった状態にできる。そして上流側からストレートラインで流せば、いつでもブレーキを掛けることができ、ポイント上でフライをステイさせることも可能だ。さらにメンディングをこれらに組み合わせれば、多くのバリエーションを持たせることができる。また、多かれ少なかれフライにブレーキが掛かっている状態では、ロッドやラインの操作によって、上流側にフライを逆引きしたり、ポイントの上で一瞬止めたりすることも可能で、風にあおられてイレギュラーに動く虫っぽさを演出することもできる。

しっかりとフライがレーンをとらえ、警戒させることなく尺ヤマメの捕食スイッチを入れることができれば、静かに浮いて、吸い込むように出てくれるので、フッキングも成功しやすく、その後のやりとりも安心だ。ねらったレーンからフライが外れ、ドラッグが掛かった時にヤマメが反応してしまうと追い食いするかたちとなってヒット率は下がり、掛かったとしてもバレやすいので、極力レーンから外さないようにしたい。

フライはその時期に出ている大きめの虫がよい。フックサイズでいうなら#8~10。春ならスティミュレーター、ヘアウィング・ダン、夏ならエルクヘア・カディス、秋はホッパーなど。これらをベースに、ブレーキが掛かった時に水面下にフライが潜りこまないよう、意識して使っている。

フライサイズは細かな流れの影響を受けにくくする意味で、ノーマルのシャンクなら#8~10、ロングシャンクだと#12を標準的な大きさとしている。ウイングを立ち上げるようにして沈みにくく、視認性の高いものにしている。軽さと強度を兼ね備えたフライがこの釣りには必要。左/スティミュレーター(改)、右/ヘアウィング・ダン(改)マダラVer.

底石付近の流速に合わせたスロードリフトで手にした尺ヤマメ。北陸は水量の増える6月初~中旬が盛期だ

2019/6/5

つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
アカサカ釣具
つり人社の刊行物
初歩からのフライタイイング
初歩からのフライタイイング 2,750円(税込) A4変型判148ページ
本書は、これからフライタイイングを始めようとする人に向けた入門書です。 解説と実演は、初心者の方へのレクチャー経験が豊富な、東京のフライショップ「ハーミット」店主の稲見一郎さんにお願いしました。 掲載したフライパターンは、タイイングの基礎が…
アカサカ釣具

最新号 2023年12月号 Early Autumn

【特集】尖ってるドライフライ

今号では、編集部が「面白いな」と感じた渓流用のドライフライのタイイングと考え方を紹介します。取り上げるのは、パラシュートスパイダー、エルクファンタジィ、丹沢スペシャル、マジックバレット、里見パラシュート、ヨッパラ、特殊部隊の7本です。これらを並べてみると、みなさん気にかけているのは、耐久性、浮力の持続性だけでなく、「誘い」であることがわかります。水面の流れより遅く流れる、フライそのものが揺れる、マテリアルが揺れる、などさまざまですが、いわゆるナチュラルドリフト以上の効果を明確にねらっているものがほとんど。来シーズンに向け、ぜひ参考にしてください。
またウォルト&ウィニー・デッティ、ハリー&エルシー・ダービーに関するフライタイイングの歴史、そして、『The Curtis Creek Manifesto』(日本ではご存知、『フライフィッシング教書』として翻訳されています)の作者、シェリン・アンダーソンについても取り上げています。


Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

 

NOW LOADING