渇水期のイワナの見つけ方

水深20㎝のライズフィッシング

稲田 秀彦=文・写真

ssssssssssssssss 減水期には驚くような浅い所に姿を現わす。気付かずに歩いてしまうようなところで、実は捕食を繰り返している

適度な水深を持つポイントが少なくなるこれからの季節。つい水通しのよい流れ込みに毛バリを流したくなるが、実はヒラキのような浅場にも良型は付く。山地渓流の夏イワナは、ブラインド時々シャローでのサイトフィッシングが面白い。

この記事は2012年9月号に掲載されたものを再編集しています。

《Profile》
いなだ・ひでひこ
1972年生まれ。長野県安曇野市在住。春は地元犀川でのニジマスねらいのほか、蒲田川でのマッチング・ザ・ハッチの釣り、初夏以降は渓流や本流でのウエット、山岳渓流のイワナ釣り、秋はソルトウオーターといったように、旬の釣りを幅広く追いかける

夏のライズは浅場で起こる

雪代が収まり、日中の気温が上昇し、汗ばむ季節を迎える頃、春先の里川の釣りから山岳渓流へステージは変わる。雪代明け直後はまだ水量が豊富で渓流魚は警戒心よりも食性に走り、付き場は流れのあるカケアガリ付近となっていて比較的容易に釣ることができる。

しかし、渇水が進むと日中の釣りが極端に難しくなる。山岳渓流で落差の激しい階段状のポイントなら比較的イージーだが、長く開けたプールでは、ポイントに近づくためのアプローチから気を付けなければならない。だか、そのような場所ほど大型イワナが付く。

この季節は特に渇水期になるほど、良型のイワナほど浅くて(20~40㎝)水通しのよい場所や、障害物やオーバーハングした岩陰などでぽっかりと浮かんでライズするシーンに出会う。これらを見つけながら1尾ずつ釣っていくのが、夏のイワナ釣りの魅力である。
kassuiiwana-02 これからの時期にヒラキで見るのは良型の可能性が高い。大場所では下流側の離れたところからポイントを入念にチェックしたい

盛期のイワナは速い流れに付く

渇水期に最も大切なのは、ブラインドで釣り上がっていても、少しでもよさそうなポイントに差し掛かったらていねいに観察することである。水量が少ないとついつい落ち込み付近のよさそうな場所を最初からねらってしまいがちだが、瀬尻やプールエンドの浅い場所をおろそかにすれば、気が付かないうちに大型は深場へと消えてしまうだろう。

プールなどの大場所に差し掛かったら、下流の少し遠目からポイント全体を見たうえで、流れの筋(バブルラインなど)や流れ出し付近を観察し、倒木などの障害物があればその周辺、流れが緩やかになり泡が巻いている場所など、イワナがいかにも付きそうな場所をチェックしてみる。
kassuiiwana-03 雪代後はまとまった雨がない限り少しずつ減水していく。夏場は水通しのよい流れがポイントになるので、時には流心脇をねらう判断も必要

イワナの付き場=流れの緩やかな場所、反転流と思っている方が多いと思うが、たしかに気温の低い初期のころはそのような場所を好むが、盛期を迎え、さらに渇水が進むと、流れの速い場所に出てきて、流下する水生昆虫を待っていることも多いのだ。

春のライズより繊細

夏の渇水期で気を付けているのは、フォルスキャストの回数を極力減らし、プレゼンテ―ション時にラインが水面に着水する時のインパクトを少なくすること。フライ先行で流れるようにU字キャストやリーチキャストを積極的に取り入れているのもそのひとつ。またフライをピックアップする際もできるだけ水面を荒らさないようにして、ミスキャストの際はすぐにピックアップせず、ポイントからフライが外れるまで待ってからキャストし直している。
kassuiiwana-04 「木化け石化け」は釣り人でなくイワナの得意ワザ。その姿をうまく見つけられれば、エキサイティングな夏の釣りが楽しめる

大きめのフライでもしっかりコントロールできるようにリーダーシステムはバットセクションがやや太めで、短めのリーダーを使っている。全長で約18フィート前後になるように、ショートレンジでもロングレンジでもリーダーから先のコントロール優先で使用している。またティペットは6Xをメインにしているが、渇水の状況によっては、6.5Xや7Xまでダウンさせることもある。

ただし良型イワナや源流域で育ったネイティブの引きは強烈で、すぐに石の下や障害物周りに潜り込もうとするので、あまり細いと掛けた直後に充分にプレッシャーを与えることができず、潜られて根ズレで切られてしまうこともあるので注意したい。ラインもポイントごとに必要なぶんだけリールから引き出し、良型のイワナが釣れた時に少しでも早く巻き取れるように準備しておく。

少し大袈裟かもしれないが、リールファイトでのやり取りを経験しておけば、足場の悪い所や、ふいに走られてしまっても、ラインが絡むなど、ラインが邪魔になることでのケアレスミスをなくすことができる。
kassuiiwana-05 1尾に警戒されると、プールやヒラキにいる他の魚すべてに伝わってしまうため、掛けてからのやり取りも実は大切

1ヵ所での複数ヒットが可能

浅い平瀬や、プールエンドで数尾の魚が浮いてライズを繰り返している場合、イワナだと一番の大ものが最下流に定位していることがあるので、下流側から順にねらっていくようにしている。うまくフッキングさせることができたなら、ロッドは立てずに流れと平行、もしくはロッドティップを水面近くまで倒し、バット部分を曲げるようにプレッシャーを掛ける。

こうすることで魚が水面で暴れることなく、下流側へ泳ぎ寄ってくれるので、ある程度ポイントから離れた所でランディングすれば、その他に浮いている魚に警戒心を与えることがない。うまくいけばすぐに次のイワナをねらうことができ、一つのプールで数釣りだって楽しめるのだ。

無難な選択はCDCアント

フライは渇水期にかかわらず、視認性のよいインジケーターを使ったパラシュートパターンをメインにしているが、減水時に見られるような、フライを見に来てUターンするような時は、CDCを使ったパターンにチェンジしている。また明らかにスレ気味と感じる場合は、ウイングにCDCを使ったカディスやフライングアントなどの出番が多くなる。
p067-tsuika 夏のメインディッシュは羽アリ。場所によってはかなり大きなものもいるので、#12~18まで幅広いサイズを揃えておくと、重宝する

さらにプールエンドや浅いヒラキで定位してライズしているような場合は、#12程度の比較的大きめのフライでもよいのだが、はじめからCDCをウイングに使ったフライングアントの#16(場合によっては#18)に替え、浮いているイワナの50~60㎝上流に静かに落とせば、キャッチ率は#12の時よりずっと上がる。

捕食もアワセもスロー

夏場はエサが少ないせいか、フライを流すと、イワナのほうから見つけて食べに来てくれるケースが多い。しかもその捕食は驚くほどゆっくりで、のんびりした動作でフライに近づき、吸い込むのだ。
kassuiiwana-08 減水期だから特別用意するようなものはないが、大きめのフライでもコントロールしやすいようにバットセクションがやや太めのテーパーリーダーを使用。13フィートの『ウィンドマスター』(ティムコ)5Xに6Xを5フィートつないで18フィートにしている

アワセもその動きにならって、フライが消えたらゆっくりと1、2と数えてからしっかり行なえば大丈夫。しかしそれが待ち切れずに失敗してしまうのが、イワナの遅アワセの難しさでもあったりする。
kassuiiwana-07 プールのヒラキに出ていた3尾を立て続けにヒットへ持ち込んだ。この時は場を荒らさないようにまとめてリリース

付き場、プレゼンテーション、フライ、やり取りといった減水期のアプローチをここで紹介したが、はじめのうちはなかなか魚を見つけることができず、先に魚に気付かれて走られてしまうことも多いかもしれない。

だが走った魚がどんな所にいたのかを記憶しておけば、必ず後々の釣行につながってくるはずだ。特にこれからの時期は魚との間合いの取り方というか、距離感をつかむまで、魚に走られるのを恐れずにチャレンジしてほしい。
kassuiiwana-09 ヒラキでのここぞという場面では、CDCを使ったアントパターンをメインに結ぶ。フックサイズは#11~17まで準備しておくと重宝する

kassuiiwana-06 ヒラキではラインで水面を叩かないこと。フライも水面へのインパクトが小さいCDCを使ったものがおすすめ

2017/7/18

最新号 2017年12月号 Fall

特集は「川を読む」。秋田県の役内川を例に、まさに「ここに尺ヤマメがいた」というポイントをピックアップ。流れのようす、底石の入り方、水面の波立ちぐあいなどなど、良型が付く場所の特徴を解説します。 また伝説的ともいうべきリールの名品「ボンホフ」と、その製法を忠実に踏襲しようと試みた男の物語を収録。道具に対する釣り人の情熱と愛を感じる内容です。 そのほか、イワナが浮いてフライをくわえる瞬間までばっちり見えるような源流釣行、北海道のアメマス事情、またキューバやオーストラリアのソルトゲームなども掲載。渓流オフシーズンの今だからこそ、じっくり読みたい一冊です。
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