南の島のトレバリー
フライロッド片手に沖縄のフラットへ
正木 充= 文・写真トレバリーのフライフィッシングの概要
数年前から沖縄の島々に釣行するようになった。その理由はトレバリーのフライフィッシングを楽しみたいからだ。主にねらっているのはカスミアジとオニヒラアジ。それ以外にも南国特有の魚たちが何種類も釣れてくれ、かなり楽しい。トレバリーのシーズンとしては、真冬以外はいつでも釣れそうな気がするが、今のところ釣果があったのは4月から10月の間である。
釣り方はサイトフィッシングが基本で、魚を見つけてはキャストしていき、ボイルがあればそれを撃ち、何もなければブラインドで釣っていくというスタイル。タックルは#8と#9の2本立てで、状況に応じて使い分けている。
フライロッドは、強い風や大ものにも対応できるファーストアクションでバットパワーの強いものを準備したい。実際に使っているのはセージやG-ルーミスのソルトモデルで、今年はさらに新たなロッドを使ってみようと思っている。これらのほかにも、信頼できるブランドのソルトモデルを選べば間違いはないだろう。リールはドラッグ性能がよく、バッキングラインが200m以上巻けるもので、エーベルやハッチ、ノーチラス、アイランダーなどを使っている。ロッドとリールのどちらにも共通することだが、遠征釣行では壊れにくいことがもっとも重要かもしれない。ロッド・リールともに予備も含めて2セット持って行っている。
使用するフライラインはサイトフィッシングの場合、フローティングラインまたは先端の数mだけがクリアーインターミディエイトになっているものを使い、ブラインドで沈めて釣る時のためにシンキングラインも持って行くことがある。リーダーシステムは、ポイントや水深によって工夫することもあるが、シンプルに市販の03X(約20ポンド)のテーパーリーダー、9フィートの直結で通してしまうことも多い。
フライは甲殻類を模したパターンを使うことが多く、小魚へのボイル用にミノーパターンも用意している。ただ、トレバリーは動きが速いため、発見してからフライを交換するのはまず無理。そこでひとつのフライで甲殻類と小魚を両方表現できるフライを作るよう心がけている。
ここからは写真とともに釣れた魚たちを説明しよう
潮位が高くサイトフィッシングでは魚が見つけられない状況だったので、魚がいそうな場所をエンジェルスライダーで探っていたところ「バシュッ。」と出て一発でヒット。この時点で一番いいサイズのトレバリーだったためいったん岸まで戻ってちゃんとした写真を撮ろうかとも思ったが、このあと先のポイントがいい潮位になりそうだったのでウェーディングしたままで写真を数枚撮って次のポイントへ急いだ。結果的にはその後のチャンスはなかったが……
リーフのフラットを歩いていて、振り返ったらこちらに泳いでくる魚を発見した。タイミングと風向きのためバックシュートになったが、うまくキャストが決まりヒットさせることができた。結構走られたので一時はリーフエッジの外側までもっていかれたが、なんとか無事にランディング。フライはマンティスゾンカー
潮位がかなり下がった日、リーフフラットを長時間歩き続けてやっと見つけた魚。セットしていたクラウザーミノーをキャストすると1投目でヒット。ファーストランで結構走られたが、近くにサンゴの根が点在するポイントだったため、その後はドラグをいつもより締めてあまり走らせないファイトをした。後で分かったことだが、フックが少し開いていたのでもう少しでバラすところだったのかもしれない
ほぼ干上がったリーフを歩いていた時、「パシャッ。」っと音が聞こえてきた。最初はどこか分らず「ボイル?」と静かにしていると、もう一回やったので今度は場所がわかり青い魚が見えた。ダンベルアイのクラウザーミノーをセットしていたが、時間があると考えてチェーンボールアイのポーラーチャーリーに付け替えてキャスト。フライチェンジ中にも数回音が聞こえていたので1投目できそうなものだったがなぜか数投目でやっと反応した
岸からリーフエッジが近いポイントに来るとやや沖めの鳥の下でボイルが起こっていた。カツオ系の魚だろうと急ぐとボイルが近づいてきたので、追われているのは小魚だがフライを付け替える暇がないと判断してマンティスゾンカーをそのままキャスト。1投目でヒットするが何か引きがおかしく、上がってきたのは良型ではあるがマトフエフキ。リリースして移動するボイルをまた追いかけ2投目、ネオンブルーの魚がリーフエッジ内側までチェイスするが反転。スマなどのカツオ系ではなく「カスミアジ?」「フライが違う?」とも思ったが、そのまま3投目でまたチェイスがあり今度はヒット。リーフエッジの向こうの深みまで一旦は走られたが、根ズレすることなく引き戻すことができた。ボイルで初のトレバリー
サンゴと砂のブレイクラインで釣りをしていると、こちらに向かってくる魚を発見。遠目で見つけたのでポーラーチャーリーをロングキャストしてある程度リトリーブするとチェイス。しかし、なかなかフライを口にせずあと少しで見切られるかというところまで来てぎりぎりヒット。この魚はブレイクラインの浅い方に走って行きそこそこバッキングが引き出されたが、所々に水没している障害物と魚の動きを確認しながらうまくファイトすることができた
この魚は振り返るとすでにかなり近くまで来ており、ロッドを振ると逃げられると思ったので動かずに一度やり過ごした。ある程度距離ができてからからクラウザーミノーをキャスト。フライが魚に向かっていくとスプークすることが多いため、しばらくフライを動かさず魚が通り過ぎるか過ぎないかの辺りでリトリーブすると運よくヒットした
この日は夕方近くまでいくつかのチャンスを逃し続け、水面も光って見えづらくなってきていた。いつもはこのタイミングで早めに引き上げ、休憩しながらタックルを洗ったり次の日の計画を立てたりしていたが、この日は粘っていると鳥やベイトの動きに雰囲気が出てきた。水中が見えにくいので、引き波っぽいところにクラウザーミノーキャストすると何投目かでヒット。いいサイズのオニヒラアジだった
インリーフの砂浜でかなり大きそうな魚が回遊してきたので慎重にキャスト。ヒットした魚の引きは重量級で、プレッシャーをかけすぎるとラインブレイクしそうな勢いのまま一気に100m以上は走られた。その後も何度も巻いては出されてを繰り返し、これまでで一番時間がかかったがキャッチしたのは過去最大のオニヒラアジだった。フライはクラウザーミノー
マトフエフキとムラサメモンガラを数尾釣った後、今度は色の薄いシルバーっぽい魚のチェイスがありフライを咥えて反転した。引きのスピード感や力強さがカスミアジと似ていたので別種のトレバリーだと思い、慎重にファイトしてキャッチするとオニヒラアジだった
砂交じりのリーフポイントを歩いていて、やや水深のある辺りで何とか水色の魚を見つけることができた。進行方向のかなり先にキャストし、フライが着底するころにリトリーブすると猛然とダッシュしてヒット。グッドコンディションの魚だったのかサイズの割に強烈に走り回られたが、目立った障害物が少ないフラットなポイントだったので安心してファイトを楽しめた。フライはポーラーチャーリー
前日に浅いリーフの溝をカスミアジに走られ、リーダーが擦れてバットから切られていたので、この日はリーフを避け砂浜のポイントををブラインドで探っていた。遠投したクラウザーミノーがそろそろ目で見える辺りまで来たときに、急に青い魚が視界の横から飛び出してきてフライを引ったくっていった。カスミアジの引きは強力で、リールファイトになってバッキングまで出る勢いだった。トレバリー最初の1尾
砂底のポイントを歩いていて水色の魚を見つけてキャスト。何度か投げ直してやっと食わせた魚。カスミアジかと思っていたが近くまで寄せてくるとオニヒラアジだった。オニヒラアジも水中では青っぽく見えることがあるようで、この後も何度かそういうことがあった。フライはクラウザーミノー
トレバリー以外で釣れた大もの
夕方近くになり水中が見づらくなり始めたころに、カスミアジらしき青い魚がボイルしだした。追われているのが何か分からなかったが、結んでいたマンティスゾンカーをとりあえず投げてみると何投目かでヒット。引きはかなり強く完全にカスミアジだと思っていたが寄せてみると魚体が少し細長く、よく見るとアオチビキだった。ネットやテレビで見ていたのはもっとグレイっぽく、住んでいる場所や水深によって体色が変わるようだ
強めの風と雨が降ったり止んだりで視界も悪く、サイトフィッシングはあきらめてブラインドでポーラーチャーリーを引いていると赤くて大きい魚が水面近くまで浮上してフライをとらえた。一瞬「えっ?」となったのと、風雨で手が冷えて力が入りにくかったのもあり、トルクフルな引きに対応できず根に入られてしまった。明らかに釣ったことのない魚種でしかもいいサイズだったので、諦めきれずに引いたり緩めたりしていると運よく出てきてくれた。今度は一気にリールを巻いて浮かせた
南の島でそのほかに釣れた色々な魚たち
砂浜や砂地のフラットではマトフエフキがよく釣れる。あまり出会えないが、ナンヨウカイワリは好ファイターだ。ほかにコトヒキやコバンアジも砂浜系に多い。リーフまわりでは、アミメフエダイやニセクロホシフエダイなどが釣れる。これらもかなりのファイターである。また、カンモンハタやアオノメハタなどハタ類やムラサメモンガラもよく追いかけてくる
トレバリーねらいで実績があるフライパターン
クラウザーミノー
クレイジーチャーリーのように巻いたクラウザーミノー。このような形の理由は、フックベンドにマテリアルが絡むのを防止したいため。トレバリーフィッシングでは初期からよく使っていたフライで、小魚としても甲殻類としても機能するので重宝する。チェーンボールアイでも巻いておき、水深によって使い分ける。カラーはオレンジ以外にイエローも実績が高い
マンティスゾンカー
沖縄のフラットを歩いていると、よく足元から逃げ出していくシャコの仲間をイミテートしたフライ。フライのカラーとしてはオリーブ&オレンジ、またはタン&ピンクを使うことが多い。UVポーラーシェニールは厚巻きにならないように螺旋状に数回転でパラっと巻き、下側を少しカットしている。大型魚をねらう場合は太軸フックのTMC800Sで巻いたものを使用する
エンジェルスライダー
エンジェルミノーを横向きに巻いてフォーム材を背負わせたパターン。写真のものは浅瀬を逃げ惑うシャコやエビを表現していて、アイとギルを付けるとフィッシュタイプにもなる。水面でベイトが追われているときに使用することが多いが、ブラインドで誘い出す釣りの時にも有効。沖縄のトレバリー以外には、明石でブリやシーバス釣りにもよく使っている
ポーラーチャーリー
最近いちばん出番の多いフライで、カスミ、オニヒラともに実績がある。壊れにくさや水中での透明感、きらめきが気に入っている。ポーラーベアは毛先まできれいなテーパーになっている上質のものを使い、アンダーファー(量を調整して)ごと巻き留めている。ウイングが長めなのは、いざというときにミノーパターンとしても機能させたいから。ガード付きも用意している
2023/1/5