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尺が教えてくれたフライ

ほんのひと工夫が大きな釣果差を生む

FlyFisher編集部=写真と文

尺が教えてくれたフライ

フライフィッシングを長く続けていると、印象深い魚との出会いが何度かある。
それはまるで分岐点のようにやってきて、釣り方やタイイングの考え方に影響を与える。
ここでは富田晃弘さんに変化をもたらした3尾の魚との出会いについて語っていただいた。
2019年 No.292掲載
富田晃弘 = 解説
Comments by Akihiro Tomita

夏、幸運のイモムシと出会った話
ブナピーパラシュートを巻くきっかけになった魚ではないが、同じフライで釣ったイワナ、37㎝
8月の暑い午後、近くの渓流に涼みに行った。とあるプールに差し掛かった時、しばらく遠くから眺めていると、ライズを見付けた。尺ヤマメが対岸の切り立った岩盤沿いを、10mほど上下にクルージングしながら何かをついばんでいた。目立った流下物も見えず、また特別何かがたくさん飛んでいるわけでもなかったが、ライズは結構頻繁に見られた。

夏の渓流で起きるライズは、春のライズと違い、捕食物が特定しづらく、しばしば難しいことがある。まずは、テレストリアル系のピーコックボディーのCDCカディス#18で反応を見る。ク
ルージングコースを見ながら、ヤマメの動きと向きが見えるタイミングで投げる。うまくヤマメの上流にフライを落とすも、チラ見してプイっとされて、またライズ。これは、長引くやつだ。フライを#20のアントに替える、またチラ見。今度はCDCユスリカ#20……、どんどんフライは小さくなって行き、ティペットも7X……。それより細いティペットは持って来ていないし……、フライもこれ以上小さいものはない。あっという間に手詰まり感が漂ってきた。
相変わらずヤマメはライズし続けている。日も傾いて来ているのに、フライを食ってはくれない。これでヤマメが小さければ、やーめたっとなるのだが、尺ヤマメときている。これで釣れなければ、明日も時間帯を変えて来なきゃならないなどと考えていた。そこで、じっくり再度ライズを眺めていると、なんとそのヤマメが、落ち葉の一端をパクリとくわえた。

何――っ!

僕のおいしそうなフライをことごとく嫌がったのに、なぜ葉っぱを食べるのだろう? 何か葉っぱにしがみついていたんじゃないだろうか……。だとしたら水生昆虫ではなく、陸生昆虫だろう。アリはさっき投げたし……、ふと周りを見渡すと、木の枝から小さな緑色のイモムシみたいなのがぶら下がっている。しかも、水面に落ちて漂っているやつもいた。もしかして、これが時折吹く風で飛ばされて流されているのではないだろうか。
フライボックスの中から、ヒラタのパラシュートオリーブカラー#14をつまみ、テイルを切ってティペットに結んだ。タイミングよく流れたそのフライを、その尺ヤマメがゆっくりと、今までのライズと変わらないように食ってくれた。

このフライを僕は勝手にブナピーと呼んでいるが、本当のブナムシはもっと大きいらしい。しかし、僕が行くその渓流には、#14~16くらいのオリーブ色とピンク色の2種類のイモムシが見られ、よく流下している。それ以来、盛夏以降の渓流でのクルージングライズに対して使ったり、渓流の釣り上がり用にも使っている。
※この続きは、月額700円+税で有料メンバー登録するとご覧いただけます。

2021/8/25

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【特集】REAL REEL LOVE リールへの愛について

ご存知のとおり、フライリールの機能というのは多くの場合それほど重要ではなく「ただのイト巻き」という側面が大きく、それゆえ人がリールを気に入る背景には、極めて個人的で偏愛に満ちたストーリーが存在します。
それは、万人が認める美しく優れたものだけでなく、自分が触れて快適なものでよいはず。「美」よりも「快」。人生が滲み出る、リール愛のカタチを紹介します。

このほか、第3回を迎えた細かすぎる!タイイングのベイシックでは、パラシュートパターンを中心に解説。
天草・無人島のクロダイのサイトフィッシングや佐藤成史さんの魚の撮影法なども紹介します。


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